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カリフォルニアワイン協会(CWI)は、2024年2月20日に東京・丸の内のパレスホテル東京、同月22日に大阪市北区のウェスティンホテル大阪で、「カリフォルニアワインAliveテイスティング 2024」を開催した。本レポートでは、テーマ産地「パソ・ロブレス」に注目し、来日した10ワイナリーのうち5つのワイナリーをピックアップして、担当者への取材内容と共に紹介していく。
今回は、パソ・ロブレスに関するセミナー「パソ・ロブレス、思ったよりもクールかも!」と個別取材で語られた、ジャスティン・ヴィンヤード&ワイナリー(Justin Vineyards & Winery)について紹介する。
ジャスティン・ヴィンヤード&ワイナリーとは
ジャスティン・ヴィンヤード&ワイナリーについて、同ワイナリーのマスターソムリエであるジョセフ・スペルマン氏は、次のように語った。
パソ・ロブレスの多様なテロワールがつくるワイン
ジャスティン・ヴィンヤード&ワイナリーは、1981年にジャスティン・ボールドウィン氏が、ボルドーの主要品種を植えてスタートしました。ワイナリーがあるのはパソ・ロブレスの西にあるアデレイダ地区です。標高差があり、土壌の違いも明確なエリアです。また、東のエル・ポマール地区にも土地を持っています。他にもパートナー農家がおり、パソ・ロブレス内の8つのAVAからぶどうを供給してもらっています。
ボールドウィン氏が、早い段階から考えていたのが自社畑プログラムのアイデアです。土地の約70%にカベルネ・ソーヴィニヨンを植え、残りの25~30%にカベルネ・フランとメルロー、そして少しのシャルドネを植えました。シャルドネは、この地域に合うぶどうではなかったので、後に植え替えることに。さらにメルローは、多くを他の畑から調達しました。
自社畑のみのぶどうを使ってのワインではなくなりましたが、その代わりに多くの農家に協力してもらい、アデレイダを中心にエル・ポマールでも、素晴らしく凝縮感があり、我々のワインである「アイソセレス」や「ジャスティフィケーション」のブレンドにふさわしい果実を手に入れています。
私たちは、2015年に『ワイン・エンスージアスト(Wine Enthusiast)』誌のワイナリー・オブ・ザ・イヤーを受賞したことを、大変誇りに思っています。
パソ・ロブレスの魅力
パソ・ロブレスは、土壌がカリフォルニアの他の地域とは大きく異なっています。北カリフォルニアの土壌のほとんどは、火山性または河床の土壌ですが、私たちの土壌は堆積物です。古代に海底だった土地なので、石灰質の土壌、石灰岩、砂、砕石、古い化石がたくさん含まれています。土壌の違いにより、酸味とタンニンの違いが生まれています。ナパの一部のワインに見られる力強いタンニンはありませんが、果実味はもう少し寛大です。
そこがパソ・ロブレスの個性であり、さまざまな品種の可能性を生んでいます。パソ・ロブレスでは、約60の品種が栽培されており、ローヌ系品種を使って、ローヌでは見られないようなクリエイティブなブレンドに挑戦する人もいます。パソ・ロブレスでは、その挑戦が他の地域よりも理にかなっているのです。
同様に、ボルドー品種とローヌ品種をブレンドすることもできます。私たちや他のワイナリーがつくっているような、カベルネ・ソーヴィニヨンとシラーを使ったワインですね。クラシックな産地がワインを定義するわけではないので、ボルドーブレンドにこだわってつくる必要はありません。
スペインの品種だって使えます。ヨーロッパの伝統的な地域とは異なり、少し違ったやり方でワインをつくることができるのがパソ・ロブレスです。
また、ぶどう畑にも、ワインづくりのプロセスとブレンドにも実験的な余地があり、それがキーとなっていると感じています。ぶどう畑を適切に管理し、果実を健康に保ち、熟し過ぎないようにすること。パソ・ロブレスは、特にジンファンデルとプティ・シラーが熟してしまいがちという問題を抱えていましたが、今はぶどうの樹を管理し、程よく成熟した果実を糖分をしっかり使って発酵させるので、甘い風味がなくなります。
そして、最後につくりたいスタイルに合わせてブレンドすることで、素晴らしいテクスチャーを加えているのです。私にとって本当に興味深いことに、ある特定のスタイルで有名になったワイナリーでも、新しい挑戦に取り組んでいます。
私たちは常に1つのラベルに1つのアイデンティティを持つことが重要だと感じています。その上で、さまざまな品種、さまざまなブレンドに挑戦することが重要です。型破りなブレンドにも、古典的なブレンドにも挑戦できるところが、パソ・ロブレスを特別な産地にしています。
ジャスティン・ヴィンヤード&ワイナリーのワイン
続いて、スペルマン氏の解説をもとに、ジャスティン・ヴィンヤード&ワイナリーのワインを紹介する。
アイソセレス
産地:パソ・ロブレス
品種:カベルネ・ソーヴィニヨン88%、カベルネ・フラン6%、メルロー6%
参考小売価格:2万2000円(税込)
TYC WINESで見る
1986年から手掛けている「アイソセレス」は、ボールドウィン氏が最初につくりたかったワインであり、ワイナリーの基礎となるフラッグシップワインとのこと。
厚い皮を持つカベルネ・ソーヴィニヨンは、ワインの色に深みを与えるが、果実が小さいため、果汁は少ない。最もリッチでフルボディなワインとなる可能性を持った果実を手作業で選別して使用することで、タンニンやアルコール、糖分の高い、よりダークでより力強いブレンドをつくり上げることができる。
また、カベルネ・フランやメルローなどを使用して、テクスチャーや味わいの層をプラスしている。アイソセレスのカベルネ・フランは、割合は5~15%と少ないが、若干の酸味と赤い果実味を与えてくれる。そしてメルローは、よりオープンでタンニンが控えめな、柔らかさのあるスタイルの果実味を与える重要な品種だ。こうした理由から、常にこの3種類を使ってきた。
カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、メルローのクラシックなボルドー品種を、フレンチオークの新樽で21カ月間熟成させたフルボディのリッチなワイン。テクスチャーと力強さのあるワインであり、若いときもおいしいが、美しく熟成する。
非常に注目度が高く、即完売してしまうため、気になる人は見つけたらすぐに手にしたほうが良さそうだ。
ジャスティフィケーション
産地:パソ・ロブレス
品種:カベルネ・フラン60%、メルロー40%
参考小売価格:オープン価格
※未輸入ワイン
カベルネ・フランとメルローをブレンド。カベルネ・フラン由来のタイトなタンニンに、メルローのソフトさとフルーツ感をブレンドし、新樽のフレンチオークが溶け込んだ、バランスの良い、食事に合うワインになっている。
カベルネ・フランは、皮が少し薄く酸味がかなり高い果実のため、慎重に選果している。ジャスティン・ヴィンヤード&ワイナリーでは、カベルネ・ソーヴィニヨンを使わなくても、十分なテクスチャーを与える果実味を持てるようにしたいと考えており、ブレンドにはメルローを40~45%まで使用。「アイソセレス」とは兄弟のように似ているものの、違う個性を感じられるワインを目指した。
併せて知りたい! ジャスティン・ヴィンヤード&ワイナリーのワイン
●ソーヴィニヨン・ブラン2022
産地:パソ・ロブレス
品種:ソーヴィニヨン・ブラン100%
参考小売価格:4345円(税込)
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●カベルネ・ソーヴィニヨン2020
産地:パソ・ロブレス
品種:カベルネ・ソーヴィニヨン100%
参考小売価格:9000円(税別)
「私たちがフォーカスしているのは、食事に合うワイン」と語った、ジョセフ氏。ワイナリーがいかに食事に合うワインを意識しているかの例として、敷地内のレストランについて話をしてくれた。ミシュラン1つ星の評価を得ているこのレストランでは、ジャスティン・ヴィンヤード&ワイナリーのワイン以外にも世界中のワインを取り扱い、料理との相性を楽しんでもらっているそうだ。
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