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サントリーは2023年9月5日、TKPガーデンシティ浜松町(東京都港区)で、「『SUNTORY FROM FARM』新ヴィンテージ つくり手が語る試飲会」を開催した。
同試飲会では、同社 ワインカンパニー ワイナリーワイン事業部長の新村聡氏、同事業部 シニアスペシャリストの渡辺直樹氏、サントリー登美の丘ワイナリー栽培技師長 大山弘平氏が登壇し、ぶどう品種「プティ・ヴェルド」や産地「津軽」を通じて、世界に誇るワインづくりに挑戦するつくり手の取り組みが語られた。
第2回となる本記事では、プティ・ヴェルドの特徴やプティ・ヴェルドの魅力を生かすための同社の取り組みについて紹介する。
赤ワイン用のぶどう品種「プティ・ヴェルド」
プティ・ヴェルドは、フランス南西部原産の赤ワイン用ぶどうだ。ボルドーではブレンド用の補助品種として栽培されている。プティ・ヴェルドが持つ豊かなタンニンや酸は、味わいの荒々しさにつながることがあり、フランスではブレンド割合が少量にとどまるケースが一般的だという。
そんなプティ・ヴェルドだが、雨や高温など現在の日本の気候に対しては耐性が強い。同社は、優良系統を選抜し、種の完熟期を見極めるなど、30年にわたってプティ・ヴェルドを研究し、凝縮感や力強さ、ボリューム感を高めることに成功した。
登美の丘におけるプティ・ヴェルドの歴史
ワイナリーのある山梨県甲斐市の登美の丘では、1990年代にプティ・ヴェルドの試験栽培が始まった。当時の収穫量は約2tで、その後、山梨県が選抜する欧州系優良系統、品種の1つとなったことで、2010年代前半には生産規模が約10tに拡大した。現在の収穫量は約20tだが、生産量が増えただけでなく、プティ・ヴェルドの良さを最大限生かす、品質向上の段階にきている。
最適期の見極めがカギ
プティ・ヴェルドは、糖度と酸だけに着目して収穫すると、味わいに荒さが出てしまう。ワインに柔らかさをもたらすには、フェノール化合物の成熟が重要で、その最適期まで収穫を待てるかがカギとなるという。
大山氏によると、ベテランから新人まで、栽培や醸造に関わるつくり手が同じ畑で同じぶどうの実を食べて意見を出し合い、最適な収穫タイミングを判定するそうだ。
設備導入、プロセス改善で品質向上
さらに同社は、品質向上のために新たな設備を導入し、醸造プロセスを改善した。まず、醗酵タンクまでぶどうを丁寧に搬送し、果皮や種から渋味が出過ぎないようにしている。また、垂直型圧搾機で上から優しく圧搾し、品質の高い果汁が取れるようにした。
その結果、従来の仕込みと比べて、果実味が強まり、まろやかさや甘みが増して、フィニッシュのタンニンがより心地良いものになったという。
金賞受賞「SUNTORY FROM FARM 登美の丘 プティ・ヴェルド 2020」
プティ・ヴェルドと長年向き合ってきた成果として、同社が初めてプティ・ヴェルド単体でリリースしたのが「登美の丘 プティ・ヴェルド 2020」だ。世界最大のワインコンテスト「デキャンター・ワールド・ワイン・アワード(Decanter World Wine Awards) 2023」で銀賞を受賞。登美の丘ワイナリーとオンラインショップで限定販売している。
次回の記事では、ワイン産地「津軽」のテロワールや瓶内二次発酵のスパークリングワイン「SUNTORY FROM FARM 津軽 シャルドネ&ピノ・ノワール スパークリング2020 グリーンエティケット」について紹介する。
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