コラム

方程式×ブリッジ食材で広がるカリフォルニアワイン・フードペアリング・ワークショップ ~「カリフォルニアワイン・ハウスパーティー」レポート②

カリフォルニアワイン協会は、カリフォルニアワインの日である9月9日に、THINGS Aoyama Organic Garden(港区南青山)にて「カリフォルニアワイン・ハウスパーティー(California Wine House Party)」を開催した。

当日は、フード&ワインスペシャリストの小枝絵麻氏による、自宅で簡単にできるカリフォルニアワインのフードペアリング・ワークショップが2回開催され、1回目、2回目ともに満席となった。今回は、そのワークショップの内容を紹介する。

フードペアリング・ワークショップとは

最初に、このワークショップの目的が紹介された。ワインとフードのペアリングとは、ワインと料理を口の中で融合させることであり、ワインと料理が口の中で交わることで、ワインの余韻が延び、ワインが素材を引き立て、料理がワインのアロマを引き出す。人によって酸味が好きだったり甘いものが好きだったりと好みがあるが、今回のワークショップを通じて、自分の好みを見つけてほしいと説明があった。

「このペアリング・ワークショップで、自分が好きなアロマや味わいを見つけてもらえたらうれしいです」と講師の小枝絵麻さんは語った。

講師:小枝絵麻氏

Napa Valley Vintners駐日代表も務めるフード&ワインスペシャリストの小枝絵麻さん

テヘラン生まれ、アメリカ育ち。カリフォルニアにあるCIAグレイストーン校を卒業後、ソノマのチョークヒルワイナリー(Chalk Hill Winery)のキッチンで働いているときに、ワインと料理のペアリングにはまる。現在は東京を拠点としており、カリフォルニアワインに合うペアリングについて発信を続けている。

方程式で導くワインペアリング

ワインと料理のペアリングで大切なのは、ワインと料理のボディバランス。「料理は材料と味付け、つまりレシピを見て、ワインのボディバランスが合っていれば、ペアリングは成功します」と小枝氏は解説している。

ワインのボディバランスとは、ワインのボディと、白ワインでは酸味、赤ワインではタンニン、そして糖度に合う料理を合わせるのがポイントだが、実際にやろうとするとやり方が分からない。それが簡単にできるように、小枝氏が10年ほど前にオリジナルで開発したのが、カリフォルニアワインとフードペアリングの方程式だ。

食材+調理法+味付けの方程式

この方程式は、料理の食材と調理法、味付けごとに、軽いものは1点、ミディアムなものは2点、重たいものは3点と点数を付け、合計点でどんなワインとマッチするのかが分かるものだ。

例えば、シソの天ぷらを塩で食べる場合は、食材が野菜で1点、調理法は天ぷらで2点、味付けは塩なので1点の、合計4点となる。

簡単に分けると、合計点が3~4点ならクリスプな白ワイン、5~6点ならリッチな白ワインか軽い赤、7~9点ならフルボディの赤ワインが合う。

ブリッジ食材を味わう

ワインのボディや自分の好みに合わせて丸みを出したい場合は、レーズン、プルーン、メープル、チョコレートなどで甘みを足す、シャープにしたかったらショウガを足すなど、ワインの感じ方を変えていけるのがブリッジ食材だ。家だと料理に合わせて何本もワインを開けるわけにはいかないが、ブリッジ食材を足すことで同じワインでも幅広い料理に合わせやすくなる。

感じ方の変化を体験

今回ペアリングを試す白ワインは、マロラクティック発酵(MLF)をしっかりしている樽発酵の「カモミ・シャルドネ2022」。赤ワインは「ヒドゥン・ヴァインズ・カベルネ・ソーヴィニヨン2022」だ。

左上から塩、レモン、三温糖、ショウガ、豚しゃぶと塩レモン、口直しのクラッカー、ローストビーフ、クルミと揚げたセージ、みそプルーンペースト

まずは、塩、レモン、三温糖、ショウガと合わせて、塩味、酸味、辛味がワインにどう影響していくかを体験した。

最初に試した塩は、口の中で唾液を出し、ワインの持つ酸味と融合させる役目があるという。「全てのワインペアリングには、必ず塩味が必要になってきます」と小枝氏は説明していた。

次に、レモンをかじってからシャルドネを味わうと、ワインが明るくなりカリフォルニアワインらしさを引き出してくれるような印象があった。「太陽を浴びて酸味もしっかり持っているカリフォルニアワインには、シャルドネならレモン、ソーヴィニヨン・ブランなどの青系のものならライムやかぼすを足すことによって、ワインが生き返ります」とのこと。

シャープなワインを柔らかくしたいときに、ワインを丸く感じさせる効果があるのが三温糖や乾燥フルーツだ。三温糖で丸みが引き出されるのは、果実味がしっかりして酸味のあるカリフォルニアワインだからこそ、とのこと。同じ砂糖でも、グラニュー糖ではこの効果は出ないという。

ショウガは、リッチなワインをシャープに味わいたいときに使える食材として紹介された。前菜からリッチなワインと相性を合わせたいときにおすすめだという。

もちろん、ブリッジ食材は組み合わせて楽しむこともできる。レモンに塩と砂糖とショウガを付けて味わったところ、単体で味わったときと比べてワインの印象が大きく変わるのを体験した。

フードペアリングとして試したのが、豚しゃぶと塩レモンだ。塩レモンは、塩とレモンと三温糖を混ぜただけではなく、塩こうじを加えてからフードプロセッサーにかけたもの。本来は完成までに数カ月かかるレシピだが、塩こうじを入れることで、5日間で食べられるようになるそうだ。

豚しゃぶ+塩レモンは、方程式でいうと食材2点+調理法1点+味付け1点=合計4点だ。塩レモンを組み合わせることで、今回提供されたボディのあるシャルドネとの相性がアップする。

続いて赤ワイン。クルミは、タンニンを引き出すことも、和らげることもしてくれる食材として紹介された。揚げたセージの香りは、ワインの爽やかな香りやハーブの香りを引き出し、カベルネ・ソーヴィニヨンによく合った。「カリフォルニアのカベルネ・ソーヴィニヨンには、果実味だけではなくハーブの香りもあります。熟成すると果実味以外のアロマが自然に出てきます。若い時にもそのアロマは存在しますが、ワイン単体では気付きにくいため、ブリッジでハーブを添えるとハーブのアロマも引き出せます」とのこと。

赤ワインのペアリングでは、しょうゆでマリネしたローストビーフとみそプルーンを合わせた。プルーンやレーズンなどのフルーツの甘みは、グラニュー糖よりもワインに融合して、ワインに丸みを出してくれるという。

方程式でいうと、食材3点+調理法2点+味付け3点=8点だ。みそプルーンがワインに丸みを加え、さらにうま味を引き出して、ジューシー感が前面に出てくる印象だ。

また、ワインと合わないというイメージが持たれているビネガーだが、赤ワインビネガーを煮詰めたものを食材にかけることで、ワインが明るくなるという。

小枝氏は「ブリッジ食材で、ワインとのペアリングを自分の好みに近づけることができます。ワインと食事のボディバランスを取り、無数にあるブリッジ食材を組み合わせながら料理をするのも楽しいです。ぜひチャレンジしてください」と語った。

2025年春に書籍を発売予定

「私の故郷だと思うぐらい、カリフォルニアが大好き」と語る小枝氏。フードペアリングの方程式やブリッジ食材、現在のカリフォルニア料理が分かる書籍を2025年の春に発売する予定だ。

書籍の中では、8種類に分けたワインの香りなどの解説や、初級・中級・上級ごとにレシピが紹介されている。初級は8種類のワインごとに、食材にかけるだけでワインに合わせられるソースのレシピ、中級は方程式を参考にしながら、野菜、白肉(豚肉や鶏肉)、魚などに分けたカテゴリーごとのレシピ、上級はワイナリーシェフとしての経験を生かした、好みの香りを引き出すためのレシピが紹介されているそうだ。

カリフォルニアではサステナブルが食のテーマでもあり、この本でもサステナブルなペアリングを紹介しているとのこと。例えば、切り干し大根とたくあん、青リンゴ、オリーブオイル、塩でできるサラダなど、簡単だけれどワインが生きるレシピやおもてなしに使えるレシピ、野菜だけで赤ワインを飲むレシピなどが紹介されているそうだ。


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About the author /  鵜沢 シズカ
鵜沢 シズカ

J.S.A.ワインエキスパート。米フロリダ州で日本酒の販売に携わっている間に、浮気心で手を出したワインに魅了される。英語や販売・営業経験を活かしながら、ワインの魅力を伝えられたら幸せ