メドックワイン委員会は2022年11月2日、八芳園(東京都港区)にて、「メドックワイン マスタークラス2022」を開催した。
講師を務めたのは、日本ソムリエ協会理事で、同協会認定ソムリエ・エクセレンスの米野真理子氏。米野氏から、フランスのワイン生産地として知られるメドックの歴史やテロワール、格付け、環境保護への取り組みなどについて解説があった。
クラス後半では、メドック地区全8アペラシオンのワイナリーから寄せられた、2019年と2010年代のワインのテイスティングも実施された。
2回目となる今回の記事では、メドックの3つの公式な格付けについて紹介する。
メドックの3つの公式格付けとその他のシャトー
フランスに6つあるワインの公式な格付けの1つが、メドックの格付けだ。さらにメドックには、3つの公式格付けがある。「グラン・クリュ(1855年の格付け)」と「クリュ・ブルジョワ」「クリュ・アルティザン」の3つだ。
グラン・クリュ(1855年の格付け)
1855年のパリ万博の際、ナポレオン3世の要請で制定された格付けで、第1級から第5級まで61のシャトーが格付けされている。
制定から160年あまりが経つが、1973年にシャトー・ムートン・ロートシルトが第1級に昇格したことを除いては、現在まで変更なく歴史を重ねている。
第1級:5シャトー(シャトー・ラトゥール、シャトー・ラフィット・ロートシルト ほか)
第2級:14シャトー(シャトー・ローザン・セグラ ほか)
第3級:14シャトー(シャトー・キルヴァン ほか)
第4級:10シャトー(シャトー・サンピエール ほか)
第5級:18シャトー(シャトー・ポンテ・カネ ほか)
クリュ・ブルジョワ
ボルドーの有産階級であるブルジョワがメドックの土地を獲得したことから、後にその畑の区画を「クリュ・ブルジョワ」と呼ぶようになった。
クリュ・ブルジョワの格付けは1932年に始まり、適用されない時期や復活を経て、2020年に、2018ヴィンテージから5年間有効とする新たな格付けが制定された。
2020年に格付けされたシャトーは249で、クリュ・ブルジョワよりも格上の「クリュ・ブルジョワ・シュペリウール」、傑出して優れている「クリュ・ブルジョワ・ゼクセプショネル」の3段階の品質認定がある。
クリュ・ブルジョワ・ゼクセプショネル:14シャトー
クリュ・ブルジョワ・シュペリウール:56シャトー
クリュ・ブルジョワ:179シャトー
ほとんどが家族経営のシャトーだが、産出するワインは、メドックのワイン総生産量のうち40%を占めている。
クリュ・アルティザン
「クリュ・アルティザン」の呼称は、150年以上前から存在すると言われる。もともとは、樽の製造や蹄鉄などの手工業とぶどう栽培農家を兼業する職人を指していた。1994年にEU(欧州連合)に公式に認定され、2006年に栽培面積6ha以下の44シャトーがクリュ・アルティザンに格付けされた。2017年の認証生産者は36とされる(現在は30)。
グラン・クリュやクリュ・ブルジョワよりも規模が小さいクリュ・アルティザンのシャトーでは、栽培・醸造はもちろん、熟成後の包装や販売など、ワインづくりに関わる全ての工程を、家族あるいは個人で管理している。
なお、3つの公式格付けの間に階層はなく、メドックのどの生産者も情熱と誇りを持ってワインを生産している。
3つの公式格付け以外のシャトーと協同組合
メドックでは1000を超えるワインブランドがつくられているが、そのうち何らかの格付けに属しているのは350に満たない。生産数量では、格付けに属していないその他の生産者によるワインが最も多い。
また、メドックには6つのワイン協同組合がある。約400人の組合員は組合を通じて、大規模農家と同じように、優れた醸造技術者からアドバイスをもらったり、最先端の生産技術を学んだりできる。
次回の記事では、メドックの8つのアペラシオンのうち、地域名AOC(Appellation d’Origine Controlee、原産地呼称)であるメドックとオー・メドック、西側の村名AOCであるリストラックとムーリスの4つを紹介する。
【メドックワイン マスタークラス2022】
①主要ワイン産地メドックの歴史と多様なテロワール