コラム

キアンティ・クラッシコの産地を360度俯瞰する ~フライト2:西部のテロワールを表現する4つのワイン

キアンティ・クラッシコ協会は2021年3月15日、ザ・ペニンシュラ東京(東京都千代田区)にて、プレスイベント「キアンティ・クラッシコの産地を360度俯瞰する」を開催した。

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土壌や標高など、多様性のある場所でつくられるキアンティ・クラッシコは、サンジョベーゼ主体のワインでありながら、さまざまな個性を持つ。イベントでは、産地を360度見渡せる写真を見ながら、個性を生み出す要因を解説。その内容を全4回にわたって紹介するが、第4回となる今回は、比較的暖かい西側でつくられた4つのワインを、風景を見ながらテイスティングしていく。

キアンティ・クラッシコの風景とワイン(フライト2)

今回テイスティングするのは、キアンティ・クラッシコの中でも、比較的暖かい西側のワインだ。

(引用元)Alessandro Masnaghetti www.enogea.it for Consorzio Vino Chianti Classico

左の地図を見ると、西側にはサン・カシャーノ・イン・ヴァル・ディ・ペーザ、バルベリーノ・タヴァルネッレ、カステリーナ・イン・キアンティ、カステルヌオーヴォ・ベラルデンガなどのコムーネ(村)がある。キアンティ・クラッシコ協会では、ホームページでテロワールを360度俯瞰できる写真を公開しているので、ワインと併せてそちらのリンクも紹介していく。

4本の生産地の標高は、右の表のようになっている。丸の中の色は、土壌の種類を示している。

土壌については、第2回の記事を参考にしてほしい。

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キアンティ・クラッシコ モリーノ 2018

CHIANTI CLASSICO MORINO 2018
品種:サンジョベーゼ80%、カナイオーロ10%、コロリーノ5%、プニテッロ5%
アルコール度数:13.5%
参考小売価格:未輸入

キアンティ・クラッシコ地区の北西部に位置するサン・カシャーノ・イン・ヴァル・ディ・ペーザでつくられたオーガニックワイン。この地域は沖積土で、川が運んできた丸い石ころが積み重なっている。

標高は260mと高くはない。バランスが良くて丸みがあり、果実味が上品にまとまっている。この地域のテロワールをよく表現している1本だ。

産地を俯瞰する:サン・カシャーノ・イン・ヴァル・ディ・ペーザ

このワインの産地である、サン・カシャーノ・イン・ヴァル・ディ・ペーザの風景を見ていこう。360度俯瞰する写真はこちらから見ることができる。

キアンティ・クラッシコ協会 SAN CASCIANO IN VAL DI PESA

写真を見るとよく分かるが、この地域はアップダウンがあまりない、ほとんど平坦な土地だ。平坦なので日差しや風を遮るものがあまりなく、硬い石のピエトラ・フォルテと石灰岩のアルベレーゼのほぼ均一な土壌ということもあり、地域内での味わいの違いが比較的少ない。

キアンティ・クラッシコ イゾレ・エ・オレーナ 2018

CHIANTI CLASSICO ISOLE E OLENA 2018
品種:サンジョベーゼ83%、カナイオーロ15%、シラーズ2%
アルコール度数:14.0%
参考小売価格:3850円(税込、2015年ヴィンテージ)

サン・カシャーノ・イン・ヴァル・ディ・ペーザから南下した、バルベリーノ・タヴァルネッレのワイン。土壌はアルベレーゼとピエトラ・フォルテが混ざっており、標高は400mほど。香ばしい果実味と厳格なタンニン、しっかりとした酸が楽しめるワインだ。

産地を俯瞰する:バルベリーノ・タヴァルネッレ

このワインの産地である、バルベリーノ・タヴァルネッレの風景を見ていこう。360度俯瞰する写真はこちらから見ることができる。

キアンティ・クラッシコ協会 BARBERINO TAVARNELLE

標高がやや高くて西向きであり、サン・カシャーノ・イン・ヴァル・ディ・ペーザよりも冷涼な気候だ。いくつもの土壌がぶつかるところで、アルベレーゼという石灰岩や泥灰土、ピエトラ・フォルテなどが混ざっている。数キロ離れただけで味わいが変わる、キアンティ・クラッシコの特徴を楽しめる地域だ。

キアンティ・クラッシコ ポモーナ 2017

CHIANTI CLASSICO POMONA 2017
品種:サンジョベーゼ100%
アルコール度数:14.5%
参考小売価格:未輸入

キャンティ・クラッシコの最南部に近いカステリーナ・イン・キアンティでつくられたワイン。標高は325m辺りで、ふくよかさや土っぽさ、タールのトーンなど、暑い産地の特徴が感じられる1本だ。

産地を俯瞰する:カステリーナ・イン・キアンティ

このワインの産地である、カステリーナ・イン・キアンティの風景を見ていこう。360度俯瞰する写真はこちらから見ることができる。

キアンティ・クラッシコ協会 CASTELLINA IN CIANTI

南側には森林があるが、それ以外は風や日差しを遮るものが何もない台地が広がっており、太陽の恵みを受けやすい地域であることがよく分かる。

キアンティ・クラッシコ ボルゴ スコペート 2017

CHIANTI CLASSICO BORGO SCOPETO 2017
品種:サンジョベーゼ90%、メルロー5%、コロリーノ5%
アルコール度数:13.5%
参考小売価格:4180円(税込)

カステリーナ・イン・キアンティの南部にあるカステルヌオーヴォ・ベラルデンガのワイン。標高は425m。穏やかな酸でタンニンとのバランスが良く、豊かな果実感のある、太陽の恵みを感じられる味わいだ。

産地を俯瞰する:カステルヌオーヴォ・ベラルデンガ

このワインの産地である、カステルヌオーヴォ・ベラルデンガの風景を見ていこう。360度俯瞰する写真はこちらから見ることができる。

キアンティ・クラッシコ協会 CASTELNUOVO BERARDENGA

第3回の記事で、ガイオーレ・イン・キアンティでつくられた「キアンティ・クラッシコ リエチネ2018」を紹介したが、そちらと同じくらいの標高であり、傾斜や土壌も似ている。風景を見比べてみると、山に囲まれた場所でつくられたリエチネと異なり、太陽の恵みを受けやすい開放的な地域であることがよく分かる。

キアンティ・クラッシコ協会が提供している、産地を360度俯瞰する写真を見ていると、ヘリコプターに乗りながらワインを味わっている気分になれる。旅気分で風景を眺めつつ、ワインに表現されたテロワールを堪能してみてはいかがだろうか。

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About the author /  鵜沢 シズカ
鵜沢 シズカ

J.S.A.ワインエキスパート。米フロリダ州で日本酒の販売に携わっている間に、浮気心で手を出したワインに魅了される。英語や販売・営業経験を活かしながら、ワインの魅力を伝えられたら幸せ