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サントリーワインインターナショナル(SWI)は2022年6月8日、「2022年日本ワイン戦略説明会」を開催した。同年1月開催の記者会見で発表された事業方針の1つ「日本ワイン 大刷新」についての詳細が明らかになった。
サントリーワイン2022年事業方針説明会② ――登美の丘ワイナリーから日本ワインの魅力を発信
説明会では、日本ワインを含む近年のワイン市場動向、日本ワインの魅力をユーザーに伝えるために打ち出した新コンセプトおよび新ブランド、持続可能なワインづくりなどについて発表があった。
第4回目となる本記事では、100年先を見据えた同社の品質向上の取り組み、持続可能なワインづくりについて紹介する。
世界を感動させる高品質ワインを目指して
日本ワインの品質をより向上するための同社の取り組みについて、サントリー登美の丘ワイナリー所長の庄内文雄氏から発表があった。
「良いワインは良いぶどうから」という考えのもと、同ワイナリーではぶどうの収穫期を見極めて、収量を最適化することで、より凝縮感のある高品質なぶどうを収穫している。
ワインの仕込み醸造工程では、丁寧に選果をし、細かく温度管理できる発酵タンクを設置して、ぶどうの自然な果実味を最大限に引き出すようにしているという。
同社はワインの品質をさらに向上させ、生産力アップを図るため、登美の丘・塩尻の両ワイナリーに合計で約10億円の設備投資をする。
同社のワイナリーでは、ぶどうの豊かな果実味を優しく丁寧に引き出す垂直型圧搾機の導入や、畑の個性ごとに仕込みができる小容量発酵タンクの増設、樽熟庫や瓶熟庫の貯蔵能力強化などを実施する。これらによって、ワインの品質をさらに高め、世界を感動させる高品質ワインの生産を目指す。
未来へつながるワインづくり
ワイン事業を創業とするサントリーは、100年以上にわたって日本ワインに携わってきたが、この先の100年も日本ワインをつくり続けていく上で、いくつかの課題がある。高齢化や離農による農業従事者の減少および遊休農地の増加、ぶどう栽培に大きな影響を及ぼす気候変動などだ。
これらの課題に対する具体的な取り組みについて、サントリー登美の丘ワイナリー栽培技師長の大山弘平氏から説明があった。
遊休農地を活用し、甲州の生産量を拡大
日本の多くの地域と同様、サントリー登美の丘ワイナリーがある山梨県も、農家の高齢化や離農による農業従事者の減少、遊休農地の増加を課題としている。
この課題を解決するため、同社は2015年に農業法人を設立。山梨県や地元の行政と連携し、遊休農地に主に甲州を植えて、ぶどう畑の面積を拡大している。甲州やその他品種を含む開発圃場の規模は、2021年の12haから2030年には20haに広がる見込みだ。
遊休農地に植え付けるぶどうの9割近くが、甲州であることには意味がある。日本固有のぶどう品種である甲州は、2010年にワインの国際的審査機関OIV(国際ぶどう・ワイン機構)に登録され、世界的にも高い評価を受けている。しかし、高齢化や離農により、山梨県での生産量は落ち込んでいるのだ。同社は今後も圃場開発を進め、2030年には山梨県の甲州生産量の約10%(297t見込み)を担うことを目指している。
気候変動に対応した、新たな栽培技術に挑戦
気候変動(温暖化)への対応として、同社はぶどうの成熟期を秋の初めから終わりにずらす新しい栽培技術「副梢栽培」にも取り組んでいる。この技術は山梨大学が特許を取得しており、同大学との共同研究という形で進めている。
副梢栽培では、ぶどうが実る「新梢」を切除して、新しく出てきた「副梢」を栽培に利用する。この作業を夏の開花前にやっておくことで、ぶどうが熟す時期が通常栽培よりも40日ほど後になり、より涼しい時期に高品質なぶどうを収穫できる。
山梨大学と共に、2021年からメルローに同技術を適用したところ、良好な結果を得られたという。2022年はシャルドネとカベルネ・ソーヴィニヨンも対象にして、副梢栽培の実施畑を約8倍に増やす計画だ。
「やまなし4パーミル・イニシアチブ」への参加
「4パーミル・イニシアチブ」は、「世界の土壌中の炭素量を毎年0.4%増やすことで、大気中のCO2増加分を相殺し、温暖化を抑制できる」という考えを基にした国際的な取り組みだ。
山梨県は、2020年から日本の自治体として初めて同イニシアチブに参加しており、果樹栽培を通じてCO2削減を目指す独自の試み「やまなし4パーミル・イニシアチブ」を展開している。同社は、山梨県の取り組みに2022年3月から参加している。
これまでにも同社は、草生栽培や圧搾後のぶどうを堆肥化して土に戻すなど、循環型農業を実施してきた。そうした取り組みに加え、土壌中の炭素量をさらに増やすため、ぶどうの剪定枝を炭にして土壌に混ぜ込むという試みを開始した。
この取り組みにより、対象畑での推定CO2削減量は、現状の年間約7tから計画達成時には約14tになる見込みだ。
同社は山梨県と連携しつつ、この取り組みが大きく広がるよう働きかけていく。また、こうしたサステナブルな活動を地域から全国に広げることで、これから先も日本ワインを消費者に届け続け、日本ワイン文化を守り育てたいとしている。
SWI日本ワインの2022年および中期販売計画
ぶどう畑を起点とした4つの戦略を打ち出し、日本ワインのさらなる市場拡大を目指すSWI。「FROM FARM」の新コンセプトを掲げ、品質にこだわりながら新たな展開を進め、2022年の販売数量を前年比111%の5.9万ケースと見込む。2030年には、2020年比で約2倍となる10万ケースにする計画としている。
【サントリーワイン2022年日本ワイン戦略説明会】
① 成長を続ける日本ワイン
② 新コンセプト「FROM FARM」のもと、ワイナリーを刷新
③ 今秋、新ブランド4シリーズを発売