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「スペインワイン」といえば、赤ワインをイメージする人が多いかもしれない。けれど最近になって、日本食とよく合うことからスペイン産・白ワインの人気が日本でも高まりつつあるという。
そうした状況にあるスペインワイン、特にリアスバイシャス産ワインの魅力を伝えようと、リアスバイシャス原産地呼称統制委員会による「高貴な海のワイン D.O.リアス・バイシャス ワインセミナー」が2017年7月11日に開催された。今回はその内容をピックアップして紹介したい。
リアスバイシャスはぶどう栽培に不向き?
D.O.リアスバイシャスはスペイン北西部にある。大西洋に面したガリシア州のワイン産地だ。
2000年前からこの地で栽培されているという固有のぶどう品種・アルバリーニョを使用した白ワインを生産するなど、特徴のあるD.O.だ。
リアスバイシャスは、海の影響や日当たりに恵まれた土地だ。しかし、「ぶどうの栽培に恵まれた環境」とは言えないそうだ。
その理由のひとつは、湿気が多いこと。カビによる病気が発生しやすいという。
さらにリアスバイシャスの土壌の多くは砂状で、保水力が低くて乾燥しやすい。浸食・劣化しやすく、ぶどう栽培に適しているわけではない。
そんな厳しい環境で、どのようにして魅力的なワインを生み出しているのだろうか。
ほとんどが小規模なリアスバイシャスのぶどう栽培農家
リアスバイシャスの全ぶどう栽培地面積は、スペインに80あるD.O.の中で50位。しかし、ぶどうを栽培する農家の軒数は5550軒で7位と多い。従って、ぶどう栽培農家1件当たりの平均面積は0.7haと小規模栽培(ミニフンディオ)になっているのが特徴だ。
小規模栽培が多いため、ほとんどの作業が機械化されていない。手間はかかるが、そのおかげで多くのぶどうが手作業で丁寧に栽培・収穫されることになる。
ワイナリーも小規模なところが多く、50万L以上生産しているワイナリーは全171軒中9軒しかない。一方で、生産量2万L以下のワイナリーは70軒にものぼる。
狭い農地と厳しい環境に打ち勝つため、工夫を重ねてきたぶどう栽培農家
前述のとおり、リアスバイシャスの土壌の多くは砂状で浸食・劣化しやすい。ぶどう栽培農家は適度に肥料を加えながら、土壌のバランスを保つ努力を続ける必要がある。
また多湿な環境を考慮して、地面からできるだけ高いところに実をつけるようにしようと「棚づくり」方式が主流になった。日当たりがよく風通しの良い環境を生み出し、ぶどうの房が程良く乾燥するようにして、カビによる病気を防ぐように対策を練ってきた。
このようにリアスバイシャスのぶどう栽培農家は、狭い農地とぶどう栽培に向いているとは言えない環境に打ち勝つため、工夫を重ねながら丁寧にぶどうを栽培してきたのだ。
そんなぶどう栽培農家の努力が、個性的で魅力的なリアスバイシャスのワインを生み出しているのだろう。
アジアで一番リアスバイシャスワインが好きなのは“日本”
リアスバイシャスでつくられたワインは2016年度、総生産量の30%が海外に輸出された。最も多くのリアスバイシャスワインを輸入したのはアメリカ(240万2703L)、続いてイギリス(106万7483L)、ドイツ(52万4343L)だった。
アジアで最も輸入している国は日本だ。2016年度には14万7685Lを輸入し、世界第8位となった。リアスバイシャスのワイナリー171軒中41軒の手掛けたワインが日本に入ってきているそうだ。
冒頭のあいさつによると、リアスバイシャス原産地呼称統制委員会が日本向けのPR活動を始めて6年目を迎えた。和食とのマリアージュなどに力を入れ、活動前の2010年と比べて10万L以上輸入量が増えているという。
「リアスバイシャスのワイン=日本食とよく合う」というイメージづくりに成功しつつあるのだろう。「本当に合うのかな?」と興味を持った人には、次週ご紹介するリアスバイシャスのワインをいくつか試してみてもらいたい。
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リアスバイシャスワインの特徴とは