コラム

フィリップ・ルクレール|エネルギッシュな長期熟成ワインで世界を魅了 ~知っておきたいブルゴーニュのつくり手

多くのファンに愛される、フランス・ブルゴーニュのワイン。その中でも、発売されたワインがすぐに売り切れてしまうほど、世界中に熱狂的なファンを持つドメーヌがある。それが、ジュヴレ・シャンベルタン村のフィリップ・ルクレール(Philippe Leclerc)だ。

その理由はいくつかあるが、フィリップ・ルクレールのワインの力強さやエネルギッシュさが飲み手にしっかりと伝わっていることが大きい。今回は、フィリップ・ルクレールの概要や、代表的なワインについて解説していく。

フィリップ・ルクレールとは

フィリップ・ルクレールは、ジュヴレ・シャンベルタン村の小規模生産者の中でもトップクラスの評価を得ているが、他のドメーヌにはない特徴がいくつかある。ここでは、その成り立ちや特徴などを紹介する。

フィリップ・ルクレールの成り立ち

創業は1924年だが、ワインの生産に本格的に着手したのは1974年になる。当主のフィリップ・ルクレール氏が、父親からブルゴーニュ地方のジュヴレ・シャンベルタン村にある4haの畑を贈与されたことをきっかけとする。そこから研さんを積み、1979年にファーストヴィンテージを発売した。

以後、そのワインづくりが評価されるにつれ、畑の所有面積も大きくなっていき、現在では8haの畑を所有するまでとなった。グラン・クリュ(特級)に該当する畑は所有していないが、丘の頂上部に位置する「レ・カズティエ」がプルミエ・クリュ(1級)の認定を受けている。隣接する「クロ・サン・ジャック」がグラン・クリュであることから、レ・カズティエは実質グラン・クリュのクラスに該当するとされている。

ぶどうの力強さと濃厚さを存分に発揮したワイン

生産者のルクレール氏は、長髪のパーマヘアに革のアクセサリーを好むスタイルで、さながらロックスターのようでもある。これは彼の力強さやエネルギッシュさを表現したスタイルでもあり、それは独創的なワインラベルにも現れている。

もちろん、見た目だけでなく、ワインづくりにもそれらが遺憾なく発揮されている。ぶどうをどのドメーヌよりも遅い時期に収穫し、極限まで熟した状態で使用。3週間にわたって天然酵母で発酵(うち2週間は高温で発酵)させて、時間をかけてぶどうの成分を抽出する。

その後の樽熟成は、2年以上の歳月をかけることがほとんど。多くのワインが12カ月程度であることを考えると、かなり長い方だと言えるだろう。

さらに、抽出したぶどうの熟成では、新樽を積極的に使用する。特に、プルミエ・クリュのワインの熟成には、新樽しか使わないのもこだわりだ。瓶詰めも、当然のようにノンフィルター(無ろ過)・ノンコラージュ(無清澄)。これらの行程により、ぶどうの持つ力強さや濃厚さが存分に発揮されたワインが生み出される。

長期熟成だけではない、柔軟なワインづくり

このような特徴があるが故に、基本的にフィリップ・ルクレールのワインは、10年、20年と購入後に長期熟成させてから飲むのが真の楽しみ方とされてきた。飲み手には、ある種の忍耐力が試されるようなワインだったのである。

しかし、近年では購入後すぐに楽しめるワインが増加傾向にある。そのためフィリップ・ルクレールでも、そういったワインを販売できるように、長期熟成を必ずしも必要としない製法に順次進化している。

こだわりがありながらも自身の方法に固執せず、柔軟な姿勢でワインづくりに取り組むフィリップ・ルクレール。そんな姿も、熱狂的なファンを増やしている理由の1つだろう。

代表的なワインを紹介

フィリップ・ルクレールでは、いくつかのワインが生産されている。ここでは、その中でも代表的なワインを紹介していく。

ジュヴレ・シャンベルタン プルミエ・クリュ レ・カズティエ

樹齢70年の樹から採れたぶどうを用いてつくる。風味が複雑で、フルーツのコンポートにスミレの花や土の香りなどが感じられるのが特徴的。10~20年ほどの長期熟成後に楽しみたい1本。

ぶどう品種:ピノ・ノワール100%
味わい:赤・フルボディ
アルコール度数:13.5度
参考小売価格:1万1682円(税込)

ジュヴレ・シャンベルタン プルミエ・クリュ レ・シャンポネ

新樽100%の熟成から方向転換したことで、従来の味わい深さに滑らかさがプラスされている。チェリー系の果実の香りが力強く広がるのを感じられる。口当たりは柔らかいが、熟した果実味がしっかりと続く。

ぶどう品種:ピノ・ノワール100%
味わい:赤・フルボディ
アルコール度数:13.5度
参考小売価格:9889円(税込)

ブルゴーニュ ルージュ レ・ボン・バトン

基本的に、ブルゴーニュ・ルージュの名の付くブランドは、ブルゴーニュ地方全体で採れたピノ・ノワール種を用いることが多い。しかし、こちらは単一の畑で採れたピノ・ノワールのみを100%用いた、ぜいたくかつ珍しい赤ワインだ。

ブラックベリーとスパイスを濃厚に感じられる甘い香りが特徴。フィリップ・ルクレールらしさが存分に醸し出されているのを感じられる、滑らかな口当たりも魅力だ。また、余韻にはスモーキーさもあり、複雑な味わいが楽しめる。

ぶどう品種:ピノ・ノワール100%
味わい:赤・フルボディ
アルコール度数:13度
参考小売価格:4653円(税込)

【知っておきたいブルゴーニュのつくり手】
ドメーヌ・ニュダン|20以上のアペラシオンを有する老舗ドメーヌ

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関西大学卒 専業ライターを夢見て日々執筆する複業ライター。酒と肉と旅行と昼寝が好き。