コラム

3人のエキスパートが最良のピノ・ノワールを目指して設立、デルタ・ワイン・カンパニー ~今知っておきたいニュージーランドのワイナリー

ワインの新興国の中でも、特に新しい産地であるニュージーランド。栽培や醸造に先進的な技術を取り入れたワインづくりで、ワインファンからの信頼や人気を集めている。

今回はそんなニュージーランドを代表するワイナリーの中から、3人のエキスパートが最良のピノ・ノワールを目指して設立した、デルタ・ワイン・カンパニー(Delta Wine Company)を紹介する。

マールボロを知り尽くした栽培家×天才醸造家×MWが設立

デルタ・ワイン・カンパニーが設立されたのは、2000年のこと。ニュージーランド最大のワイン産地であるマールボロにて、“最良のピノ・ノワールをつくる”ことを目的に、3人のワインエキスパートが集まってつくられた。

その歴史は、マールボロの理想的な土地に、高品質クローンとして世界から評価されているディジョン・クローンのピノ・ノワールを植えたことからスタートした。

現在は、ピノ・ノワールだけではなく、ソーヴィニヨン・ブランも手掛けている。そして、同社のワインは、比較的手頃な価格で販売されていることでも知られている。

少量しか生産されない高品質ワインをリーズナブルな価格で提供しているつくり手として、世界中のワインファンから信頼されているワイナリーなのだ。

デルタ・ワイン・カンパニーを設立した3人

ここからは、デルタ・ワイン・カンパニーを設立した3人について、詳しく紹介しよう。

●ニール・イボットソン:マールボロを知り尽くした栽培家

設立者の1人目は、マールボロで長年ぶどう栽培に携わる、マールボロを知り尽くした栽培家、ニール・イボットソン氏。

彼は、1978年からマールボロでぶどう栽培を手掛けている。1994年には、妻と共に手掛けているぶどうの質が高いことを知ってもらうために、ワイナリーのセント・クレア・ファミリー・エステートを立ち上げた。

現在は、デルタ・ワイン・カンパニーのオーナーを務めている。

●マット・トムソン―“天才醸造家”

2人目は、醸造家のマット・トムソン氏。ニュージーランドで最も有名な醸造家の1人で、ニュージーランドのヴィラ・マリアのほか、フランス、イタリアなどの各国で活躍する、フライング・ワインメーカーでもある。ニール・イボットソン氏所有のセント・クレア・ファミリー・エステートでも、ワインの醸造を手掛けている。

●デヴィッド・グリープ―マスター・オブ・ワイン(MW)

3人目は、アメリカ人インポーターのデヴィッド・グリープ氏だ。彼はロンドンに本拠地を置き、ワイン界で最も敬意を集める資格「マスター・オブ・ワイン(MW)」も取得している人物。

デルタ・ワイン・カンパニーの“今”を支える醸造家

デルタ・ワイン・カンパニーのワインを支えている人物はもう1人いる。それが、ヘザー・スチュワート氏だ。

彼女は、2015年からワインメーカーとして参加。2017年からは、主任醸造家を務めている。

彼女はニュージーランドのホークス・ベイで醸造学を学んだ後、セント・クレア・ファミリー・エステート、イタリア・トスカーナのキャンティ・クラシコ、アメリカ・カリフォルニアのサンタ・イネズ・バレーでワインづくりに従事。ワインづくりの腕を磨いてきた。

デルタ・ワイン・カンパニーのヴィンヤード

「デルタ・ワイン・カンパニー」という名前は、マールボロのワイラウ・ヴァレーに1846年に設立されたデルタ農園に由来する。この農園の土地を上空から見ると、ギリシャ文字の「Δ(デルタ)」に似た形だったことから名付けられた。

デルタ農園に可能性を感じてスタートしたデルタ・ワイン・カンパニーは、品種に適した最高の土地を選びながら、徐々に自社畑を拡大してきた。

ピノ・ノワールのヴィンヤード

ここからは、品種ごとにデルタ・ワイン・カンパニーのヴィンヤードの特徴を見ていこう。

まずは、ピノ・ノワールが植えられている、デルタ農園。デルタ・ワイン・カンパニーの歴史の始まりの地であるこの農園は、マールボロのワイラウ川流域のワイラウ・ヴァレーに位置する。痩せた粘土質土壌、豊富な日光、昼夜の気温差に風通しの良さと、最高のピノ・ノワールが生み出される条件が整っている。

ソーヴィニヨン・ブランのヴィンヤード

ソーヴィニヨン・ブランが植えられているヴィンヤードは、マールボロのディロンズ・ポイントと呼ばれる、海岸にほど近いエリアに位置する。

ソーヴィニヨン・ブランのヴィンヤードは、土壌に大きな特徴がある。まず、海岸に近いことから、海の影響が感じられる、ミネラル豊富な土壌をしていること。そして、畑の下には過去の川の氾濫で堆積したシルト(砂よりも細かく、粘土より粗い土壌)と、川底でもあった下層に砂質土壌が広がっていること。こうした特徴により、水はけが良いヴィンヤードとなっている。夜は周辺のエリアよりも若干冷涼で、ミネラルを含んだ、凝縮感のあるソーヴィニヨン・ブランが出来上がる。

また、マールボロでは他にも、シャルドネやメルローも手掛けている。

デルタ・ワイン・カンパニーのおすすめワイン

それでは、デルタ・ワイン・カンパニーのおすすめワインを、輝かしい受賞歴と共に紹介する。

ハッターズ・ヒル ピノ・ノワール

デルタ・ワイン・カンパニーのフラッグシップワイン。ヴィンヤードの特徴が良く感じられる、最高品質のぶどうのみを選別して使用している。数々の賞を受賞しており、公式オンラインショップでは、「テロワールと醸造家のスキルが最も感じられる1本」と説明されている。つくり手たちの自信がうかがえる1本である。

「ハッターズ・ヒル」という名前は、ニュージーランドの伝承に登場する1900年代の人物であるトム・ハッターから取られている。彼は、自身の果樹園の手入れに没頭した暮らしを送ったというエピソードがある。2000年初頭に、生産の難しいピノ・ノワールの栽培に没頭することは、「ハッタ―ぐらい狂っている」との理由で、この名前が付けられた。

Hatters Hill Pinot Noir
産地:ニュージーランド南島/マールボロ
品種:ピノ・ノワール 100%
参考小売価格:4000円(税別)

【受賞歴】
《2015年》
・シドニー国際ワイン・コンペティション金賞(2012ヴィンテージ)
《2017年》
・ロイヤル・イースター・ショー・ワイン・アワーズ金賞(2015ヴィンテージ)
・ニュージーランド・インターナショナル・ワイン・ショー金賞(2016ヴィンテージ)
《2019年》
・インターナショナル・クール・クライメット・ワインズ・ショー金賞(2017ヴィンテージ)
・シドニー国際ワイン・コンペティション ブルー・ゴールド賞(2017ヴィンテージ)
・インターナショナル・ワイン・チャレンジ マールボロ・ピノ・ノワール・トロフィー(最高賞)(2017ヴィンテージ)
・モンディアル・デ・ピノ 最高金賞(2017ヴィンテージ)
《2021年》
・Cuisine Magazine 「ピノ・ノワール・テイスティング 2021」第1位(2019ヴィンテージ)
・ロイヤル・イースター・ショー・ワイン・アワーズ 2021 チャンピオン・ピノ・ノワール(2019ヴィンテージ)

デルタ ピノ・ノワール

デルタ・ワインを代表するワインの1つ。デルタ農園から厳選されたぶどうを使用しており、豊かな風味とまろやかな口当たりを特徴とする。フレンチオークで10カ月間熟成させていて、ラズベリーやダークベリーの甘いアロマも楽しめる。適温で熟成させると、さらに複雑な味わいに。

Delta Pinot Noir
産地:ニュージーランド南島/マールボロ
品種:ピノ・ノワール 100%
参考小売価格:3000円(税別)

【受賞歴】
《2016年》
・ロンドン・ソムリエ・ワイン・アワード金賞(2014ヴィンテージ)
・ニュージーランド国際ワイン・ショー金賞(2015ヴィンテージ)
《2020年》
・ジャパン・ワイン・チャレンジ 金賞(2019ヴィンテージ)

デルタ ソーヴィニヨン・ブラン

ディロンズ・ポイントのシングル・ヴィンヤードで栽培したソーヴィニヨン・ブランを使用。水はけが良く、海洋性ミネラルを豊かに含む土壌で育ったぶどうを使っているだけあって、豊かなミネラル香が感じられる。

凝縮感のある果実味も特徴的。シーフードによく合う。

Delta Sauvignon Blanc
産地:ニュージーランド南島/マールボロ(GI)
品種:ソーヴィニヨン・ブラン 100%
参考小売価格:2500円(税別)

【受賞歴】
《2018年》
・チャイナ・ワイン&スピリッツ・アワード金賞(2017ヴィンテージ)
・ロンドン・ソムリエ・ワイン・アワード金賞(2017ヴィンテージ)
《2019年》
・チャイナ・ワイン&スピリッツ・アワード ダブルゴールド(2018ヴィンテージ)
《2020年》
・サクラ・ワイン・アワード 金賞(2019ヴィンテージ)
《2022年》
・サクラ・ワイン・アワード 金賞(2020ヴィンテージ)

デルタ シャルドネ

ワイラウ・ヴァレーのヴィンヤードで栽培したシャルドネを使用。酸を柔らかくするマロラクティック発酵や樽熟成を経て、果実と樽由来の味わいのバランスが楽しめる1本となっている。

Delta Chardonnay
産地:ニュージーランド南島/マールボロ(GI)
品種:シャルドネ 100%
参考小売価格:2500円(税別)

【受賞歴】
《2022年》
・サクラ・ワイン・アワード金賞(2019ヴィンテージ)
・ジャパン・ワイン・チャレンジ 2020 銀メダル(2019ヴィンテージ)

【今知っておきたいニュージーランドのワイナリー】
高校時代からの友人同士が立ち上げた新世代のワイナリー、インヴィーヴォ
日×NZ×仏で幻のワインを生み出す、シャトー・ワイマラマ
オーストラリアやイギリスでも大人気の「オイスターベイ」を手掛ける、デリゲッツ・ワイン・エステート
ワイン王国5つ星獲得も! 高コスパ&高品質ワインが魅力の家族経営ワイナリー、シャーウッド・エステート
スーパーでもおなじみ! 高コスパワインのつくり手、オーバーストーン
“マールボロのカギを握るつくり手”と評される、セント・クレア・ファミリー・エステート

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About the author /  鵜沢 シズカ
鵜沢 シズカ

J.S.A.ワインエキスパート。米フロリダ州で日本酒の販売に携わっている間に、浮気心で手を出したワインに魅了される。英語や販売・営業経験を活かしながら、ワインの魅力を伝えられたら幸せ