コラム

ラヴァンチュール・ワイナリー:理想のブレンドを求めてボルドーを飛び出し、パソ・ロブレスへ ~「カリフォルニアワインAliveテイスティング 2024」レポート⑤

   

カリフォルニアワイン協会(CWI)は、2024年2月20日に東京・丸の内のパレスホテル東京、同月22日に大阪市北区のウェスティンホテル大阪で、「カリフォルニアワインAliveテイスティング 2024」を開催した。本レポートでは、テーマ産地「パソ・ロブレス」に注目し、来日した10ワイナリーのうち5つのワイナリーをピックアップして、担当者への取材内容と共に紹介していく。

今回は、パソ・ロブレスに関するセミナー「パソ・ロブレス、思ったよりもクールかも!」と個別取材で語られた、ラヴァンチュール・ワイナリー(L’Aventure Winery)について紹介する。

ラヴァンチュール・ワイナリーとは

ラヴァンチュール・ワイナリーについて、同ワイナリーで輸出マネジャーとして日本を担当しているシモーネ・ベラルデッリ氏が次のように語ってくれた。

日本を担当している輸出マネジャーのシモーネ・ベラルデッリ氏

“冒険”を意味するラヴァンチュール

創業者のステファン・アセオ氏は、フランスのボルドー右岸にあるサンテミリオン出身です。ワインをつくる会社の息子として生まれました。彼自身もワインづくりを学び、ボルドーのいくつかのワイナリーを所有していました。所有するだけではなく、ワインメーカーとしても働いたことで、いろいろな品種の特色を知ることに。ボルドー地域でよく使用されるカベルネ・ソーヴィニヨンやカベルネ・フラン、メルローだけではなく、他の品種についても理解を深めたのです。

アセオ氏は、シラーとカベルネ・ソーヴィニヨンは相性が良いと思ったのですが、フランスのワイン法では生産地や品種などワインづくりの条件が決められています。そのため、カベルネ・ソーヴィニヨンとシラーをブレンドすると、ボルドーのワインとは名乗れなくなります。

しかし、このブレンドでワインをつくりたいと考えた彼は、所有しているボルドーのワイナリーを全て手放し、自分の冒険、つまりラヴァンチュールを始めました。

理想のワインをつくるのに適切な場所を探しに、南アフリカや南アメリカにも行きました。1997年頃にやっと見つけたのが、自由にワインがつくれるパソ・ロブレスです。

他のワインメーカーがお話ししたかもしれませんが、パソ・ロブレスでは、好きなことができます。さまざまな品種が使われていますし、スタイルもいろいろあります。ボルドーブレンドもローヌブレンドもあり、イタリアの品種も使用されていて、自分の魂を表現できるところです。

アセオ氏は、ワインづくりの自由さだけではなく地理的な特徴も含めて、パソ・ロブレスの西に位置するウィロー・クリーク地区を選びました。

土地のポテンシャルを証明するワイン

私たちは、29haほどの小さな生産者です。そのうちの26haにぶどうの樹を植えています。1998年から2004年にかけて、シラー、カベルネ・ソーヴィニヨン、プティ・ヴェルド、そしてムールヴェードル、グルナッシュ、グラシアーノ、グルナッシュ・ブラン、ルーサンヌを植樹しました。

創業当時はぶどうを購入していましたが、2008年からは自社畑のぶどうのみを使用して、ワインをつくるようになりました。26haの土地が持つポテンシャルを証明するためにつくったのが「エステート・キュヴェ」です。

この地は中生代(2億5000万~6550万年前の時代)の古い土壌で、石灰岩に貝類の化石が多く含まれています。この土壌が酸味やミネラル感を生み出すのです。

また、石灰岩はスポンジのような石で、水を吸収して保水し、ゆっくりゆっくりとリリースします。よって灌漑(かんがい)は必要なく、ドライファーミングできるのも特徴です。

日本への思い

日本に対してはありがたい気持ちがあります。私がアセオ氏と会った時に、「セレブリティワインメーカーですよね」と伝えたのですが、彼はタイトルを気にしていません。彼が一番気にして、毎日考えているのはワインについてです。

彼は日本に何回も来ていて、自身のワインが日本でとても愛されていることをよく知っています。彼はそんなに旅行をしないのですが、日本に来ることが大好きです。「日本のお客様はいつも優しいし、私のワインの品質を認めてくれているので、日本だったら行きたい」と言っていますよ。

ラヴァンチュール・ワイナリーのワイン

続いて、ベラルデッリ氏の解説を基に、ラヴァンチュール・ワイナリーのワインを紹介する。

エステート・キュヴェ 2017

産地:パソ・ロブレス
品種:シラー49%、カベルネ・ソーヴィニヨン30%、プティ・ヴェルド21%
参考小売価格:2万4750円(税込)
ピーロート・ジャパンで見る

ラヴァンチュール・ワイナリーのフラッグシップワイン。前述したように、自社畑のポテンシャルを表現している。ローヌ品種のシラーとボルドー品種のカベルネ・ソーヴィニヨン、プティ・ヴェルドの3種類をブレンドしている。

「アセオ氏が1998年にカリフォルニアに移住した時には、世界でも珍しい、ユニークな組み合わせだったんです。彼のおかげで、今では他の生産者もこういったブレンドをするようになりました」と、ベラルデッリ氏は説明している。

オプティマス 2017

産地:パソ・ロブレス
品種:シラー49%、 カベルネ・ソーヴィニヨン41%、プティ・ヴェルド10%
参考小売価格:1万4850円(税込)
ピーロート・ジャパンで見る

「エステート・キュヴェ」に入らないワインを使用した、いわゆるセカンドワインだが、「アセオ氏はセカンドワインという表現が好きではない」とのこと。このワインがセカンドワインだと思われないような品質や味わいを持つことから、ラテン語で「最も良い」を意味するオプティマスと命名したのだという。

終始、日本語で対応してくださったベラルデッリ氏。その言葉からは、ワインの品質への確かな自信と、アセオ氏への敬意が感じられた。

なおラヴァンチュール・ワイナリーでは、2017ヴィンテージまで全てフレンチオークの新樽で熟成していたが、それ以降は実験として、2回目の樽やアンフォラも試している。「将来は、そういったものもブレンドに入るかもしれません」とのこと。カルトワインメーカーとして、確かな地位を築いていながらも、今後も進化を目指していくそうだ。

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④タブラス・クリーク・ヴィンヤード|伝統を受け継いだ2代目GMが語る、パソ・ロブレスの魅力

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About the author /  鵜沢 シズカ
鵜沢 シズカ

J.S.A.ワインエキスパート。米フロリダ州で日本酒の販売に携わっている間に、浮気心で手を出したワインに魅了される。英語や販売・営業経験を活かしながら、ワインの魅力を伝えられたら幸せ