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シードルというお酒をコンビニやスーパーで見かけて、気になっている人も多いのではないだろうか。今回はそんな人に向けて、シードルとは何かといった基本的な知識から、飲み方、おすすめのシードルまで、まとめて紹介する。
シードルってどんなお酒?
シードルとは、リンゴを発酵させてつくる醸造酒。長い歴史を持つ果実酒で、紀元前からつくられていたといわれている。
シードルは、主にヨーロッパで生産されている。三大産地といわれるイギリス、フランス、スペインのほか、アメリカ、ドイツなどが主な生産国だが、日本でも近年、リンゴの産地で生産が活発化している。
また、シードルはアルコール度数が低く飲みやすいため、世界中で多くの人に飲まれている。
主な生産国と特徴
■フランス
フランスでは、主に北西部のブルターニュ地方とノルマンディ地方でつくられている。この地方は緯度が高く気温が低いため、ぶどうの栽培には向いていない。その代わりにリンゴの栽培が盛んで、シードルが多く生産されるようになった。
シードルは国によって呼び方が大きく異なり、フランスでは日本と同様に「シードル(cidre)」と呼ばれている。フランスのシードルは、果実の甘みと渋みをほど良く感じるものが多い。
ブルターニュ地方では、名物のそば粉でつくったクレープ「ガレット」と楽しむことが多いが、フランスのシードルはワイン同様にチーズなどとの相性も良い。
■イギリス
イギリスでは、シードルは「サイダー(cider)」と呼ばれている。主に、イングランド南部のサマセット州やヘレフォードシャー州、サフォーク州のほか、ウェールズでつくられている。
イギリスのシードルは、ドライで喉越しが良く、爽やかな酸味が特徴だ。ビールと同じようにパブなどで、ちょっとしたおつまみや揚げ物などと一緒に、気軽に楽しまれている。シードルをカジュアルに楽しむイギリスは、シードル消費量が世界一となっている。
■スペイン
スペインでは「シードラ(sidra)」と呼ばれ、北部のアストゥリアス州やバスク州、ガリシア州などでつくられている。「エスカンシアドール」と呼ばれる熟練の注ぎ手が、ボトルに入ったシードルを高い位置からグラスに勢いよく注ぎ、シードルのうま味を引き出す独特のスタイルが有名だ。
キレと濃厚さが特徴の「シドラ・ナチュラル」のほか、シャンパンのようなきめの細かい泡立ちの「シドラ・スパークリング」、濃縮されたリンゴの味わいを持つ「アイスシドラ」など、さまざまな種類のシードルがある。食前や食後に楽しめるだけでなく、煮込み料理や肉料理との相性も非常に良い。
■アメリカ
アメリカでは、「ハードサイダー(hard cider)」と呼ばれているシードル。太平洋岸北西部や東海岸、五大湖周辺などで主につくられており、ドライでキレがあるのが特徴だ。
通常、シードルには、食用とは異なるシードル専用のリンゴを使用するが、アメリカでは食用のリンゴを使う場合もある。さらに、ベリーやアプリコットなども使用するなど、独特なスタイルのシードルも少なくない。
■日本
日本で初めてシードルがつくられたのは、1954年前後とされており、歴史はそれほど深くない。
登場して間もない頃は、それほど人気があったわけではなかったようだ。しかし近年になり、リンゴの産地である長野県や青森県でシードルの生産が盛んになり始め、現在では、数多くのブランドが誕生している。
日本のシードルには、食用のふじや紅玉といったリンゴが使用されるため、フレッシュで繊細な味わいになる。また、果実の甘みをしっかりと感じられるものも多い。意外にも、天ぷらや焼き鳥(たれ)などとも相性が良い。
紀元前発祥! シードルの歴史
シードルの起源は定かではないが、紀元前1世紀頃に古代ケルト人がつくったというのが有力な説とされている。
その後、ローマ帝国にリンゴの栽培方法とシードルの生産方法が伝わり、盛んにつくられるようになったようだ。シードルという名前は、当時、果実酒を意味していたラテン語「シセラ」を語源としている。
11世紀になると、スペインからフランス北西部に位置するブルターニュ地方に製法が伝えられ、そこで独自の製法が生み出された。その後、イギリスでもシードルづくりが始まり、オーストラリアや北米にも広まっていった。
ワインと違う? シードルのつくり方
シードルの製造方法
収穫から破砕・圧搾まで
シードルには糖度の高いリンゴを使用するため、秋から冬にかけてよく熟したリンゴを収穫する。収穫したリンゴは、さらに熟成させるために、しばらく外気にさらしておくこともある。
収穫したリンゴは洗浄し、破砕する。リンゴはそのままでは固くて果汁を搾れないため、破砕はシードルにとってなくてはならない工程だ。
圧力を掛けて果汁を絞る圧搾には、破砕したリンゴを麻布に包んで木枠に入れ、板で押しつぶすといった昔ながらの方法のほか、油圧プレスがある。また、遠心分離式の搾汁方法もあり、搾り方によって味わいが異なる。
発酵から出荷まで
発酵は、タンクや樽で行う。酵母による発酵で、果汁に含まれる糖分が分解されてアルコールがつくられる。生産者によって、酵母を加えず自然の酵母を利用する自然発酵をしたり、白ワインやシャンパン用の酵母を加えて意図した発酵をする場合もある。
タンクや樽での発酵が終わったら、瓶詰めする。発酵後に糖分と酵母を追加して瓶内で二次発酵させるもの、炭酸ガスを注入するもの、発酵途中のものを瓶詰めして熟成庫で熟成期間をおいてから出荷するものなど、商品や生産者によって瓶詰めのタイミングは異なる。
飲みやすい、ヘルシーなお酒
シードルは、アルコール度数が2~8%と比較的低いものが多い。また、軽い口当たりで飲みやすく、アルコールが苦手な人にも人気がある。さらに、リンゴの皮に由来するポリフェノールだけでなく、アミノ酸やビタミン、ミネラル類も豊富に含まれているので、ヘルシーなお酒ともいえる。
シードルには、甘口、中辛口、辛口があり、使用するリンゴの甘さや、発酵期間の長さによって異なる。一般的に発酵期間が短いと糖分が多く残るため、アルコール度数が低く甘口になる。一方、発酵期間が長いと糖分があまり残らないため、アルコール度数が高めになり辛口になる。
また、シードルには発泡しているタイプと、していないタイプがある。
シードルの味わいはさまざまだが、概して甘口タイプのシードルには、すっきりとした爽やかな甘みがあり、中辛口や辛口タイプのシードルには、ほのかな苦みと酸味がある。
シードルの飲み方
シードルは、スパークリングワインやシャンパンと同じく、冷やして飲むのがおいしい。10℃以下に冷やすのがベストだといわれている。
グラスによって香り方や味わいに違いが出るワインと異なり、シードルはあまりグラスにこだわる必要はない。ガレットとともに楽しむフランスでは陶器のマグカップで、ビールと同じように楽しむイギリスやアメリカではビアグラスなどで飲む。
おすすめのシードル6選
ダンカートン ブラックフォックス オーガニック(イギリス)
イギリス・オーガニックシードルの最高峰と言われる、ダンカートンを代表する中辛口のシードル。長期熟成による圧倒的な果実味が特徴で、数々の賞を受賞している。
アルコール度数7.0% 発泡性
参考価格:1000円~1600円
シードル ヴァル ド ランス クリュ ブルトン ブリュット(フランス)
フランスのブルターニュ産リンゴを100%使用した、辛口のシードル。フレッシュな一番搾りの果汁をブレンドしている。豊かな香りとコクがあるとともに、発酵により糖分がほとんどアルコールになった、ドライで爽やかな喉越しが特徴。
アルコール度数5% 発泡性
参考価格:1100円~1600円
サピアイン シードラ ナトゥラル プレミウム(スペイン)
スペイン・バスク地方産のシードル。スペイン産リンゴを数種類使用してつくっている。製造後に品質をチェックし、合格したシードルだけをプレミアムとして瓶詰めしている。豊かな香りとはじける発泡感を楽しめるシードルだ。
アルコール度数7% 発泡性
参考価格:1200円~1800円
キリン ハードシードル(日本)
外国産のリンゴ果汁を使用したシードルだが、飲み切りサイズの瓶に入っていて手軽に楽しめるのがポイントだ。リンゴの香りと爽やかさを感じながらごくごく飲める。
アルコール度数4.5% 発泡性
参考価格:290ml瓶200円
ニッカシードル ドライ(日本)
国産リンゴを100%使用してつくったシードル。すっきりとした雑味のない味わいに仕上がっている。他に、甘口の「ニッカシードル スイート」「同 ロゼ」もある。飲み切りサイズの200ml瓶と、720ml瓶もある。
アルコール度数5%/発泡性
参考価格:200ml瓶1本203円、720ml瓶671円
スパークリング ポム ビオ ノンアルコール シードル(フランス)
フランス・ブルターニュ地方のレ・セリエ・アソシエが産する、ノンアルコールのシードル。シードル用に栽培したブルターニュ産のリンゴを100%使用している。すっきりした甘さとコクを持ち合わせた、アルコールを飲めない人でも味わえるシードルだ。
参考価格:1500円
シードルは、ワインやビールに比べて日本国内での知名度、人気はそれほど高くはないが、世界に目を向けるとワインやビールに劣らない人気を誇るお酒だ。アルコール度数が比較的低く、口当たりが良いので、お酒が苦手な人でも飲みやすい。
また、ポリフェノールやミネラル、ビタミンを豊富に含むため、ヘルシー志向のお酒ともいえる。飲み切りサイズで手軽な価格のシードルもあるので、気負わず楽しんでみてはいかがだろうか。