コラム

瀧田昌孝ソムリエが解説! ドイツ人が愛する「ゼクト」とは ~「進化するドイツワインとモダンインディアンキュイジーヌのハーモニー」レポート③

Wines of Germany日本オフィスは2024年6月27日、SPICE LAB TOKYO(東京都中央区)にて「進化するドイツワインとモダンインディアンキュイジーヌのハーモニー」を開催した。当日は、パレスホテル東京 グランドキッチンのアシスタントマネジャー&ソムリエの瀧田昌孝氏が講師を務め、ドイツワインの最新情報について解説があった。

今回の記事では、ドイツワインの“今”を知るキーワード「ゼクト」について紹介する。

ゼクトとは

ゼクト(Sekt)とは、ドイツ国内で生産されるスパークリングワインの総称だ。ぶどう品種や生産地域は限定せず、アルコール度数は10%以上、炭酸ガスの圧力は3.5気圧(atm)以上の、一次発酵または二次発酵からつくられたものを指す。アルコール度数や気圧が規定よりも低いものは、ペールヴァイン(Perlwein)と呼ばれる。

実はドイツ人は、スパークリングワインを味わうのも、またつくるのも大好きなのだという。瀧田氏も、ドイツでのスパークリングワインの消費量を見て驚いたそうだ。

日本ではスパークリングワインと言うと、フランスのシャンパーニュやスペインのカバ(カヴァ)、イタリアのプロセッコなどをイメージする人が多いだろう。しかし、2022年の世界でのスパークリングワインの生産量*を見ると、1位はイタリアのプロセッコDOC(6億2700万本)、2位はドイツのゼクト(4億1400万本)、3位はフランスのシャンパーニュ(3億2000万本)となっている。
*出典:Schweizersche Weinzeitung Dez. 2022/Jan. 2023

ゼクトの種類

ゼクトは4つの種類に分けられており、上(①)からカジュアルなタイプ、下(④)に挙げたものほど高品質となる。

①ドイチャー・ゼクト(Deutscher Sekt)
ドイツで栽培したぶどうを使用し、ベースワインからドイツ国内でつくられたもの。

②ゼクトb.A.(Sekt b.A.)
13ある指定生産地域のいずれかのクヴァリテーツ・ヴァインからつくられたもの。ブレンドと原産地表示に関しては、クヴァリテーツワインb.A.と同等の厳しい規定に従い、品質管理検査を受ける必要がある。

③ヴィンツァーゼクト(Winzersekt)
個々の生産者が自家栽培したぶどうをトラディショナル方式により自家醸造したもので、個性あるスパークリングワイン。ヴィンテージ、ぶどう品種名、生産者の名前をラベルに記載しなければならない。製造期間は最低9カ月。

④クレマン(Cremant)
クレマン・バーデンなど、特定の産地名と共に併記される。手摘みしたぶどうを房ごと圧搾し、トラディショナル方式で最低9カ月の製造期間を経てつくられるなど、細かい規定をクリアしたものだけが名乗れる高品質のスパークリングワイン。

ゼクトの味わい

一般的にブームとなっているのは辛口だが、それはゼクトも同様だ。残糖が17~32g/Lのものが最も多く流通している。ドイツのゼクトは酸度が非常に高いので、残糖がある程度あった方がバランスがとれ、甘酸っぱくてまろやかさを感じる味わいになる。

© Deutsches Weininstitut GmbH 2023

▼イベントで提供されたゼクト

クレマン・ブリュット・ナチュール 2020

Cremant Brut Nature 2020
生産地:ザール/モーゼル
生産者:ビショフリッヒェ・ヴァインギューター・トリアー
品種:シュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)、ヴァイスブルグンダー(ピノ・ブラン)
アルコール度数:12.5%
未輸入ワイン

ブリュット・ナチュール、つまりドザージュしていないタイプのゼクトで、残糖は0.6g/Lと非常にドライ。酸度は7.3 g/Lあり、口に含むと唾液があふれてくるような高い酸味が印象的だ。アルコール度数は12.5%と低めだが、薄さは感じない。この密度の濃さがドイツワインの最大の特徴とのこと。

日本でも好調

生産量が多いゼクトだが、残念ながら日本の小売店などで見かけることはまだ少ない。しかし、10年前と比べると輸入量は約1.3倍に増加し、緩やかではあるが日本でもゼクトの消費量は増えつつある。

「ゼクトは高品質な物でも、1000~2000円程度で購入できる」と、瀧田ソムリエはコメントしている。少しぜいたくをしたい時や、ホームパーティーにも相性が良さそうだ。

次回の記事では、瀧田ソムリエより解説のあった、ドイツワインの“今”を知るのに欠かせないキーワードの1つ「PIWI(ピーヴィー)」について、詳細を紹介する。

<登壇者:瀧田昌孝ソムリエ>
2019年にGerman Wine Instituteが主催する「Sommelier Summer Class」に参加。ドイツの醸造学で最も権威のあるガイゼンハイム大学にて、世界14カ国から参加した50人のソムリエと共に1週間の研修を受けた。現在は、German Wine Academy(ジャーマン・ワイン・アカデミー)の公認講師としても活動している。


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About the author /  鵜沢 シズカ
鵜沢 シズカ

J.S.A.ワインエキスパート。米フロリダ州で日本酒の販売に携わっている間に、浮気心で手を出したワインに魅了される。英語や販売・営業経験を活かしながら、ワインの魅力を伝えられたら幸せ