INDEX
ワインの新興国の中でも、特に新しい産地であるニュージーランド。栽培や醸造に先進的な技術を取り入れたワインづくりで、ワインファンからの信頼や人気を集めている。
今回はそんなニュージーランドを代表するワイナリーの中から、プロヴィダンス（Providence）を紹介する。
プロヴィダンスとは
1990年に、ジェイムズ・ヴルティッチ氏によってマタカナで設立されたワイナリー。クロアチアの祖父から受け継いだ伝統的な栽培・醸造方法をマタカナで実践している。1996年の初リリース「プライベート リザーヴ1993」は、フランスの「シュヴァル・ブラン」や「ペトリュス」など、著名ワインが並ぶブラインドテイスティングで1位を獲得した。
生産量は年間800ケースほどと限られており、ほとんどがニュージーランド国外に輸出されている。
メルローの生産者として知られており、1999年には“現代日本ワインの父”と呼ばれる浅井宇介（本名・浅井昭吾）氏が訪問。著作である『ワインづくりの思想』（中央公論新社、2001年）に大きな影響を与えた。浅井氏を最後に囲んだ会でも、プロヴィダンスが提供されたという。なお、ワイナリーは一般には公開されていない。
プロヴィダンスのヴィンヤード
プロヴィダンスのヴィンヤードがあるのは、ニュージーランド北島のオークランドから北に60㎞ほど進んだマタカナ地域だ。東には太平洋、西にはロドニー山脈が広がる起伏のある丘陵地帯に、2haほどの畑を所有している。
微気候（局地的な気候）に恵まれ、冬には十分な雨が降る。ぶどうの生育期には、日照時間が長くなり、ぶどうは太陽の光をたっぷりと浴びて成長する。収穫期はよく晴れ、涼しい海風が吹き、昼と夜の温度差が18℃ほどと大きい。プロヴィダンスの公式サイトでは、「豊富な日照と十分な降雨量の組み合わせが、優れた品質を生み出している」と説明している。
土壌は、鉄分を含む赤い火山性の粘土質。豊富なミネラル分が含まれており、ワインに凝縮感を与えている。水はけが良く、ぶどうは深くまで根を張るという。
現在は、カベルネ・フラン45％、メルロー45％、マルベック10％の割合で栽培している。1993 年より、実験的に1200 本のシラーが植えられた。
プロヴィダンスのワインづくり
オーナー兼ワインメーカーのジェイムズ・ヴルティッチ氏は、伝統的な栽培・醸造方法を取り入れ、自然に任せながら、テロワールと気候を反映したワインづくりを行っている。
栽培から収穫まで
除草剤や化学肥料を使わずに栽培し、自然に還元できる有機肥料のみを使用。収穫もすべて手摘みで行っている。
発酵から熟成、ボトリングまで
収穫から1時間以内に徹底的に検査し、葉や未熟な実、茎が取り除かれ、木製のオープントップ発酵槽に移される。発酵には、天然酵母のみを使用。その後、フレンチオーク（新樽100％）で24カ月熟成し、ワインに余計なストレスをかけないよう、重力に任せて瓶詰めする。酸化防止剤や保存料も一切使用していない。
プロヴィダンスのワイン
インポーターのファインズ（Fwines）が輸入を手掛けている、4本のワインを紹介する。商品詳細は、ファインズの公式サイトによるもの。
プライベート リザーヴ プロヴィダンス
ボルドー右岸ブレンドのアイコンキュヴェ。初リリースとなった1993ヴィンテージが、「シュヴァル・ブラン」や「ペトリュス」などの著名ワインが並ぶブラインドテイスティングで1位を獲得し、世界を驚かせた。亜硫酸を使わなくても、傑作ワインがつくれることを証明したワインだ。
PRIVATE RESERVE Providance 2014
ぶどう品種：カベルネ・フラン45％、メルロー30％、マルベック25％
タイプ：赤・フルボディ
アルコール度数：13.5％
原産地呼称：マタカナ
参考小売価格：2万1500円
黒系果実と渋み、バニラのニュアンスが感じられ、口当たりを支えるタンニンが長い余韻へと導く。
ロゼ プロヴィダンス
1993年、2004年、2010年、2014年、2017年にしかつくられていない、希少な1本。長期熟成を目指した、プロヴィダンスならではのロゼワインだ。
Rose Providance 2017
ぶどう品種：カベルネ・フラン87％、メルロー13％
タイプ：ロゼ・辛口
アルコール度数：12.5％
原産地呼称：マタカナ
参考小売価格：1万2500円
フレッシュな香りを持ちながら、ベリー系の果実味やカシス、タンニンも感じさせる。
フォー アポッスルズ プロヴィダンス
プロヴィダンスが栽培している4品種すべてをブレンドしたワイン。「フォー アポッスルズ」は、「4人の使徒」を意味している。
FOUR APOSTLES Providance 2014
ぶどう品種：カベルネ・フラン、メルロー、マルベック、シラー
タイプ：赤・フルボディ
アルコール度数：13.5％
原産地呼称：マタカナ
参考小売価格：2万1500円
チョコレートやチェリーのニュアンスに、熟した果実味と力強いタンニン、甘みを感じられる。
シラー プロヴィダンス
1993年から実験的に栽培されたシラーは、最初は満足いく結果を生まなかったという。しかし、日本やドイツ、アメリカなどの愛好家の要望を受けて醸造を続けた結果、カルト的人気を博するワインとなった。
SYRAH Providance 2014
ぶどう品種：シラー 100％
タイプ：赤・フルボディ
アルコール度数：13.5％
原産地呼称：マタカナ
参考小売価格：2万1500円
ラズベリーやスグリの実のニュアンスと、軽やかでフレッシュなタンニンがエレガントな余韻につながる。滑らかでエレガントなワイン。
【今知っておきたいニュージーランドのワイナリー】
高校時代からの友人同士が立ち上げた新世代のワイナリー、インヴィーヴォ
日×NZ×仏で幻のワインを生み出す、シャトー・ワイマラマ
オーストラリアやイギリスでも大人気の「オイスターベイ」を手掛ける、デリゲッツ・ワイン・エステート
ワイン王国5つ星獲得も！ 高コスパ＆高品質ワインが魅力の家族経営ワイナリー、シャーウッド・エステート
スーパーでもおなじみ！ 高コスパワインのつくり手、オーバーストーン
マールボロのカギを握るつくり手”と評される、セント・クレア・ファミリー・エステート“
3人のエキスパートが最良のピノ・ノワールを目指して設立、デルタ・ワイン・カンパニー
ノビロ｜日本の市場から姿を消した大手ワイナリーの現在（番外編）
他のマールボロ産とは一線を画すソーヴィニヨン・ブランを手掛けるフォリウム・ヴィンヤード
フェルトン・ロード｜幻のワインを手掛けるセントラルオタゴの5ツ星ワイナリー
ホワイトへイヴン・ワイン・カンパニー｜元会社員夫妻がスタートさせた世界が認めるワイナリー
バビッチ・ワインズ｜3つの産地から魅力あるワインを生み出す家族経営のワイナリー
マウントフォード・エステート｜ワイパラ・バレーのワインメーカー⼩⼭⻯宇氏が受け継いだ、古巣のワイナリー
セレシン・エステイト｜初めてビオロジックを導入した、ニュージーランドTOP 4のワイナリー
ブランコット・エステート｜モンタナの名で知られていたマールボロのパイオニア ～今知っておきたいニュージーランドのワイナリー
