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イタリア、キャンティの名門ワイナリーを紹介するシリーズ。今回は、サンジョヴェーゼ100%のキャンティをつくりあげたと言われ、イタリア最良の生産者と評される「フォントディ」について、ご紹介していこう。
フォントディのエピソード
トスカーナ地方のキャンティ地区でつくられるキャンティ・ワインは、サンジョヴェーゼを主体に他の品種をブレンドしてつくられるのが常識であり、法でもブレンドが義務付けられていた。サンジョヴェーゼ種はトスカーナ地方の主要品種であったにも関わらず、サンジョヴェーゼだけでは、良いワインをつくれないと信じられていたのだ。
それに異を唱えたのが、フォントディだった。フォントディはサンジョヴェーゼ種だけでつくっても美味しいキャンティ・ワインができると考え、見事につくりあげた。しかし当時、サンジョヴェーゼ100%のキャンティは認められていなかった。そのため、製法を公表しなかったが、徐々にサンジョヴェーゼ100%のワインが出回るようになった。そして1996年には法律が改正され、サンジョヴェーゼ100%でもキャンティとして認められるようになった。
現在、フォントディはイタリアで最良のワイン生産者と評され、キャンティ・ワインの最高峰と評されるキャンティを産している。
フォントディの歴史
キャンティ地方で、何世紀にもわたり伝統的なテラコッタと呼ばれる陶器や建築用素材などに使われる素焼きの焼き物を生産し、販売していたマネッティ家。そのマネッティ家が1968年にキャンティ・クラシコ地区のパンツァーノでフォントディを設立した。
キャンティ・クラシコの中心に位置するパンツァーノは標高が高く、日照量が豊富で乾燥している。また、昼夜の気温差が大きく、ぶどう栽培に適した土地であるため、伝統的な高級ワイン栽培地として有名。「黄金の盆地」と呼ばれる程、肥沃な土壌となっている。
そんなパンツァーノにフォントディを構えたマネッティ家は、非常に古くからキャンティ地方で商売を行っており、土地への強い愛着があった。それに加え、キャンティ地区の主要品種であるサンジョヴェーゼ種の栽培に強いこだわりを持ってワインの醸造に取り組み、サンジョヴェーゼの可能性を引き出していった。
1980年代に非常に若くしてワイナリーの責任者となった現当主のジョヴァンニ・マネッティ氏は、ワイン醸造専門家のフランコ・ベルナベイ氏と協力し、ぶどうの品質の違いを詳しく調査。そして、ピエーヴェ地区にあるサンジョヴェーゼの品質が非常に高いことを発見した。その結果、サンジョヴェーゼ種の素晴らしさとフォントディの名を世に知らしめた、サンジョヴェーゼ100%の「フランチャネッロ・ディ・ピエーヴェ」が誕生した。
ジョヴァンニ・マネッティ氏は以前、「私はサンジョヴェーゼを信じている。カベルネやメルロは世界中どこでだってつくれる。でもサンジョヴェーゼは特別だ。それはトスカーナのためだけのものだから」とワイン・スペクテーター誌で語っている。この言葉通り、フォントディは、トスカーナという土地とその土地の主要品種であるサンジョヴェーゼを非常に大切にしているワイナリーなのだ。
フォントディのワインづくり
フォントディでは、自然を尊重し、環境保護を大切にしている。ぶどう栽培では、土地の潜在力を引き出し、余分なものを外から加えないようにしているため、化学薬品を使用しない有機栽培を行っている。肥料には、剪定作業で取り除いた植物とワイナリー内で飼育しているキアニーナ牛の堆肥を使用している。
ワインづくりには、自社畑で栽培したぶどうのみを使用。収穫は手で行われ、収穫されたぶどうは丁寧に選別される。
自然の法則を優先したぶどう栽培に対し、醸造と熟成は現代的なワイナリーで行われている。しかしながら、醸造設備は、重力を利用する降下型のつくりをしているなど、近代技術の中にも自然の法則を取り入れている。
自然を優先させ、その土地のものを利用した丁寧なぶどう栽培と、自然の法則と近代技術を融合させた醸造により、フォントディはテロワールを強く感じられるワインを産出している。
フォントディのおすすめワイン
フラッチャネッロ・デッラ・ピエヴェ
フォントディの最高キュヴェであり、フラッグシップワイン。サンジョヴェーゼ100%。パーカーポイントで98点を獲得した実績がある。コンカ・ドーロに位置する複数の畑から最高のサンジョヴェーゼを選りすぐって使用している。 熟成のポテンシャルは20年以上と言われる。
キャンティ・クラッシコ・ヴィーニャ・デル・ソルボ
単一畑である「ヴィーニャ・デル・ソルボ」に植えられている樹齢40年以上のぶどうだけを使用している。世界に誇れるキャンティ・クラシコの1つ。
キャンティ・クラシコ
サンジョヴェーゼ100%のキャンティ・クラシコ。イタリアのミシュランと呼ばれる「ガンベロ・ロッソ」から何度も最高評価の「トレ・ビッキエーリ」を獲得している。