辛口のワインもあれば、甘口のワインもある。辛口か甘口かの違いは、どうやって生まれるものなのだろうか。
今回は、ワインの甘口・辛口について説明したいと思う。
甘口ワインと辛口ワインの違い
甘口ワインと辛口ワインの違いは、「残糖度」によるものだ。
ワインは、醸造過程でアルコールを発生させるために、ぶどうを収穫して果汁を絞った後、果汁に酵母を加える。その酵母が、果汁に含まれる糖分をアルコールと二酸化炭素に変化させて発酵を進めることになる。
糖分がすべてなくなるまで発酵を進めれば辛口のワインとなり、糖分が一定値より残れば甘口ワインとなる。なおEU では、残糖度が1L当たり4g以下を辛口と規定している。
白ワインは、果汁の香りを抽出するために、発酵温度を赤ワインよりも低めに設定している。その結果、発酵が止まりやすく、甘口のワインが生まれやすい。
一方、赤ワインの多くは、糖分がなくなるまで発酵を進めるので、辛口のワインができることになる。従って、「甘口の赤ワイン」というのは、発酵の途中でアルコールを追加(酒精強化)して発酵を止めるなどの処理を施して、糖分を残したワインとなっている。
一般的に、甘口ワインの方がアルコール度数は低い。これは発酵が途中で止まるので、発生するアルコールが少なくなるためだ。ただし、発酵を止めるためにアルコールを追加したフォーティファイドワイン(酒精強化ワイン)などはアルコール度数が高くなる。
意図的につくられる極甘口のデザートワイン
ワインの中には、「デザートワイン」などと呼ばれる非常に甘口のワインが存在する。こうした極甘口のワインは基本的に、意図的につくられたものとなる。
極甘口のワインの作り方としては、糖度の高いぶどうを使用する方法、発酵を強制的に止める方法、甘味を添加する方法などがある。
糖度の高いぶどうを使用してつくられた甘口ワインには、貴腐ワイン、アイスワイン、干しぶどうワインなどがある。どのワインも、ぶどう果実から水分が蒸発し、糖度の高い果汁を含んだぶどうを使用してつくったものだ。
発酵を強制的に止めてつくる甘口ワインとしては、先に述べたフォーティファイドワインが有名だ。液中のアルコール分が一定量を超えると酵母が働かなくなる性質を利用して、発酵途中でアルコールを添加することで、発酵を止めて糖分を残している。
甘味を添加してつくる甘口ワインは、フレーバードワインと呼ばれる。フォーティファイドワインなどは、ぶどうそのものの甘さや風味を利用しているが、フレーバードワインの場合は、他の甘味や風味を添加している。
甘いぶどうから辛口ワインをつくるとどうなる?
基本的に甘口ワインは、糖度の高いぶどうからしかつくれない。しかし辛口のワインは、ぶどうの甘さに関係なくつくることができる。先にも説明したとおり、果汁に含まれる糖分が規定以下になるまで発酵が進めば、辛口ワインになるからだ。
ただ、糖度の高いぶどうから辛口ワインをつくると、酵母が利用できる糖が多い分、発生するアルコールも多くなる。つまり、アルコール度数が高くてコクのある質の高いワインになるわけだ。