コラム

跳んでるアイツのワインラベル。アメリカで記録的成長を遂げたカセラ・ファミリー・ブランズ ~ 解説:オーストラリア名門ワイナリー

   

オーストラリアの有名ワイナリーを紹介する本シリーズ、今回はアメリカのワイン市場において短期間で著しい成長を遂げた「カセラ・ファミリー・ブランズ」について、ご紹介していこう。

カセラ・ファミリー・ブランズのエピソード

カセラ・ファミリー・ブランズは、ワラビーが描かれたワインラベルで有名な「イエローテイル」を産するワイナリーだ。

その名を一躍有名にしたのが、アメリカワイン市場での飛躍だった。2001年にカセラ・ファミリー・ブランズは、アメリカで「イエローテイル」を発売。2003年にはアメリカ市場で450万ケースを販売するに至り、同市場でオーストラリアワインNo.1、さらに輸入ワインNo.1ブランドになった。

短期間でこれほど急成長したワインブランドはそれまでなかったため、「伝説をつくったワイン」と評されている。中でもイエローテイル・シラーズは「2003年、アメリカで最も多く飲まれた赤ワイン」と呼ばれているほど人気が高い。

また、カセラ・ファミリー・ブランズは、カナダ市場でも成功を収めている。2002年8月に発売したブリティッシュ・コロンビア州では、発売10カ月で、イエローテイル・シラーズがオーストラリア赤ワインの中でシェアNo.1を獲得している。またイタリア市場や日本市場でも成功を収め、日本ではオーストラリアワインの中で売上No.1を誇っている。
Curbside Delivery

人気だけでなく、評価も高く、「ワインスペクテイター」誌の2004年4月号ではイエローテイル・シラーズが85点、シャルドネが84点を獲得。また、「The Wine Advocate」のロバート・パーカー氏からも「驚くほどによく出来たワイン」と評されている。

カセラ・ファミリー・ブランズのイエローテイルは、世界各国で大きく売り上げを伸ばしている。

カセラ・ファミリー・ブランズの歴史

絆を大切に成長したワイナリー

カセラ・ファミリー・ブランズは、イタリアのシチリア島からオーストラリアに移住してきたカセラ夫妻が1969年に設立した。シドニーの西およそ400kmに位置するグリフィス近郊に設立されたカセラ・ファミリー・ブランズは、設立当初、バルクワインの輸出を中心に手掛け、成功を収めた。

その後、ワインづくりに力を入れ始めた。家族や地域との絆を大切にし、ぶどう栽培者との信頼関係を築いてワインをつくり続けた。その結果、オーストラリアで家族経営ワイナリーのトップにまで成長した。

現在では、世界50カ国以上で1200万ケースを販売している。生産量はオーストラリアワイン全体の12%を占めている。
Casella

ピーター・レーマン・ワインズを買収

2013年6月28日、オーストラリアで最高のコストパフォーマンスを誇るワイナリーの1つに数えられるピーター・レーマン・ワインズの創設者であるピーター・レーマン氏が逝去した。

バロッサ・ヴァレーでは、大手ワイナリー「ソルトラム」がぶどうの供給過剰を理由に、栽培農家からの買い取りを1979年に一方的に中止したことがある。そのとき、栽培農家を救うために、ピーター・レーマン氏が設立したワイナリーがピーター・レーマン・ワインズだ。

ピーター・レーマン・ワインズの契約栽培農家のほとんどが祖先から畑を受け継いでいるため、樹齢が高いぶどう樹が多いのが特徴。古樹から採れる品質の高いぶどうを使用してつくるピーター・レーマン・ワインズのワインは、品質が高い。

カセラ・ファミリー・ブランズは、2014年にそのピーター・レーマン・ワインズを買収した。買収により、カセラ・ファミリー・ブランズのラインアップは拡張されることとなった。


カセラ・ファミリー・ブランズのワインづくり

シンプルでおいしい味覚設計

「イエローテイル」とは、ワラビーの愛称だ。その愛称を冠したワイン「イエローテイル」がアメリカをはじめ世界各国で人気を博した理由は、いくつかある。

まず、ワラビーが描かれたかわいらしく印象深いワインラベルとネーミング、リーズナブルな価格設定も成功した理由だろう。

そうした中でも、最も大きな要因になったと言われているのが、「シンプルでおいしい味覚設計」だ。

カセラ・ファミリー・ブランズは、ワインの特徴となる「タンニンの抽出」や「熟成」といった作業を省き、果実のおいしさが前面に出るワインをつくった。「イエローテイル」は、通常のワインよりも甘味が強いために酸味を感じにくく、果実味が豊かで低タンニンのワインとなっている。

タンニンが少ないため、ワイン初心者には「飲みやすい」と評される一方で、ワイン愛好家からは「甘い」という声が多く聞かれる。しかし果実味が前面に出ているので、嫌な甘さではなく、価格を考えれば飲んでも良いという愛好家が多い。

[yellow tail] Wine

誰もが気軽に楽しんで飲めるワイン

「誰もが気軽に楽しんで飲めるワイン」をつくったことで、カセラ・ファミリー・ブランズは前例を見ない著しい成長を遂げた。ある分析によると、「カセラ・ファミリー・ブランズは、他社の客を奪うのではなく、ビールやカクテルを愛飲していた人々をワイン市場へと引き込み、新たな客層を開拓した」という。

果実味を強く感じる「イエローテイル」は、ワイン愛好者だけでなく、ワイン初心者にも広く受け入れられている。「誰もが気軽に楽しめる」ワインは、多くの人にワインの魅力を伝えながら、販売を伸ばしている。

カセラ・ファミリー・ブランズのおすすめワイン

イエローテイル・モスカート

微発泡で甘口。食前酒や食後酒として楽しめる。
Yellow Tail

イエローテイル・シラーズ

熟した果実を使用して、豊かな味わいと香りを追求したワイン。熟した果実の甘みと程よいタンニンのバランスが良い。
yellow tail shiraz

イエローテイル・シャルドネ

爽やかな口当りが魅力のワイン。
Yellow Tail 2002 Reserve Chardonnay

イエローテイル・カベルネ・ソーヴィニヨン

果実本来の強い酸味とベリーの味わいが豊かなワイン。
South Eastern Australia 2013 de Casella. Yellow Tail cabernet sauvignon   #vivino #wine #winevinhos #amovinho #vinho

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

Twitter で
About the author /  ワインバザール編集部
ワインバザール編集部

世界各国のワインに関するニュースやコラムなどを配信していきます。