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フランスなどのワイン伝統国に比べると歴史は浅いが、今や世界各地で人気の高いワインが生み出されているオーストラリア。同国の中で最も古い歴史を持つ家族経営ワイナリーの1つが、ヤルンバ(Yalumba)だ。
自社の苗木研究所や樽工房を保有し、苗木から樽まで一切の妥協を許さないワインづくりで、家族経営ながら素晴らしい発展を遂げ、世界で高く評価されている。
ヤルンバとは
ヤルンバは、1849年にサミュエル・スミス氏が創設したワイナリー。オーストラリアで最も古い家族経営のワイナリーの1つとして知られている。
ヤルンバの歴史
ヤルンバは、南オーストラリア州の州都アデレードから、北東におよそ80㎞のバロッサにある。ヨーロッパからの移民によって開拓されたバロッサは、オーストラリア最大のワイン産地で、古くからワインがつくられてきた。ヤルンバの創設者であるサミュエル氏も、イギリスから移住してきた1人だ。
サミュエル氏は、隣町アンガストンとの境界に、30エーカー(約12ha)の土地を購入。月明かりの下、12歳の息子シドニーと一緒に、初めてのぶどうの樹を植えたのがワイナリーの始まりと言われている。ワイナリー名の「ヤルンバ(Yalumba)」は、オーストラリアの先住民族であるアボリジニの言葉で「全ての大地」という意味を持つ。
ヤルンバは、ヨーロッパの伝統を大切にしつつ、常にチャレンジを続けている。1958年には、マレー川沿いの豊かな土地に、新しいワイナリーとしてオックスフォード・ランディング・エステート(Oxford Landing Estates)を創設。1975年には、ナーサリー(nursery)と呼ばれる苗木研究所をつくり、新種の研究や苗木の育成・販売を行い、他のワイナリーにも苗木を供給するなど、オーストラリア全体のぶどう栽培に貢献するようになった。
オーストラリアでいち早くヴィオニエ種の栽培を始めたのもヤルンバで、オーストラリアにおけるヴィオニエ栽培の先駆者と言われている。ヤルンバが、1980年にエデン・バレーに植えたヴィオニエ種の苗木は、オーストラリアで最も古いヴィオニエの樹の1つとされており、ヴィオニエはヤルンバを象徴する品種として世界から高い評価を得ている。
ワインづくりに対する姿勢
ヤルンバでは、“苗木から樽まで”という信念のもと、ワインづくりに関わる全てにおいて妥協を許さない完全主義を貫いている。ぶどうの栽培では、土壌だけでなく苗木の品質にもこだわり、苗木研究所を独自に保有。また、自社樽工房を完備し、ワインの熟成に使用する樽にもこだわっている。自社樽工房を保有するワイナリーは、南半球ではヤルンバだけとなっている。
苗木から熟成に使用する樽に至るまで、全てにこだわりを持つヤルンバでは、多くのぶどう品種を扱うだけでなく、それぞれの品種の個性を前面に押し出したワインや、複数をブレンドしてヤルンバの個性を出したワインなどを産している。
ヨーロッパスタイルの伝統を守る一方で、常に新しいことに挑戦し、革新をもたらしているヤルンバ。自然環境保護にも目を向け、サステナブル(持続可能)なワインづくりに取り組んでいる。ワイナリーに備えるソーラーシステムは、オーストラリア国内のワイナリーの中で最大規模だ。そうした取り組みが認められ、世界中で40以上の賞を受賞している。
おすすめワイン5選
現在は5代目にあたるロバート・ヒルスミス氏が当主を務め、伝統を守りながらも新しいワインづくりに挑戦し、さまざまなワインを提供している。中でも、ヤルンバを象徴する品種のヴィオニエを使ったワインは、世界から高く評価されている。
ヤルンバ ザ シグネチャー
「署名」の意味を持つ「シグネチャー」を冠する、ヤルンバのフラッグシップワイン。1962年からつくられていて、ぶどうの出来が良い年にのみ醸造される。カベルネ・ソーヴィニヨンとシラーズを使用。豊かな果実香の中にクローブやチョコレート、燻製した肉の香りも感じる。濃厚な果実味とタンニン、酸味のバランスが非常に良いワイン。
ぶどう品種:カベルネ・ソーヴィニヨン、シラーズ
味わい:赤・フルボディ
オープン価格
ヤルンバ ザ ヴェルギリウス ヴィオニエ
古代ローマの詩人ヴェルギリウスの名前を冠した、ヤルンバの最高級白ワイン。ヤルンバを代表するぶどう品種のヴィオニエを使用する。完熟したアンズやメロンの果実の香りと、ジャスミンなどのエキゾチックな香りを持つ。濃厚な果実味と柔らかな酸を感じる上品な味わい。
ぶどう品種:ヴィオニエ
味わい:白・辛口
オープン価格
ヤルンバ ザ オクタヴィウス オールド ヴァイン シラーズ
ミズーリ・アメリカン・オークを使用し、ヤルンバの自社樽工房でつくられた小容量のオクターヴ樽(80~100L樽)で熟成したワイン。ブラックチェリーなどの濃厚な果実の香りと味わいの中に、スパイスやチョコレートのほのかな香りと酸味、タンニンがうまく調和している。
ぶどう品種:シラーズ
味わい:赤・フルボディ
オープン価格
サミュエルズ コレクション エデン ヴァレー ヴィオニエ
創業170年を記念してつくられたシリーズで、創業者の名前を冠した「サミュエルズ・コレクション」。エデン・バレーで栽培されたヴィオニエ種だけを使用し、樽で10カ月熟成している。完熟の白桃やユリのような甘い香りの中に白こしょうを感じる。濃厚な果実味と程よい酸味を持ち、長い余韻を楽しめる。同コレクションには、ヴァロッサ・バレーとエデン・バレーで栽培されたシラーズを使用してつくる赤ワイン「ヴァロッサ シラーズ」もある。
ぶどう品種:ヴィオニエ
味わい:白・辛口
オープン価格
ヤルンバ ワイ シリーズ シラーズ/ヴィオニエ 2020
シリーズ名の「ワイ(Y)」は、ヤルンバ(Yalumba)の頭文字であるとともに、「あなただけのワイン(Your Wine)」を見つけてほしいという思いが込められている。2022年9月にパッケージを刷新し、中央に「Y」を大きく配した洗練されたデザインになった。
シリーズのうち、赤ワインの「ヤルンバ ワイ シリーズ シラーズ/ヴィオニエ」は、黒ぶどう品種のシラーズと白ぶどう品種のヴィオニエを使用。ブラックチェリーやスミレを思わせる華やかな果実味と、きめの細かいタンニンを持つ。
ぶどう品種:シラーズ、ヴィオニエ
味わい:赤・ミディアムボディ
オープン価格
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