コラム

ピーター・レーマン・ワインズ|バロッサの救世主! ぶどう農家と信頼の絆で結ばれたワイナリー ~解説:オーストラリアのワイナリー

ワイン新興国ながら、今や世界品質のワインを生み出すオーストラリア。今回は、ぶどう栽培農家との良好な関係を維持し、素晴らしいぶどうから品質の高いワインを生み出す、ピーター・レーマン・ワインズ(Peter Lehmann Wines)を紹介する。

大手ワイナリーから、一方的にぶどうの買い取りを中止されたぶどう栽培農家を救済するため、1979年に設立されたワイナリーだ。

ピーター・レーマン・ワインズとは

ピーター・レーマン・ワインズは、南オーストラリア州のバロッサ・バレーに拠点を置くワイナリー。州都アデレードから北東に80kmに位置するバロッサ・バレーは、オーストラリアを代表するワイン産地であり、世界でも高品質のワインを産み出す場所として高く評価されている。1840年代初頭にドイツからの移民によって開拓されたバロッサ・バレーには、1850年代に植えられた世界最古と言われるぶどうの樹が残っていることでも有名だ。

ピーター・レーマン・ワインズの歴史

ピーター・レーマン・ワインズを設立したピーター・レーマン氏は、ドイツ系移民の5世代目として1930年に生を受けた。レーマン氏は、バロッサの大手ワイナリーであるソルトラムで醸造の仕事に携わっていた。しかし、1979年にぶどうの供給が過剰になったことを理由に、同社が一方的に栽培農家からぶどうの買い取りを中止したことに反発し、退社する。

レーマン氏は、ぶどう栽培農家を救うべく、同年に私財を投じ、不足分はローンを組んで小さなワイナリーを設立。ソルトラムから買い取りを拒否された農家からぶどうを買い取り、ワインをつくることにした。そのワイナリーこそがピーター・レーマン・ワインズだ。

ファーストヴィンテージは1980年で、そのワインは“バロッサの土地と農家の未来を守る”という決意を表して「ザ・フューチャーズ(The Futures)」と名付けられた。そして、その年のワインの売り上げを農家に還元することで、農家が安心して次の年のぶどうを栽培できる環境を整えた。その結果、ピーター・レーマン・ワインズとぶどう栽培農家は、信頼という絆で結ばれることとなった。現在では、バロッサ・バレーとエデン・バレーを含むバロッサ全域で140以上の農家とパートナーになり、バロッサを守り、高品質なワインをつくるために協力し続けている。

ぶどうの余剰という厳しい状況でも、農家を見捨てずに協力する姿勢を貫いたレーマン氏は、今でも“バロッサの男爵”として尊敬されている。

ワインづくりに対する姿勢

オーストラリアを代表するバロッサ・バレーには、大小さまざまな150のワイナリーが集まっている。その中で、ピーター・レーマン・ワインズは、バロッサ・バレーを代表する品種のシラーだけでなく、グルナッシュやリースリング、セミヨン、シャルドネ、カベルネ・ソーヴィニヨンといったさまざまな品種から、品質の高いワインをつくり出している。

それを可能にしているのが、ぶどう栽培農家との協力体制だ。ワイナリーを設立したレーマン氏がそうだったように、ピーター・レーマン・ワインズの醸造家たちは、ぶどう栽培農家とのコミュニケーションを大切にし、協力して質の高いぶどうをつくる努力をしている。

設立当初から世代を超えて続く、このワイナリーと農家の信頼関係により、ピーター・レーマン・ワインズは、最高品質のぶどうから最高のワインを産出できるのだという。2015年に「イエロー・テイル」を展開するカセラ・ファミリー・ブランドによって買収され、世界のワイン市場に本格的に進出した後も、この姿勢は変わっていない。

おすすめワイン4選

オーストラリアの中でも、コストパフォーマンスが高いワインを産出するワイナリーの1つに数えられるピーター・レーマン・ワインズ。その品質の高さは、国内外で多くの賞を受賞していることからもよく分かる。ここでは、そんなピーター・レーマン・ワインズのワインを4つ紹介しよう。

ピーター・レーマン ストーンウェル シラーズ

ピーター・レーマン・ワインズが産するワインの中で最高峰のワインであり、フラッグシップワイン。1エーカー(約0.4ha)あたり1.5t以下という低収量の畑の中から、最高品質の厳選したぶどうだけを使用してつくる。この中には高樹齢のぶどうも含まれている。果皮を入れたまま2週間発酵した後に圧搾し、清澄した後フレンチオーク樽で12カ月熟成させている。10年以上の熟成に耐え得る、オーストラリア産シラーズの最高峰の1つだ。

ぶどう品種:シャルドネ、セミヨン 他
味わい:赤・フルボディ
参考小売価格:9008円(税別)

ピーター・レーマン マスターズ エイトソングス シラーズ

その年の最も優れた畑のぶどうを使用し、長期熟成させてつくる最高品質のワインシリーズ。このシリーズのラインアップには、バロッサの伝統品種であるシラーズ、リースリング、セミヨン、カベルネ・ソーヴィニヨンがある。ラベルに描かれたチェスの駒は、一世一代のギャンブラー精神で、ぶどう農家を救うためにワイナリーを設立したレーマン氏の思いを表したもの。

このワインは、低収量の古樹のシラーズをフレンチオークの新樽で熟成している。チェリーなどの赤い果実香の中にダークチョコレートやコーヒーをわずかに感じるのが特徴で、豊かな果実味と滑らかなタンニンを持つ。

ぶどう品種:シラーズ
味わい:赤・フルボディ
参考小売価格:4500円(税別)

ピーター・レーマン ザ・バロッサン シラーズ

次世代のワインメーカーたちが、ワイナリーの設立者であるレーマン氏へのオマージュとしてつくったのが「ザ・バロッサン」シリーズ。まさに、現代のバロッサを表現していると言っても過言ではないワインだ。

同シリーズのシラーズは、古典的なバロッサのシラーズと比べて舌触りが滑らかで飲みやすい。フレンチオークとアメリカンオークの樽で12カ月熟成している。同シリーズには、シラーズの他にカベルネ・ソーヴィニヨン(カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、シラーズを使用)もある。

ぶどう品種:シラーズ主体
味わい:赤・フルボディ
参考小売価格:2808円(税別)

ピーター・レーマン ポートレート カベルネ・ソーヴィニヨン

肖像画を描くように、産地の個性を表現したいという思いでつくられた「ポートレート」シリーズ。バロッサを体現した伝統的なスタイルで、ラインアップは、同地域を代表するシラーズ、カベルネ・ソーヴィニヨン、リースリングの3品種。バロッサ全域にちらばるパートナーの農家で収穫したぶどうをブレンドすることで、バロッサを表現している。

そのうちのカベルネ・ソーヴィニヨンは、明るいガーネット色のワイン。バロッサのカベルネ・ソーヴィニヨンに特徴的なブラックベリーやカシス、草の青っぽい香りを持つ。

ぶどう品種:カベルネ・ソーヴィニヨン
味わい:赤・フルボディ
参考小売価格:2000円

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