コラム

覚えておきたいイタリアのキャンティを代表するワインのつくり手5選~ 解説:イタリア名門ワイナリー

イタリアワインの代表格とも言える赤ワインのキャンティ。タンニンが控えめで果実味が豊かなキャンティは、飲みやすく世界中で人気がある。その一方で、種類が多く、選ぶのが難しいワインとも言われている。

キャンティ地区の主なつくり手

イタリアのキャンティ地区には、どのようなワインのつくり手がいるのだろうか。これまでワインバザールで紹介してきたつくり手をあらためてご紹介しよう。

バローネ・リカーゾリ

Barone Ricasoli wines

イタリアワインを代表する「キャンティ」を産み出したベッティーノ・リカーゾリ男爵。バローネ・リカーゾリは、彼の一族であるリカーゾリ家が経営するワイナリーだ。1870年頃にベッティーノ・リカーゾリ男爵が定めた、キャンティ・ワインのブレンド比率(サンジョヴェーゼ種70%、カナイオーロ種20%、マルヴァジア・デル・キャンティ種10%)は近年まで守られていた。同ワイナリーは長い歴史の中で低迷期もあったが、ぶどう本来の特徴とテロワールを大事にすることで品質を向上してきた。その結果、バローネ・リカーゾリは現在、キャンティの産みの親としてだけでなく、モダンな味わいのワイン「スーパー・トスカン」の生産者としても有名になりつつある。また、バローネ・リカーゾリは、世界で2番目に古い家族経営のワイナリーでもある。

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カステッロ・ディ・アマ

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カステッロ・ディ・アマは、イタリアを代表するワイナリーとも評される。収量を通常の半分ほどに抑えたぶどうをクリュごとに収穫して醸造するなど、1996年にキャンティD.O.C.Gから独立したキャンティ・クラシコD.O.C.Gの品質向上に努めた。その結果、カステッロ・ディ・アマがリリースしたキャンティ・クラシコ「ベッラヴィスタ」と「カズッチャ」が世界で高く評価され、「早く飲める安ワイン」というキャンティ・クラシコのイメージを払拭した。オーナー兼醸造家であるマルコ・パランティ氏は、イタリアで最も権威のある「ガンベロ・ロッソ」誌のワインメーカー・オブ・ザイヤーを2003年に受賞している。さらに2006年から2012年までキャンティ・クラシコ協会の会長を務めるなど、イタリアを代表する偉大な生産者と言われている。

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カステッロ・ディ・フォンテルートリ

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カステッロ・ディ・フォンテルートリは、マッツェイ家が24代にわたってワインをつくり続ける名門ワイナリー。テロワールを活かしたワインづくりをするため、畑を区画に分け、区画ごとに徹底した管理を行っている。ぶどう栽培では、高い植樹率と低い収量を徹底し、養分やうま味が凝縮された濃くておいしいぶどうをつくっている。このように、テロワールを活かしたカステッロ・ディ・フォンテルートリのワインは世界で高く評価されており、著名なワイン評論家のロバート・パーカー氏は、同ワイナリーを「トスカーナで最も信頼できる生産者である」と評した。トスカーナ地方のワインに大きく貢献してきたカステッロ・ディ・フォンテルートリは、18世紀、後にアメリカ大統領となったトーマス・ジェファーソン氏の依頼で、アメリカ大陸初となるぶどう畑をヴァージニア州に作るなど、アメリカのワイン業界にも多大な貢献をした。

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フォントディ

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フォントディは、サンジョヴェーゼ種100%のキャンティをつくりあげたと言われるワイナリーで、イタリア最良の生産者と評される。サンジョヴェーゼを主体として他の品種をブレンドすることが義務付けられていた時代に、フォントディは、サンジョヴェーゼ種の可能性を信じ、サンジョヴェーゼ種100%のキャンティをつくりあげた。その後、1996年に法律が改正され、サンジョヴェーゼ100%でもキャンティとして認められるようになった。現在、フォントディはサンジョヴェーゼ100%のキャンティをつくりあげたワイナリーであると同時に、最高峰のキャンティ・ワインを産するワイナリーとしても評されている。

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ピッチーニ

Piccini Tuscany

ピッチーニは1882年に創業した家族経営の老舗ワイナリーで、キャンティ・ワインの生産に貢献してきた。キャンティ・ワインの生産量のうち15%をピッチーニが産している。しかし、ピッチーニでは、キャンティ・ワインの生産量を増やすだけでなく、厳選したサンジョヴェーゼ種を栽培し大切に収穫するなど、質の向上にも力を入れている。そのため、ピッチーニのワインは、手頃な価格で販売されていながら高品質で、コストパフォーマンスが非常に高い。また、世界60カ国以上で販売されているピッチーニのワインは、イタリアをはじめ、他国のコンクールでも多くの賞を受賞するなど高く評価されている。

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キャンティ・ワインの特徴

Chianti

キャンティ・ワインがつくられるキャンティ地方は、イタリア中部にあるトスカーナ州のシエナとフィレンツェの間に位置する。その冷涼な気候と粘土石灰質土壌が、ぶどう栽培に適している。

キャンティ・ワインの主要品種となるサンジョヴェーゼは環境に影響されやすく、植える場所が数百メートル違うだけで変異することもあるほどデリケートな品種だという。それゆえ年によって品質にばらつきが出やすいが、キャンティ・クラシコ地区では、気候や土地がサンジョヴェーゼに適していることに加え、サンジョヴェーゼの良さを引き出すノウハウがあるため、安定して品質の高いサンジョヴェーゼを産することができる。

イタリアの赤ワインの代表格とも言っても過言ではないキャンティ・ワインだが、キャンティ・ワインを産するワイナリーが急増した時代もあったため、生産者が多いと言うだけでなく、品質に差があることも否めない。そんな中、キャンティ・ワインを古くから産していた地域のワイナリーが中心となって、品質の高いキャンティ・ワインの差別化を図った。現在では、歴史の古い伝統産地がD.O.C.G キャンティ・クラシコ、それを囲むように広がる産地がD.O.C.G キャンティとして認められている。

D.O.C.G キャンティとD.O.C.G キャンティ・クラシコは次のように定められている。D.O.C.G キャンティは、サンジョヴェーゼを75%以上使用することが義務付けられている。ブレンドには、黒ぶどうのほかに白ぶどうも使用でき、最低熟成期間は4カ月となっている。D.O.C.G キャンティ・クラシコは、サンジョヴェーゼを80%以上使用することが義務付けられていて、ブレンドには、黒ぶどうだけを使用できる。最低熟成期間は11カ月となっている。

キャンティ・ワインの歴史

Chianti

キャンティ地区では、古くからワインづくりが行われていて、中世時代のワインづくりに関する記録も残っている。トスカーナ州は、1737年までトスカーナ大公国としてイタリアの大富豪メディチ家の支配下にあったが、その頃もワインづくりが盛んで、1716年にはワイン産地の境界が定められた。これは世界最初の原産地保護と言われている。19世紀になると、前述した通りバローネ・リカーゾリのベッティーノ・リカーゾリ男爵がキャンティ・ワインをつくりあげた。そして、男爵が考案した、サンジョヴェーゼに白ぶどうなど、ほかの品種をブレンドする混醸率によってキャンティがより飲みやすくなると、輸出が急増。イタリア国内に留まらず、世界各国で人気を博した。その結果、キャンティと名が付いていれば売れるという時代になり、安くて低品質のキャンティが出回るようになってしまった。そこで、伝統的なキャンティの生産者がキャンティ・クラシコの組合を結成し、1996年にD.O.C.Gキャンティ・クラシコとして認められたため、D.O.C.G キャンティとD.O.C.G キャンティ・クラシコが存在する。2013年には、キャンティ・クラシコの最上級格付けD.O.C.Gキャンティ・クラシコ・グラン・セレツィオーネが新設された。

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