「ボジョレ」という産地には、どうしても「ボジョレ・ヌーヴォー」というイメージを強く持ってしまっているだろう。
しかしボジョレでは、ヌーヴォー以外にも魅力あふれるボジョレワインもつくられ、徐々に知られるようになってきている。
今日は、そんなボジョレワインと、ボジョレに程近い食の都・リヨンの郷土料理が楽しめる「ビストロ・ボジョレ」についてご紹介しよう。
ヌーヴォーだけではないボジョレワイン
まず、ボジョレ地方でつくられているワインの概要をおさらいしておきたい。
ボジョレは、縦に長いブルゴーニュ地方の最南端に位置する。ブルゴーニュ地方のほとんどの地域でつくられる赤ワインにはピノ・ノワールが使われる。しかしボジョレだけは例外で、ガメイが主力品種だ。
また、広域AOCの「ボジョレ」のほか、AOCとして「ボジョレ・ヴィラージュ」、さらに優れたワインがつくられる「クリュ・ボジョレ」がある。
「クリュ・ボジョレ」にはブルイイ、シェナス、シルーブル、コート・ド・ブルイイ、フルーリー、ジュリエナス、モルゴン、サン・タムール、レニエ、ムーラン・ア・ヴァンという10のAOCが存在し、個性の際立つワインがつくられている。
ボジョレワインと楽しみたいリヨン料理
一方、ボジョレ地方から程近いリヨンは、フランス第二の都市。ローマ時代からの美しい建築が並ぶ世界遺産の街でもある。
また、このリヨンには「ブション」と呼ばれる庶民的な食堂が多くあり、土地に伝わる素朴な家庭料理が振舞われている。
フランス全土で食べられている「リヨン風サラダ」は、葉物の上にポーチドエッグやラルドン(ベーコン)、カリカリのクルトンが盛られる。また、豚の内臓を使った「アンドゥイエット」や血を使った「ブータンノワール」など、ソーセージスタイルの料理も多く見られる。魚のすり身をふわふわに仕上げる「クネル」も有名なリヨン料理だ。
「ビストロ・ボジョレ」って?
ボジョレワイン委員会はボジョレ商工会議所と協力し、「ブション」のように皆で和気あいあいと本格的なボジョレワインを通年楽しめる店を「ビストロ・ボジョレ」として認定している。このコンセプトは1950年代に生まれ、今まで脈々と受け継がれている歴史あるものだ。
現在、世界で「ビストロ・ボジョレ」を名乗ることが許されているのは、296軒。もちろんリヨンが中心だが、パリやロンドン、ニューヨーク、そして日本にも認定店がある。
伝統的な本格リヨン料理の数々を、つくり手の熱意のこもったボジョレワインと合わせる。ビストロ・ボジョレは、そんな贅沢な時間を過ごすためにある、美食の天国だ。