コラム

最高品質のシラーズから、世界最高峰のワインを産するヘンチキ ~解説:オーストラリアのワイナリー

フランスなどのワイン伝統国に比べると歴史は浅いが、今や世界各地で人気の高いワインが生み出されているオーストラリア。

数多くの生産者がしのぎを削るオーストラリアの中から、今回は家族経営のワイナリーとして長い歴史を持つ、ヘンチキ(Henschke)を紹介する。

ヘンチキとは

“素晴らしいワインは素晴らしい畑から”という理念のもと、単一畑にこだわり、世界最高峰のシラーズを産するヘンチキ。世代を超えて、最高品質のワインをつくり続けている。

ヘンチキの歴史

ヘンチキは、ヘンチキ家の初代ヨハン・クリスチャン・ヘンチキ氏によって、設立されたワイナリーだ。ヘンチキ家は、現在のドイツ、ポーランド、チェコにまたがるシレジア地域に拠点を置いていた、シレジア人にルーツを持つ。

ヨハン氏は、1841年にドイツから南オーストラリアに移住。1847年にオーストラリアへの帰化が認められたことで、自分の土地を持てるようになり、バロッサ・バレーに70エーカー(約28ha)の土地を購入した。なお、バロッサ・バレーには、現在も当時の家屋の一部が残っている。

そして1862年、彼は「良いワインがつくれる」と見込んだキーントンに80エーカー(約32ha)の土地を購入し、ドイツの伝統的な方法を取り入れてぶどうづくりを開始。これがワイナリーとしてのヘンチキの始まりとされている。

当初は家族や友人と楽しむためにワインをつくっていたが、徐々に人気が出て、1868年には一般販売を開始。その後、ワイナリーの運営は息子や孫が引き継ぎ、現在もヘンチキは発展を続けている。

ワインづくりに対する姿勢

ヘンチキのワインづくりにおける理念は、“素晴らしいワインは素晴らしい畑から”というもの。この理念に基づき、イーデン・バレーやバロッサ・バレー、アデレード・ヒルズにある最高の条件を備えた畑で、最高品質のぶどうを栽培している。

ヘンチキのワインづくりにおいては、単一畑での栽培にこだわっている点も見逃せない。単一畑に取り組み始めたのは、4代目のシリル・ヘンチキ氏の時代だ。

当時、世間では、ブレンドワインやフォーティファイド・ワイン(酒精強化ワイン)が主流であった。しかし、シリル氏はあえて単一畑に取り組み、素晴らしいぶどうとワインを産出し続けたのである。

ヘンチキが所有する畑の中でもイーデン・バレーのシラーズは、樹齢150年を超えている。19世紀に猛威をふるった害虫フィロキセラにも侵されていない貴重な古樹で、ヘンチキ家が誇る財産でもある。

そしてシリル氏は、このシラーズから世界最高峰のシラーズワイン「ヒル・オブ・グレース」と「マウント・エーデルストーン」を産した。この2つのワインは、今では“オーストラリアのカルトワイン”と称されるほどの名品となっている。

ヘンチキの現在と今後の展望

現在、ワイナリーを率いているのは、5代目のステファン氏と妻のプルー氏。彼らは、ワインづくりにヨーロッパの伝統的な醸造法を用いていて、次世代にも引き継ごうとしている。

また、彼らは次世代の6代目とともに、オーガニックやバイオダイナミックの理論に基づいた畑づくりとぶどう栽培を試みている。「先祖が代々大切にしてきた畑をさらに豊かなものにして、次世代がより良いワインをつくれるように」との願いを込め、日々情熱的にワインづくりに取り組んでいる。

さらに、AFFW(Australia’s First Families of Wine、オーストラリアの最初のワイン・ファミリー)という団体にも参加している。この団体は、オーストラリアで長い歴史を誇り、何世代にもわたって家族経営を続ける10のワイナリーが集まって、2009年に結成したものだ。

AFFWメンバーは、ヘンチキのほか、ブラウン・ブラザーズ(Brown Brothers)、タービルク(Tahbilk)、ヤルンバ(Yalumba)、キャンベル(Campbells)、ハワード・パーク(Howard Park)、テイラー(Taylors)、ダーレンベルグ(d’Arenberg)、ジム・バリー(Jim Barry)、ティレルズ(T’yrrell’S)となっている。

AFFWは、それぞれの歴史やワインづくりの経験を集約させ、より良いワインを産するのが目的。メンバーであるヘンチキも、さらなる発展が期待できるだろう。

おすすめワイン5選

世界最高峰のシラーズを生み出したヘンチキのワインは、世界中で人気を集めている。ペンフォールズの「グランジ」と双璧を成す高級ワイン「ヒル・オブ・グレース」など、質の高いワインを生み出している。

ヘンチキ ヒル・オブ・グレース

ヘンチキのフラッグシップワインであり、世界最高峰のシラーズ100%の赤ワイン。約20カ月間熟成させており、厚みと深みのある味わい。色合いは深い赤色で、スパイスやブラックベリーなどの複雑な香りを持つ。しっかりとしたタンニンが長く続き、余韻も楽しめる。

品種:シラーズ
味わい:赤・フルボディ
参考小売価格:12万5000円

ヘンチキ マウント・エーデルストーン・シラーズ

「ヒル・オブ・グレース」とともに、世界最高峰と称される、シラーズ100%の赤ワイン。ほのかなスパイス香によって、ベリーの香りが際立っている。プラムなどの果実とスパイスが混じり合った複雑な味わい。滑らかなタンニンが長く続く。

品種:シラーズ
味わい:赤・フルボディ
参考小売価格:3万円

ヘンチキ ヒル・オブ・ローゼス

世界最高峰のワインであり、「ヒル・オブ・グレース」と同じ畑のぶどうからつくられる、シラーズ100%の赤ワイン。樹齢約25年の、若いシラーズからつくられている。ベリー類の香りとともにムスクやハーブの香りをほのかに感じる。プラムやラズベリーの味わいにスパイスなどが混ざり、深みのある味に仕上がっている。滑らかなタンニンが長く続く。

品種:シラーズ
味わい:赤・フルボディ
参考小売価格:5万円

ヘンチキ シリル・ヘンチキ・カベルネ・ソーヴィニヨン

最初に単一畑に取り組んだ、4代目のシリル氏へのオマージュとしてつくられたワイン。熟したブラックベリー、カシス、スミレ、シガーボックスなどのニュアンスを感じる複雑なアロマ。力強い味わいで、上質な酸と存在感のあるタンニン、滑らかな余韻が長く続く。

品種:カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、メルロー
味わい:赤・フルボディ
参考小売価格:2万4000円

ヘンチキ ジュリアス・リースリング

リースリング100%の白ワイン。タンクで発酵後すぐに瓶詰めし、果実香を残している。色味は淡い麦わら色で、プルメリアやバラ、シトラスの香りに加え、ペッパーの香りも持つ。ライムの甘い味わいと酸味のバランスが非常によく、長い余韻にはミネラルも感じる。

品種:リースリング
味わい:白・辛口
参考小売価格:6000円

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