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ボルドー&ボルドー・シュペリュールワイン生産者組合が主催し、2017年から開催されている「ボルドー&ボルドー・シュペリュールワイン ソムリエコンクール」。若手を対象としたコンクールで、優勝者は1年間、ボルドー&ボルドー・シュペリュールワインの公式アンバサダーとしてPR活動に協力することとなる。
その第3回目となるコンクールの決勝戦が、2019年7月5日にフランス大使館 大使公邸で開催された。
46人の応募者の中から、準決勝を経て決勝に進んだ3人のトップ・ソムリエたちによる、熱い戦いの様子をご報告する。
ボルドーワインの知識、ソムリエの技術が問われた決勝戦
今回より、20~35歳の若手ソムリエを対象として行われた同コンクール。決勝当日は、午前10時から予選を勝ち抜いた11人による準決勝が行われ、午後3時に決勝進出者が発表された。
決勝まで駒を進めたのは、近藤佑哉氏(銀座レカン/東京)、野村大智氏(Grand Hours/福岡)、吉田雄太氏(BEIGE Alain Ducasse Tokyo/東京)の3人だ。
今回のコンクールでは、ワインやマリアージュに関する豊富な知識、プレゼンテーション能力、ボルドーに関する知識、サービステクニックが審査対象となった。具体的な試験内容は、次のようなものだった。
1.パワーポイントでのプレゼンテーション課題(6分、日本語)
所属するレストランまたはホテルで、「ボルドー&ボルドー・シュペリュールワインフェア」を開催することになったと想定し、上司やオーナーに対してどのような内容にするかをパワーポイントでプレゼンするというものだ。
この課題のみ、事前に内容が公開されていた。自らつくったパワーポイントを使いながらプレゼンをするという、ソムリエコンクールでは珍しい内容だ。
具体的な数字やTPOの設定を盛り込みながら、ボルドー&ボルドー・シュペリュールワインの楽しみ方を伝えられるかが問われた。
吉田氏はデータを示して実直なプレゼンをし、野村氏はメディア戦略を含めたプレゼンで場を盛り上げるなど、出場者の個性が垣間見える課題となった。
2.テイスティングフルコメント(3分、選択言語)
用意された赤ワインをテイスティングし、見た目、香り、味わい、ブレンドなどについてフルコメントをする。
言語は、日本語・英語・フランス語から選択でき、日本語以外を選ぶと加点となる。以下、選択言語の課題については、3人全員が英語を選んだ。
3.コマーシャルコメント(2分、日本語)
課題2でテイスティングしたワインを、ケースで購入しようとしている相手に対してアドバイスをする。
テイスティングしたワインの魅力を理解し、的確に表現して伝えることが求められる内容となった。
4.料理合わせ課題(3分、日本語)
4種類の赤・白ワインをテイスティングして、ワインの本質だけを捉えたフラッシュコメントをし、それぞれに合う日本料理のコースメニューを提案する。
日本料理のコース設定など、和食への理解が問われた。審査委員長の森覚氏の総評によると、点数に差がついた試験だったという。
テイスティングのワインには、ヴィンテージや品種、醸造に特徴があり、分かりやすいものが選ばれた。
5.サービス実技(5分、選択言語)
赤ワインを希望しているお客様にデキャンタージュを行うが、ワインを抜栓している最中にゲストから質問や要望が飛び、それに対応しながらサービスをするという試験だった。
お客様の前にグラスを先に置いてからデキャンタージュしたワインを注ぐ人や、デキャンタージュしたワインをグラスに注いでからお客様にサービスする人など、三者三様のサービスが見られた。
準決勝の内容
なお、決勝の前に行われた準決勝に進出した11人に課されたのは、以下の内容だ。
1.7人のお客様にクレマン・ド・ボルドーをサービスし、ボトル1本を注ぎきるというサービス実技。国際的なマナーに注意することが求められた。4分間という時間設定はあったが、短い時間で終わるほど加点になるというタイムトライアル方式で実施された。
2.ボルドー・クレレを輸入したいという人に、3分間でアドバイスをする。
3.ソーヴィニヨン・ブラン主体の白ワインとカベルネ・ソーヴィニヨン主体の赤ワインをブラインドテイスティングし、いなりずしにはどちらが合うのかを4分間でコメントする。
4.12枚の画像が、それぞれ何かを答える。
結果発表
決勝が終わり、ボルドー&ボルドー・シュペリュールワイン生産者代表のエミリー・ドゥアンス氏より発表された結果は以下の通りだ。
優 勝:近藤佑哉氏(銀座レカン)
準優勝:野村大智氏(Grand Hours)
第3位:吉田雄太氏(BEIGE Alain Ducasse TOKYO)
2回目のエントリーで優勝者となった近藤氏は、まだ29歳。180cmを超える長身で、ファイナリストの中でもひときわ華やかな印象だった人物だ。表彰式の後、「育てていただいた先輩方にも、恩を返せるように成長していきたい」とコメントしている。
優勝の近藤氏と準優勝の野村氏には、ボルドー研修旅行の権利が与えられた。また、近藤氏は約1年間、ボルドー&ボルドー・シュペリュールワイン・アンバサダーに任命され、さまざまなイベントでの活躍が期待されている。
審査員長の森覚氏は表彰式後、「かなりレベルの高い戦いだった。35歳以下という年齢制限を設けたが、決勝に進出したのは27~32歳。20代からこのようなコンクールで決勝に残る人が出てきたのがうれしい。私自身も23歳頃からコンクールに出ており、準決勝や予選で敗退した経験もある。一生懸命にやっている出場者を見ていて、頑張ってきたことがよく分かった」とコメントした。
ボルドー&ボルドー・シュペリュールワインの認知度向上を目指して
コンクール名にあるボルドー&ボルドー・シュペリュールワインとは、ボルドーワインの中でも「AOCボルドー」「AOCボルドー・シュペリュール」といった広域AOCの名前が付けられたワインのこと。フランスの家庭で消費されるワインの約3割が、これらのワインだという。
色別で見ると、次のようなワインがある。
・ボルドー・ルージュ(赤)
・ボルドー・ブラン(白)
・ボルドー・ロゼ(ロゼ)
・ボルドー・シュペリュール・ルージュ(赤)
・クレマン・ド・ボルドー(発泡、白またはロゼ)
・ボルドー・クレレ(赤でもロゼでもない濃い色調のボルドー特産ワイン)
・ボルドー・シュペリュール・ブラン(白)
フランス公使のジャンバティスト・ルセック氏は、「ボルドー&ボルドー・シュペリュールワインは、消費者に多くの選択肢を与え、そしてコストパフォーマンスに優れている点で評価されるべきなのだが、まだ日本では知られていない」と説明した。
2019年2月1日に日本と欧州連合(EU)との間で経済連携協定(EPA)が発効されてから、日本が輸入するフランスワインの量は40%増加しているという。また、日本で消費されるフランスワインの4割をボルドー産が占める。フランスワインがますます競争力をつけていく中で、ボルドー&ボルドー・シュペリュールワインの存在感も、これから増していきそうだ。