コラム

パーカー・クナワラ・エステイト|高品質なボルドースタイルの長期熟成ワインのつくり手 ~解説:オーストラリアのワイナリー

フランスやイタリアなどのワイン伝統国に対し、ニューワールド(新世界)に位置づけられるオーストラリア。現在では、数多くの生産者が質の高いワインを生み出している。

そんなオーストラリアの中から、今回はパーカー・クナワラ・エステイト(Parker Coonawarra Estate)を紹介する。ワイナリーを代表する最高品質のワイン「ファースト・グロース カベルネ・ソーヴィニヨン」は、ファーストヴィンテージから世界で高く評価され続けている。

パーカー・クナワラ・エステイトとは

南オーストラリア州の南東、クナワラに位置するパーカー・クナワラ・エステイトは、1985年にジョン&フェイ・パーカー氏によって設立された。

クナワラは、アデレードから車で南に3時間半ほど、メルボルンから西に4時間ほどの場所にある。長さ15km、幅1kmほどの細長いエリアに赤い粘土質のテラロッサ土壌が続き、長期熟成のワインを生み出す産地として知られる。

パーカー・クナワラ・エステイトの歴史

ジョン氏は、クナワラのテラロッサ土壌の南端がぶどう栽培に最も適していると考え、そこに土地を購入。アビー家から譲り受けたその土地に、1800年代後半のフィロキセラ禍以前に持ち込まれた、ボルドー原産のカベルネ・ソーヴィニヨンの挿し木を植えた。

1988年には、最高品質のぶどうからつくる「ファースト・グロース カベルネ・ソーヴィニヨン」を初めてリリースし、パースで開催された「ペンフォールド・ハイランド・トロフィー」を受賞。1991年の「インターナショナル・ワイン・チャレンジ(International Wine Challenge:IWC)」では、ボルドースタイルで6位に入賞するなど、高品質な長期熟成ワインを産出するワイナリーとして評価されるようになった。

2013年にハスケスファミリーがオーナーとなった後も、設立者であるジョン氏の理念は引き継がれている。

ワインづくりに対する姿勢

パーカー・クナワラ・エステイトでは、土壌に敬意を払い、土壌に適した最高級のぶどうを栽培して、そのポテンシャルを引き出した最高のワインをつくるという理念のもと、ワインづくりを行っている。

その理念が示す通り、ぶどう栽培や醸造だけでなく、土地の状態にも細心の注意を払っている。電磁探索により土壌の状態を調査し、ぶどう栽培に最適な状態に保っている。

ぶどう栽培においては、1ha当たりの収量を約5tに抑えて、ぶどうの品質を高めている。それでも品質が納得のいくレベルに達していない年は、最高品質のぶどうだけを使用してつくるパーカー・クナワラ・エステイトの最高級ワイン「ファースト・グロース カベルネ・ソーヴィニヨン」を醸造しないといったように、品質にはこだわりを持っている。さらに、2001年には温度管理された熟成設備やセラーを導入したり、妥協を許さない丁寧なワインづくりに取り組んでいる。

こうしたこだわりから、最高級の「ファースト・グロース カベルネ・ソーヴィニヨン」だけでなく、セカンド・ラベルとも言える「テラロッサ カベルネ・ソーヴィニヨン」も国際的なコンクールで最優秀賞を獲得するなど、世界で高く評価されている。それに伴い、同ワイナリーのワインは入手が困難になりつつある。

クナワラの土壌と気候

パーカー・クナワラ・エステイトが位置するクナワラには、赤色土壌が広がっている。それは、イタリア語で「赤い土」を意味する「テラロッサ」という間帯土壌で、石灰岩の風化によってできたもの。土壌が赤色なのは、石灰岩に含まれる炭酸カルシウムが雨で溶け出し、残った鉄分が酸化して赤みを帯びるのだ。水はけが良く、ぶどうの中でも特にカベルネ・ソーヴィニヨンの栽培に適している。

土壌だけでなく、クナワラの気候もぶどう栽培に適している。クナワラは海洋性気候に属し、フランス・ボルドー地方と似た気候となる。夜になると気温が下がるが、昼は暖かく乾燥している。ただし、夏は曇りの日が多く、暑くなりすぎることがないため、ぶどうがゆっくりと成熟する。昼夜の寒暖差や完熟するまでの時間が長いことで、濃縮したぶどうができる。

土壌も気候もぶどう栽培に適しているクナワラだが、とりわけカベルネ・ソーヴィニヨンの栽培が盛んだ。“カベルネの里”と呼ばれるほど高品質のカベルネ・ソーヴィニヨンが栽培され、質の高いワインをつくり出す産地として、世界から認められている。

おすすめワイン3選

パーカー・クナワラ・エステイトの名を世界に知らしめたのは、同ワイナリーの最高級ワイン「ファースト・グロース カベルネ・ソーヴィニヨン」だ。しかしこのワインは、日本で入手するのはかなり困難だ。ここでは、日本でも入手しやすく、パーカー・クナワラ・エステイトの味わいを堪能できるワインを紹介する。

パーカー・クナワラ・エステイト 95ブロック

ぶどうの出来が最高の年にだけ、自社畑の95ブロックで栽培された質の高いぶどうを使用して特別に醸造するワイン。この区画で栽培しているカベルネ・ソーヴィニヨンは、1800年代後半のフィロキセラの被害以前に、ボルドーから持ち込まれた挿し木を使ったもの。他にプティ・ヴェルドも少し栽培しており、このワインを醸造する際に、カベルネ・ソーヴィニヨンとともに使用されている。

深みのあるルビー色で、フレッシュなカベルネ・ソーヴィニヨンの心地良い香りを持つ。生き生きとした果実味に、プティ・ヴェルド由来のフローラルの風味が加わる。豊かなタンニンと滑らかな後味を残す、複雑な味わいの上品な1本だ。

品種:カベルネ・ソーヴィニヨン、プティ・ヴェルド
味わい:赤・フルボディ
参考小売価格:7728円(税別)

パーカー・クナワラ・エステイト フェーバレットサン カベルネ・ソーヴィニヨン

自社畑のアビーヴィンヤードと、クナワラのやや北にある契約農家のぶどうを使用。海外でも気軽に試してもらおうと、手頃な価格帯となっている。ブラックベリーやカシスなどの黒系果実のジューシーな味わいと、きめ細かいタンニンがうまく調和し、長い余韻を楽しめる。

品種:カベルネ・ソーヴィニヨン
味わい:赤・フルボディ
参考小売価格:1878円(税別)

パーカー・クナワラ・エステイト クナワラシリーズ カベルネ・ソーヴィニヨン

産地であるクナワラの特徴が調和した1本。長期熟成ワインを生み出すパーカー・クナワラ・エステイトにあって、比較的若い樹のぶどうを使用してつくるため、若いうちから楽しめる。ベリーやチョコレートの香りと、豊かな果実味、質の高いタンニンが混じり合うしっかりとした味わいを持つ。

品種:カベルネ・ソーヴィニヨン
味わい:赤・フルボディ
参考小売価格:2628円(税別)

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