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カリフォルニアワイン協会(CWI)は、2024年2月20日に東京・丸の内のパレスホテル東京、同月22日に大阪市北区のウェスティンホテル大阪で、「カリフォルニアワインAliveテイスティング 2024」を開催した。本レポートでは、テーマ産地「パソ・ロブレス」に注目し、来日した10ワイナリーのうち5つのワイナリーをピックアップして、担当者への取材内容と共に紹介していく。
今回は、パソ・ロブレスに関するセミナー「パソ・ロブレス、思ったよりもクールかも!」と個別取材で語られた、ホープ・ファミリー・ワインズ(Hope Family Wines)について紹介する。
ホープ・ファミリー・ワインズとは
価値を加えたワインづくりを
ホープ・ファミリー・ワインズは、1978年にチャック・ホープがぶどう栽培農家として、その歴史をスタートさせました。最初の醸造家となったのは、息子のオースティン・ホープです。小さい頃から畑を手伝っていた彼は、21歳の時に「こんなにも多くの時間をぶどう畑で過ごしているのだから、ぶどうを売るのではなくワインをつくりたい」と父に話し、彼の代からワイナリーになっています。
40ac(エーカー)の自社畑があり、加えて55軒の栽培農家と関係を築いています。栽培農家を束ねて、サステナブル農法を推し進めているのが、妻のステイシーです。
ワイナリーでは、社会的責任にもしっかりと取り組んでいます。例えば、節水も大切な工程です。また、野生動物を保護する活動も行っています。環境再生型農法も含めて、価値を加えたワインづくりを行っているのです。
40年かけて完成した“オースティン・ホープ”
ホープ・ファミリー・ワインズでは、パソ・ロブレスの11のサブリージョン(小地区)のぶどうを使用しています。
パソ・ロブレスのテロワールには、土壌や気候、環境など、ぶどう栽培に必要な要素が揃っています。それが、11の地区のぶどうを使用する理由です。
そうして40年かけてたどり着いたのが、「オースティン・ホープ カベルネ・ソーヴィニヨン」です。自身の名前を付けたのは、誇りあるパソ・ロブレスで、ベストなカベルネ・ソーヴィニヨンを集結させたという思いがあるからです。
2015年にリリースしたファーストヴィンテージは、『ワイン・エンスージアスト(Wine Enthusiast)』で97ポイント、他のヴィンテージも世界で10番目や7番目に素晴らしいワインとしてピックアップされたことがあります。
11の小地区のうち9つの地区(パソ・ロブレス・エストレッラ、クレストン、パソ・ロブレス・ジェネセオ、パソ・ロブレス・ハイランズ、サン・フアン・クリーク、エル・ポマール、サン・ミゲル、テンプルトン・ギャップ、アデレイダ)からテロワールの違うぶどうをブレンドしてつくっており、パソ・ロブレスの多様性が詰まったワインです。
素晴らしい料理のように、全ての要素が溶け込んでいながら一体感があります。どんな食事にも合わせられるワインです。
アメリカン・ワイナリー・オブ・ザ・イヤーに
2022年には、『ワイン・エンスージアスト』誌のアメリカン・ワイナリー・オブ・ザ・イヤーに輝きました。表彰式では、オースティンやその父親、とても長く関わってくれているテイスティングルームや栽培、醸造のチームも一緒にステージに上がりましたた。とても達成感のある瞬間でした。
契約農家も、長くワイナリーに関わってくれています。まさに「みんなでつくっている」ワインなのです。
ホープ・ファミリー・ワインズのワイン
ここからは、試飲会で展示されていたワインを、ジャルバート氏の解説を中心に紹介していく。
リバティ・スクールシリーズ
日常的に楽しめることを意識したワイン。家族経営のワインメーカーが3世代かけてアメリカン・ドリームを実現した後にも、こだわりを持ってつくり続けている、ホープ・ファミリー・ワインズを象徴するシリーズだ。
「リバティ・スクール シャルドネ 2021」
シャブリスタイルで生き生きとした酸が楽しめるワイン。
産地:パソ・ロブレス
品種:シャルドネ100%
参考小売価格:3500円(税別)
「リバティ・スクール カベルネ・ソーヴィニヨン 2021」
40年以上愛されているワイン。強すぎない抽出で、ソフトかつスムーズな味わいだが、存在感のあるタンニンが楽しめる。
産地:パソ・ロブレス
品種:カベルネ・ソーヴィニヨン100%
参考小売価格:3500円(税別)
トラブルメーカー レッド・ブレンド B16 NV
新しい世代のワイン消費者に向けてつくられたユニークなワイン。パソ・ロブレスを代表するローヌ系品種のグルナッシュ、シラー、ムールヴェドルに、アメリカを代表する品種であり、パソ・ロブレスでも古くから栽培されているジンファンデルを加えている。少しジャミーさがあり、BBQにもピッタリなワインだ。
産地:パソ・ロブレス
品種:シラー58%、プティ・シラー18%、ムールヴェードル11%、グルナッシュ9%、ジンファンデル4%
参考小売価格:4000円(税別)
クエスト 2021
パソ・ロブレスの可能性と意気込みを表現したワイン。ボルドー系品種とアメリカン・オーク樽を使用している。フレッシュでミントのようなニュアンスがあり、冷たいアペリティフなどと相性がよい。
産地:パソ・ロブレス
品種:カベルネ・ソーヴィニヨン75%、カベルネ・フラン25%
参考小売価格:6000円(税別)
トレアナシリーズ
「トレアナ」シリーズは、暖かいカリフォルニアの太陽と冷たい海、そしてパソ・ロブレスに広がる多様な土壌の集合体とも呼べるワインだ。
「トレアナ ブラン 2021」
ローヌ系品種を使用したブレンドワインで、コンドリュー(ローヌの白ワインとしては最も由緒のある村名AOC)を想起させる味わい。食中酒として、またパレット・クレンザー(口の中をさっぱりさせる役割)として、味の濃い料理や油っぽい料理に合わせてもよい。
産地:パソ・ロブレス
品種:マルサンヌ45%、ヴィオニエ45%、ルーサンヌ10%
参考小売価格:6000円(税別)
「トレアナ レッド 2021」
カベルネ・ソーヴィニヨンとシラーという、パソ・ロブレスらしいブレンドのワイン。シーズニング(スパイス)した肉のグリルとの相性は最高だ。
産地:パソ・ロブレス
品種:カベルネ・ソーヴィニヨン75%、シラー25%
参考小売価格:7800円(税別)
ぶどう栽培農家からアメリカン・ワイナリー・オブ・ザ・イヤーを受賞するワイナリーへと、アメリカン・ドリームを実現させた、ホープ・ファミリー・ヴィンヤード。カベルネ・ソーヴィニヨン単体で成功したワイン、ローヌブレンドやジンファンデルを使用したワインなど、幅広いワインづくりに挑戦している姿は、まさにパソ・ロブレスを体現したワイナリーだと感じられた。また、情熱的にワイナリーについて語るジャルバート氏は「私は2008年から働いていますが、家族のような気持ちでいます」としており、人を大切にする姿勢が伝わってくるワイナリーだと感じられた。
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①カリフォルニアの注目産地パソ・ロブレス。ルールにとらわれない自由さと多様性
②ジャスティン・ヴィンヤード&ワイナリー|ワイナリー所属のマスターソムリエが語る魅力とは
③ダオ・ファミリー・エステイト|副社長が語る、コミュニティとして夢を叶えたワイナリーとは
④タブラス・クリーク・ヴィンヤード|伝統を受け継いだ2代目GMが語る、パソ・ロブレスの魅力
⑤ラヴァンチュール・ワイナリー:理想のブレンドを求めてボルドーを飛び出し、パソ・ロブレスへ