INDEX
11月19日に2020年の解禁日を迎えたボージョレ・ヌーボー。大人数で集まることが難しい今年、ジョルジュ・デュブッフのボージョレ・ヌーボーを取り扱うサントリーワインインターナショナルは、オンラインでの解禁イベントを開催した。
イベントには、サントリーワインインターナショナルの宮下敏代表取締役社長とサントリーワイン・ブランドアンバサダーであり、THE THOUSAND KYOTO(ザ・サウザンド キョウト)でシェフソムリエを務める岩田渉氏が登壇。ジョルジュ・デュブッフの輸出部長であり、創業者ジョルジュ・デュブッフ氏の孫であるアドリアン・デュブッフ・ラコンブ氏も、フランスからオンラインで参加した。
コロナ禍での解禁日、そして“ボージョレの帝王”と呼ばれたジョルジュ・デュブッフ氏が1月に亡くなって最初の解禁日となった2020年は、記憶に残る特別なものとなった。
2020年のワインについて
今回のイベントでは、解禁の瞬間である午前0時を迎える前に、アドリアン氏が2020年のワインについて振り返った。
「素晴らしいヴィンテージ」に
新型コロナウイルス感染症の影響もあり、大変な状況でのワインづくりとなったが、アドリアン氏は「今年は素晴らしいヴィンテージになった」と自信をのぞかせた。今年は、ブラックチェリーなどの完熟した香りとともに、非常に芳醇な味わいが楽しめるとのこと。
ワインづくりは、新型コロナウイルス感染症の影響で、政府の要請に基づいて新しいルールを導入しながら進められた。手摘みで行っている収穫現場では、毎年シェアしていた道具をシェアせずに使い、オフィスでは十分に距離を保ち、至る所にアルコール消毒を設置。必須となったマスク着用も、今までにない習慣だったため、皆で慣れていく必要があったそうだ。
「同じボージョレ・ヌーボーはない」
アドリアン氏がジョルジュ・デュブッフで働き始めたころに、祖父であるジョルジュ氏からある言葉を言われたそうだ。それは、「今から大事なことを言う。同じボージョレ・ヌーボーはないのだ」というもの。当時はそれほどの違いはないだろうと思っていたが、今年はその言葉が身に染みたという。
「毎年違う要因がある中で、ボージョレ・ヌーボーは毎年11月の第3木曜日に解禁日を迎える。その日に向けて、ワインを届ける大切さを実感した」と、アドリアン氏は語った。
課題を乗り越えて迎えた解禁日
宮下社長はイベントの冒頭のあいさつで、「2020年は、春のぶどうの花が咲き始めたころにフランスはロックダウンになり、ワインができるのかと心配になったが、そんな中でもぶどうは順調に育ち、自然の力の強さを改めて思い知った。運送のフライトはいつ飛ぶのか分からない、費用がいくらかかるのか分からないという状況下で、いくつもの課題を乗り越えて今日を迎えた。多くの方々の力添えがあって、実現できたことだ。生産していただいた方々、運送してくださった方々、楽しみにしてくれていた方々にお礼を申し上げたい」と語った。
乾杯! その味わいは?
いよいよ、午前0時前からカウントダウンがスタート。登壇者がオンラインで参加しているボージョレ・ヌーボーファンとともに、解禁の瞬間を迎えた。
「太陽の温かい味わい」を感じるワイン
乾杯後、「ジョルジュ・デュブッフ ボジョレー・ヌーヴォー 2020」を口にした岩田氏からは、「おいしい」との一言が漏れた。
岩田氏は今年のボージョレ・ヌーボーについて、「太陽の温かい味わいがワインに表れている」と表現。「黒い果実や甘いスパイスのニュアンス、ラベンダーのような華やかさも感じる香り。味わいは、もぎたてのフルーツをかじっているような肉厚さやジューシーさが特徴で、ボージョレ・ヌーボーらしいフレッシュな酸味が心地よい」と評価した。
イベントで一緒に解禁日を迎えたオンライン参加者からも、「おいしくて、飲みやすい」「フレッシュでフルーティ」などの声が上がっていた。
今年の楽しみ方について
大人数で集まりにくい今年は、ボージョレ・ヌーボーの楽しみ方も例年とは変わってくる。今年のボージョレ・ヌーボーは、どのように楽しんだらいいのだろうか。イベント内で紹介された2つの楽しみ方を解説したい。
上手に保管して長期間かけて楽しむ
大勢でワイワイと楽しむことが難しいため、「家族と楽しむ日、友人と楽しむ日、同僚と楽しむ日など、少人数で複数回楽しむつもりだ」とアドリアン氏から話があった。
しかし、ボージョレ・ヌーボーは、出来立てを楽しむのが醍醐味。そこで気になるのは、どれくらい保存ができるのかということだ。
岩田氏は、「フランスでは、年をまたいで味わうという飲み方もされている」と説明。温度差のない環境に置くというポイントを守れば、春先までおいしく保管できるそうだ。年末年始や春先にボージョレ・ヌーボーを味わうなど、今年は例年とは違う楽しみ方をしてみてもいいだろう。
おすすめのペアリング
ピュアなフルーツの味わいが楽しめ、食べ物との相性が良いボージョレ・ヌーボー。岩田氏は、豚肉とのペアリングをおすすめしていた。
豚肉はボージョレ地区でもよく食べられている食材で、アペリティフとしてサラミを、メインではローストやグリルした豚肉を楽しんだりしている。日本の和食では、とんかつや角煮のうま味を酸味がしっかりと引き立ててくれるとの説明があった。
孫が見た、祖父ジョルジュ・デュブッフ
ボージョレ・ヌーボーの解禁日を祝うことを世界に広め、“ボージョレの帝王”と呼ばれたジョルジュ・デュブッフ氏。2020年1月の逝去から、今回が初めての解禁日となる。
ジョルジュ氏の孫であるアドリアン氏は、「祖父は日本が大好きで、解禁日に日本に来て、解禁日を楽しむ皆さんを見るのが楽しかったと言っていた。祖父は、ボージョレ・ヌーボーの解禁は、日本とフランスをつなげる大切なイベントだと考えていた。伝統と自然の恵みに感謝するイベントを、2つの国が一緒に祝うという点でも大事にしていた」と、偉大な祖父を振り返った。
初のオレンジワインも解禁
今年は、デュブッフ家の遺伝子を感じる新しい挑戦もあった。それが、「ジョルジュ・デュブッフ オレンジ・ヌーヴォー 2020」だ。
オレンジワインは、白ぶどう品種であるグルナッシュ・ブランとシャルドネを使用して、赤ワインと同じ方法でつくられている。ボージョレ・ヌーボーのカテゴリーには入らないが、「ジョルジュ・デュブッフ オレンジ・ヌーヴォー 2020」は今年収穫したぶどうを使用している。
このオレンジワインは、祖父が掲げていた「イノベーション、革新、挑戦」を大切にするメッセージを意識して、アドリアン氏が手掛けたもの。大手のワイナリーでオレンジワインを新酒で実現したところはなく、「自分なりの形で、祖父の思いを継承できたのではないか」と、アドリアン氏は語っている。
岩田氏は、「ヌーボーらしい爽やかな酸味と白ぶどう由来のフルーツの味わいにほのかな苦みが少し加わることで、味わいに奥行きや深みを与えている。ヌーボーというカテゴリーの中でも、充実感や満足感が得られるワインだ」と評価した。ショウガのスパイシーさと心地よいハーモニーが生まれると、豚の生姜焼きとのペアリングを提案していた。
今年のボージョレ・ヌーボー解禁について、オンライン参加者から「友達と飲みたかったが、今年はできないのが残念。でも、こうしてオンラインで祝えるのも今年ならでは」との言葉があった。
生産者にとっても、輸入業者にとっても、消費者にとっても、特別なヴィンテージとなった2020年のボージョレ・ヌーボー。皆さんもそれぞれの方法で、今年のぶどうの出来を楽しんでみてはいかがだろうか。