アフリカ大陸のワイン産出国と言えば、南アフリカだ。ニューワールドのひとつに数えられ、世界に広く知られつつある。
ところでアフリカ大陸には、もうひとつワイン大国を目指している国があるのを知っているだろうか。
それはエジプトだ。はるか大昔には、ファラオの指揮下でワインづくりが行われていたという。エジプトはゆっくりとしかし確実に、ワインの国際市場で存在感を表し始めているところだ。
今回はそんなエジプトでメディアに取り上げられることの多いワイナリー“Kouroum”の取り組みについて紹介したい。
ワインづくりの可能性を模索
もともとエジプトのワインに対して、観光客や駐在員の評判はすこぶる悪かったそうだ。「飲むと必ず頭痛をするワインか、何とか大丈夫なワインしかなく、おいしいワインはない」とすら言われていた。
そんなエジプトのワイン事情を変えようとしているのが、“Kouroum”だ。
8月7日、アフリカニュースはナイルデルタ地帯にある ワイナリー“Kouroum”のマネージャーであるLabib Kallas氏のコメントを紹介している。
それによると、真のワイン産地になるために、ぶどうの品種や栽培する場所などを含め、ワイン生産のありとあらゆる手法を試しているところなのだという。
このワイナリーでは、「Jardin du Nil」と呼ばれるワインを生産しており、すでにヨーロッパでいくつかの賞を受賞している。今後の展開が期待できそうだ。
オーガニックワインも生産
Kouroumでは、有名なツタンカーメンの墓から車で1時間、アラビア半島南部とアフリカ大陸の間にある紅海に面したリゾート地で、オーガニックワインの生産も手掛けている。こちらでは、地元の固有種であるBannatiを120エーカー(東京ドーム10.4個分)もの土地で栽培している。
固有種を使ったオーガニックワインは、もともと19世紀に生産されていたもので、長きにわたって忘れられていたものだという。カイロではホテルなどで観光客を中心に飲まれ、専門家も納得の味わいだそうだ。
Kallas氏は昨年、AP通信の取材に対して「私たちは自分たちが作り上げたワインの質の高さに驚いています」という自信がうかがえるコメントを残している。
ファラオも飲んでいたワイン
エジプトで発見された古代の壁画にも、庶民たちがぶどうをつぶしているところや、ファラオがゴブレットでワインを飲んでいるところが描かれている。
もともとエジプトでワインは、神に捧げる神聖な飲み物だった。それが次第に生産量が増え、比較的庶民たちの口にも入るようになったという。
7世紀に入るとイスラム教が広まったものの、19世紀から20世紀初頭のイギリス植民地時代に再びワインが飲まれるようになった。現在もイスラム教徒が多いため、国内のワインのほとんどが観光客によって消費されているという。
【参考記事】
Egypt seeks to revive wine industry
Selling Egypt’s wine to the world