コラム

“ワインに専念”してきたチリの最大手ワイナリー、コンチャ・イ・トロを知る6つのポイント ~「メルシャン2024年ワイン事業戦略説明会」レポート③

   

メルシャンは2024年3月19日、「メルシャン2024年ワイン事業戦略説明会」を実施した。今回の説明会には、メルシャンおよびシャトー・メルシャンの関係者に加え、チリの最大手ワイナリー、ヴィーニャ・コンチャ・イ・トロ(コンチャ・イ・トロ)の副社長イサベル・ギリサスティ氏も登壇。その理由は、両社がタッグを組んだ「パシフィック・リンク・プロジェクト」だ。

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説明会では、チリNo.1ワイナリー(INTELVID-Chile 2022)として世界で愛されている、コンチャ・イ・トロについて、ギリサスティ氏から語られた。その内容を紹介する。

コンチャ・イ・トロを知る6つのポイント

ヴィーニャ・コンチャ・イ・トロの副社長イサベル・ギリサスティ氏

140年以上の歴史で“ワインに専念”してきた生産者

チリはもちろん、ラテンアメリカ最大のワイン生産者であるコンチャ・イ・トロは、1883年に創業。140年以上の歴史の中で、ワインをつくることだけをビジネスとし、「ワインに専念してきた」とギリサスティ氏は語る。

140以上の国に輸出

チリの人口はそれほど多くはないため、コンチャ・イ・トロでは生産するワインのうち80~85%を輸出している。海外への輸出は1931年から開始しており、長い歴史の中で幅広い流通ネットワークが培われた。現在は世界140カ国以上にワインを輸出し、13カ国に営業・流通の拠点を構え、世界中のビジネスオフィスに3000人の従業員を抱えている。

そうしたネットワークを生かし、今回のパシフィック・リンク・プロジェクトでは、国によってはコンチャ・イ・トロがシャトー・メルシャンのディストリビューターになっていく。

世界最大級のワイナリーの1つ

チリに本拠地を構えるコンチャ・イ・トロだが、全体で1万2000haのぶどう畑を所有している。東京都の中心部を走る山手線の内側の面積が6300haと言われるが、そのおよそ2倍の広さだ。チリに加え、隣国のアルゼンチンに1995年から、アメリカ・カリフォルニア州のメンドシーノに2010年からぶどう畑を所有し、ワインづくりに取り組んでいる。

複数の地域でぶどうづくりを行うことで、自然災害による影響を最小限に抑えることができているそうだ。

世界的に認められた品質

2022年には、世界の主要なワインメディアで90点以上の評価を160回獲得。この事実についてギリサスティ氏は、「私たちは、熱い情熱を持ってワインをつくっている。それぞれのテロワールの卓越性を信じて、そこから素晴らしいワインがつくられるということをモットーにしている」とし、「献身的な栽培チームと有能な才能を持った醸造チームなくしては、コンチャ・イ・トロは存在し得ない」と語った。

サステナビリティのリーディングカンパニー

コンチャ・イ・トロでは、2021年に環境や社会に配慮した公益性の高い企業に与えられる、国際的な民間認証制度の「Bコーポレーション(B Corporation)」というサステナブル認証を取得している。2014年には、サステナブルを推進するためのイノベーションセンターを設立し、どのように持続可能なワインづくりができるかを探っている。

ぶどう栽培では、水資源を保護するという観点から、1本1本の樹がどのぐらいの水を必要としているのかが分かるシステムを構築。効率的なドリップイリゲーション(点滴灌漑<かんがい>)を100%行っている。

また、再生エネルギーを100%使用するほか、生物多様性を守るために4700haの原生林を保護。こうした取り組みによって排出するCO2や温室効果ガスのカーボンニュートラルを目指しながら、ぶどう畑を取り囲む生態系を保護している。

メルシャンとの長いパートナーシップ

説明会では、メルシャンとコンチャ・イ・トロのパートナーシップについても説明があった。

メルシャンがコンチャ・イ・トロと取引を開始したのは、1978年のことだ。両社ともにワイン産業全体の成長のために、ワインのプレミアム化を図るということを中心に、2010年頃からパートナーシップを組んできたという。またメルシャンは、コンチャ・イ・トロのブランド「カッシェロ・デル・ディアブロ」を2020年から4年連続で成長させてきた実績を持つ。

ギリサスティ氏は、「メルシャンも長い歴史を持つワイン生産者であり、ワインづくりにおいて、非常に成功している会社だ。そうした共通点が、パートナーシップの要になっていると思う」と語っていた。

「パシフィック・リンク・プロジェクト」への期待

両社で新しくスタートさせたパシフィック・リンク・プロジェクトについては、「これまで私たちが扱ったことのない甲州という品種でワインをつくれるのは、このコラボレーションの醍醐味」とした上で、「チリワインの認識を日本市場で高めていくこと、特にチリのプレミアムワインのイメージをしっかりと発信していくことを期待している」とコメントした。

最後にギリサスティ氏は、「私たちが協働することで、成功が見えていると感じる」と自信をのぞかせていた。

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About the author /  鵜沢 シズカ
鵜沢 シズカ

J.S.A.ワインエキスパート。米フロリダ州で日本酒の販売に携わっている間に、浮気心で手を出したワインに魅了される。英語や販売・営業経験を活かしながら、ワインの魅力を伝えられたら幸せ