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フランスワインの2大産地の1つに数えられるブルゴーニュにおいて、ネゴシアンとドメーヌという2つの顔を持つフェヴレ(Faiveley)。生産するワインの8割が自社畑で栽培したぶどうを使用したドメーヌものという、異色のネゴシアンだ。
約120haの自社畑はブルゴーニュ地方でも最大規模を誇り、多彩なワインのラインアップと生産量で、専門家だけでなく世界各国のワイン愛好家から高く評価されている。
フェヴレとは
フェヴレは、ブルゴーニュ地方コート・ド・ニュイ地区のニュイ・サン・ジョルジュを拠点とするネゴシアンだ。その一方で、自らが醸造するワインが全生産量の8割を占めており、ドメーヌとしても高く評価されている。
7世代にわたる歴史
創業は1825年。ピエール・フェヴレ氏により、ニュイ・サン・ジョルジュに設立された。ピエール氏は、生業としていた靴屋と並行してワイン事業に取り組んだが、1840年代後半になるとワイン事業に全ての情熱を注ぐようになったという。その後フェヴレは、ジョルジュ・フェヴレ氏が4代目当主になるまで、ネゴシアンとしてワイン事業を展開した。
4代目のジョルジュ氏は、将来的にネゴシアンとしてだけではなく、ドメーヌとして自社畑のぶどうでワインをつくることを目指し、ぶどう畑を借りて栽培する賃貸耕作を開始。以降、現在に至るまで、グラン・クリュ(特級畑)やプルミエ・クリュ(一級畑)といった優れた区画を取得していった。
7代目に引き継がれた現在では、ブルゴーニュ地方で最大規模となる約120haのぶどう畑を保有している。その広い自社畑のぶどうを使用してつくるドメーヌもののワインが、生産するワインの8割を占めている。これはネゴシアンとしては規格外の規模であり、現当主のエルワン・フェヴレ氏は「フェヴレはドメーヌだ」と公言している。
ブルゴーニュ利き酒騎士団を設立
4代目のジョルジュ氏は、フェヴレにドメーヌとしての道筋を付けただけでなく、ブルゴーニュ地方のワイン事業の普及に貢献した人物だ。それが、「コンフレリ・デ・シュヴァリエ・デュ・タストヴァン(Confrérie des Chevaliers du Tastevin、ブルゴーニュ利き酒騎士団)」という団体の設立だ。
ジョルジュ氏が当主を務めていた1930年代前半は、世界大恐慌の影響が色濃く残る時代だった。そのため、ワインの売れ行きは悪く、ワイン事業者は非常に多くの在庫を抱えていた。その上、1934年はぶどうが豊作だったため、抱えきれないほどの在庫が生まれてしまったのだ。
そこでジョルジュ氏は、友人のカミーユ・ロディエ氏とともに「誰も我々のワインを欲しがらないなら、いっそ友達を呼んで一緒に飲んでしまおう」と、コンフレリ・デ・シュヴァリエ・デュ・タストヴァンを創設した。そして集会を開いては、少しずつブルゴーニュ地方のワインや文化などの普及に取り組んだという。
このコンフレリ・デ・シュヴァリエ・デュ・タストヴァンは、数あるワイン普及団体の中でも世界的に有名で格式高く、現在でも憧れのワイン・ソサエティーとして名をとどろかせている。
フェヴレのぶどう畑とワインづくり
フェヴレは、ブルゴーニュの名だたる畑を所有するだけでなく、さまざまな改革にも取り組んでいる。
プルミエ・クリュ、グラン・クリュを所有
フェヴレが所有する120haの畑は、ブルゴーニュ地方のコート・ド・ニュイ地区、コート・ド・ボーヌ地区、そしてコート・シャロネーズ地区にある。
中でも、コート・シャロネーズ地区には120haのうちの70haほどがあり、フェヴレはコート・シャロネーズにおいて存在感のある生産者となっている。村名アペラシオン(Appellation d’Origine Controlee:AOC)のメルキュレ、ジヴリー、モンタニーなどに畑を所有しているが、5代目当主のギィ・フェヴレ氏が最初の畑を購入したメルキュレには47haもの畑を保有。メルキュレ・プルミエ・クリュ・クロ・デ・ミグラン(6.31ha)や、メルキュレ・プルミエ・クリュ・クロ・デュ・ロワ(2.54ha)など、プルミエ・クリュも多く所有する。さらに、分割所有が一般的なブルゴーニュにおいて、フェヴレは単独所有の畑(モノポール)も多数持っている。
その他に、“世界で最も偉大な赤ワインの産地”と評される、コート・ド・ニュイ地区には、赤ワインのアペラシオンであるシャンベルタン・クロ・ド・ベーズやマジ・シャンベルタン、エシェゾーといったグラン・クリュをおよそ7ha所有。ニュイ・サン・ジョルジュのレ・サン・ジョルジュやジュヴレ・シャンベルタンのクロ・デ・ジサールなど、プルミエ・クリュも多く保有している。
また、世界的評価が高い赤ワインと白ワインを産するコート・ド・ボーヌ地区では、白ワインのグラン・クリュであるバタール・モンラッシェ、ビアンヴニュ・バタール・モンラッシェを保有。赤ワインと白ワインそれぞれのアペラシオンに、ほぼ同じ広さの畑を所有している。
7代目当主の改革:ワインスタイルの変化と新たなぶどう畑の獲得
2005年に24歳の若さで当主となったエルワン氏は、グラン・クリュやプルミエ・クリュの名だたる畑を購入したり、ワインのスタイルを変えたりするなど、注目を集める生産者の1人となっている。
同氏によって行われた改革は、赤ワインのスタイルを変えること、白ワインにも注力すること、新たなぶどう畑を獲得することだった。それまでフェヴレは、力強さを前面に出した、若いうちは飲みづらい長期熟成型の赤ワインをつくっていた。彼は、それをもう少しソフトなワインにしたいと考え、以前よりも早く飲み頃を迎え、かつ長期熟成も可能なワインへとスタイルを変えた。
また、これまでは本拠地ニュイ・サン・ジョルジュがある、コート・ド・ニュイの赤ワインを中心に生産してきたが、ラインアップを広げるために、コート・ド・ボーヌの白ワインに注目。白ワインのグラン・クリュであるバタール・モンラッシェやビアンヴニュ・バタール・モンラッシェを取得するなど、白ワインの生産に力を入れた。その結果、フェヴレのワインの幅が格段に広がることとなる。
新たなぶどう畑の獲得にも取り組み、ドメーヌ・デュポン・ティスランド(Domaine Dupont Tisserndot)を買収して、マジ・シャンベルタンやシャルム・シャンベルタンなどのグラン・クリュを含む約20haの畑を手に入れた。さらに、なかなか取得できないとされる、シャンボール・ミュジニーのグラン・クリュ、ミュジニーも10ha獲得している。
エルワン氏のこうした改革が高く評価され、現在、フェヴレは注目を浴びるワイン生産者となっている。
おすすめワイン7選
長い伝統を誇りながら、常に進化を続けるフェヴレ。数多くあるワインの中から、おすすめを紹介する。
ブルゴーニュ・ピノ・ノワール
柔らかな味わいで、ピノ・ノワール初心者でも楽しめる。ラズベリーなどの赤い果実の香りを持つ、調和の取れたワイン。
ぶどう品種:ピノ・ノワール100%
味わい:赤・ミディアムボディ・辛口
参考小売価格:4400円(税込)
ブルゴーニュ・シャルドネ
爽やかさの後に、かんきつ類や白桃の香りを感じる。酸味と果実味とともに、ミネラルを感じる味わい。優雅な余韻が特徴的だ。
ぶどう品種:シャルドネ100%
味わい:白・辛口
参考小売価格:4400円(税込)
シャンベルタン・クロ・ド・ベーズ・グラン・クリュ
グラン・クリュのぶどうを使用したワイン。カシスやダークチェリーなどの黒い果実の豊かな香りの中に、スパイス香も感じる複雑なアロマ。凝縮した濃厚な果実味の中に、タンニンを感じる。
ぶどう品種:ピノ・ノワール100%
味わい:赤・ミディアムボディ・辛口
参考小売価格:5万7200円(税込)
コルトン・クロ・デ・コルトン・フェヴレ・グラン・クリュ(モノポール)
フィヴレが単独所有する、グラン・クリュで栽培したぶどうを使用している。ラズベリーやカシスの香りを特徴とし、ミネラル、タンニンが感じられ、骨格がしっかりとしたワイン。
ぶどう品種:ピノ・ノワール100%
味わい:赤・ミディアムボディ・辛口
参考小売価格:2万6400円(税込)
ジュヴレ・シャンベルタン・プルミエ・クリュ・クロ・デジサール(モノポール)
単独所有するプルミエ・クリュのぶどうを使用している。チェリーの香りと濃厚な果実味を持つ。タンニンと果実味がうまく調和している。
ぶどう品種:ピノ・ノワール100%
味わい:赤・フルボディ・辛口
参考小売価格:1万7600円(税込)
コルトン・シャルルマーニュ・グラン・クリュ
レモンやグレープフルーツのかんきつ系の香りの中に、樽由来のバニラやナッツの香りを感じる。酸とミネラルをしっかりと感じる味わい。余韻にもミネラルを長く感じる。
ぶどう品種:シャルドネ100%
味わい:白・辛口
参考小売価格:4万1800円(税込)
バタール・モンラッシェ・グラン・クリュ
7代目当主のエルワン氏が白ワインのラインアップ拡大を図り、2008年に入手したグラン・クリュのぶどうを使用。白桃やグレープフルーツの濃厚な果実香と果実味を持つ。ワイン評論誌『ワイン・アドヴォケイト(Wine Advocate)』やワイン評論家ジャスパー・モリス氏らから非常に高い評価を得ていて、入手が困難になってきている。
ぶどう品種:シャルドネ100%
味わい:白・辛口
参考小売価格:5万9400円(税込)
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