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フランスワインの2大産地の1つ、ブルゴーニュ。世界中のファンがブルゴーニュワインを愛飲しているが、その中でも特に熱い視線を集めているワイナリーの1つが、ドメーヌ・フーリエ(Domaine Fourrier)だ。
極上のワインを生み出すための独自の信念・哲学があり、年間生産量は少ないものの、確かな味わいで多くのファンを魅了している。その原動力となっているのが、“テロワリスト”と自らを称する、当主のジャン・マリー・フーリエ氏だ。今回は、ドメーヌ・フーリエの特徴や同氏の哲学、おすすめのワインを紹介していく。
ドメーヌ・フーリエとは
ドメーヌ・フーリエのワインづくりを支える基盤には、その長い歴史と畑のクオリティがある。まずは、それらについて解説する。
ルーツと成り立ち
ドメーヌ・フーリエは古い歴史を持つ生産者であり、前身となるドメーヌは19世紀半ばに設立されている。その後、1967年に3代目当主がワイン醸造中の不慮の事故で亡くなったことをきっかけに、現当主の父であるジャン・クロード・フーリエ氏がわずか14歳でドメーヌを引き継ぐことになった。彼の大叔父の助力もあり、ドメーヌは存続できたのである。
そんな経験をした彼は、「ワインづくりは早いうちから取り組んだほうが良い」という考えから、1994年に50歳の若さで引退。ドメーヌを、現当主のジャン・マリー・フーリエ氏に譲った。それと同時にドメーヌ名も「ドメーヌ・フーリエ」に変更され、現在に至る。
所有畑の70%が1級と特級
ドメーヌ・フーリエの畑は、銘醸地として名高いジュヴレ・シャンベルタンにある。他にも、モレ・サンドニ、シャンボール・ミュジニィ、ヴージョに畑を持ち、所有する畑の実に70%は、プルミエ・クリュ(1級)もしくはグラン・クリュ(特級)である。
栽培においては、農薬は低濃度の硫酸銅を、肥料は遺伝子組み換えではないものを使用している。特筆すべきはぶどうの樹の樹齢で、平均50年にもなる。20世紀初頭に植樹されたものも多く、その中でもクロ・サン・ジャックとコンブ・オー・モワンヌの畑には、樹齢100年前後の樹もある。この2つの畑で育ったぶどうを使うワインは、愛好家から“カルトワイン”とも呼ばれ、入手は困難を極める。
“テロワリスト”ジャン・マリー・フーリエ氏とは
現当主のジャン・マリー・フーリエ氏は、ワインづくりに対して並々ならぬ情熱と哲学を持つ人物だ。
故アンリ・ジャイエ氏に学ぶ
ジャン・マリー・フーリエ氏は、地元の農業高校からブルゴーニュ大学に進学し、醸造を学んだ。卒業後は、1988年に“ブルゴーニュの神様”と称される、故アンリ・ジャイエ氏の下でワインづくりについて学ぶ。1993年には、アメリカのオレゴン州で、ジョセフ・ドルーアン氏からピノ・ノワールの栽培や醸造についての見聞を得た。
帰国後、23歳だったジャン・マリー・フーリエ氏は、ドメーヌの経営権を父から移譲される。この時には、彼の中でテロワリストとしてのワインづくりの哲学や姿勢が完成されていたという。
「テロワリスト」とは、テロワール至上主義者のことを指す。「ワインづくりに欠かせないぶどうに対し、極力人間は介入せず自然の力に任せることで、小手先の手法では実現できない本物かつ最上級のワインが完成する」と、ジャン・マリー・フーリエ氏は考えているそうだ。
この考え方には、「偉大なワインづくりはぶどう畑に始まる」という故アンリ・ジャイエ氏の教えが大きく影響しており、テロワールの持ち味を生かしたワインづくりを徹底することに重きを置いている。
テロワールの良さを最大限に伝えるワインづくり
テロワリストであるジャン・マリー・フーリエ氏のワインづくりには、信念とこだわりが随所に垣間見える。まず、ワインづくりに用いるぶどうは、ほとんどが樹齢30年以上のもの。樹齢の低いぶどうは、他所に売ってしまうのである。また、収穫の際には手摘みをする段階で非常に厳しい選別を行い、良質なぶどうだけをワインづくりに用いる。
醸造工程で最も特徴的なのが、これほどの生産者であるにもかかわらず、新樽率がグラン・クリュでも20%以下である点だ。また、酸化防止剤の亜硫酸塩を必要最小限に抑え、澱引きはせず、瓶詰めを手作業で行う。
澱引きをしないことで、16~20カ月ほどの熟成期間中に、自然とワインは清澄度を増し、ろ過や清澄処理の必要性がなくなる。こうした手法にも、「ぶどう本来の味以外を極力ワインに加えず、テロワールの良さを最大限伝える」という彼の信念が影響していると言えよう。
おすすめワイン3選
ドメーヌ・フーリエが生産するワインは、どれも希少で人気が高い。ここでは、その中でもおすすめのワインを3本紹介する。
※価格はヴィンテージにより異なる。
ジュヴレ・シャンベルタン プルミエ・クリュ クロ・サン・ジャック ヴィエイユ・ヴィーニュ
ジュヴレ・シャンベルタンのプルミエ・クリュの中でも特別視される、クロ・サン・ジャックで採れたぶどうだけでつくる、ぜいたくな1本。イチゴやカシスなどの赤・黒系の果実、ぼたんの花、ダークチョコレートの香りに、ミントやグリルした肉の風味も感じられる。果実味とタンニンがきれいに調和した、エレガントな口当たりが特徴だ。
ぶどう品種:ピノ・ノワール100%
味わい:赤
参考小売価格:20万5000円(税込)
ジュヴレ・シャンベルタン プルミエ・クリュ シェルボード・ヴィエイユ・ヴィーニュ
他のプルミエ・クリュよりも好立地の畑から採れたピノ・ノワールを100%使用し、ワンランク上の複雑さと芳醇さが楽しめる。ダークチェリー、プラム、カシスなどの黒系果実のアロマに、スミレ、オレンジピールといった花の香りも混ざり合う。奥行きのある果実味とシルキーなタンニン、洗練された長く心地よい、古樹ならではの余韻も楽しめる1本だ。
ぶどう品種:ピノ・ノワール100%
味わい:赤
参考小売価格:7万円(税込)
グリオット・シャンベルタン・ヴィエイユ・ヴィーニュ
ぶどうが採れる面積が狭く、収穫量も少ないグリオット・シャンベルタンの畑で採れたぶどうでつくった1本。カシス、ラズベリーなどの黒系果実に、スターアニス、メンソール、鉄などが加わり、エレガントなニュアンスがある。甘いペストリーやパッションフルーツのような甘美な味わいと、しなやかで繊細なタンニンが上質に絡み合い、余韻も非常に長い。
ぶどう品種:ピノ・ノワール100%
味わい:赤
参考小売価格:26万1800円(税込)
【知っておきたいブルゴーニュのつくり手】
ドメーヌ・ニュダン|20以上のアペラシオンを有する老舗ドメーヌ
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