コラム

ナパと双璧、カリフォルニアワインの名産地「ソノマ・カウンティ」――多彩なテロワール、60種超のぶどう品種から生まれるワイン

アメリカ・カリフォルニア州のワイン産地、ソノマ・カウンティのワインを数多くテイスティングできるイベント「ソノマ・イン・ザ・シティ 東京2018」が2018年5月、東京・白金台の八芳園で開催された。

同イベントでは「ソノマの多様性 〜テロワールとワイン〜」と題したセミナーが開催された。

セミナーの前半は、ソノマ・カウンティのフリーマン・ヴィンヤード&ワイナリーにてワインを醸造するアキコ・フリーマンさんなどから、ソノマ・カウンティの概要について説明があった。今回はその内容をお伝えしていこう。

ソノマ・カウンティの歴史

ソノマ・カウンティはカリフォルニア州北部に位置し、サンフランシスコから車で約1時間のところにある。有名なナパ・バレーとは山を挟んだお隣という位置関係で、広さはナパの半分ほどだ。

ソノマ・カウンティはアメリカの中で最も古くからぶどうが栽培されていた土地だ。入植者のスペイン人や、アザラシの毛皮を獲りにアメリカ大陸へやってきたロシア人などがぶどうを作り始め、1857 年にはカリフォルニア最古のワイナリー「ブエナ・ビスタ・ワイナリー」が創業した。ソノマ・カウンティはそれ以来、アメリカのワイン産業を牽引してきた。

ところが禁酒法の影響で、1930年代初頭には94%のワイナリーが潰れてしまった。それでもぶどう栽培は続けられ、ぶどう農家が家庭内でどぶろくのようにお酒をつくっていた。禁酒法が解かれても、ワイン産業が完全に息を吹き返すまでには長い年月が必要だった。

本格的にワイン産業が再興するきっかけとなったのは、有名な「パリ・テイスティング」だ。「パリ・テイスティング」とは、1976年にフランスで実施されたワインのブラインド・テイスティングのこと。試飲の結果、トップ10に選ばれたワインのうち、赤・白共に6本はカリフォルニアワインだった。最優秀ワインも赤・白共にカリフォルニアワインが選ばれ、「カリフォルニア産ワインがフランス産ワインを打ち負かした」と業界関係者に衝撃を与えた。しかも審査員は、全員フランス人だったのだ。

パリ・テイスティングをきっかけに、カリフォルニアのワイン産業は復活。これまでにない勢いで生産量は増えていった。

ソノマ・カウンティのテロワールの特徴

ソノマ・カウンティにはサンアンドレアス断層が通り、海側のプレートと山側のプレートがぶつかり合ったところに小さな山脈がある。

この山脈が細かな風の流れを生み出し、風の違いから生じる気候とさまざまな種類の土壌が、実に多様なテロワールをつくり上げる。

そのためにソノマ・カウンティのつくり手たちは、どの土壌にどのぶどうが合うのかを探し出すのに時間をかけて、最高のマッチングを追求。さまざまな試みにチャレンジしているという。

霧が生み出す大きな寒暖差

ソノマ・カウンティは典型的な地中海性気候だ。11月~3月の雨季に1年分の雨が降り、その他の時期はほぼ降雨がない。そのため、ぶどう樹は病気になりにくく、カビの影響も受けにくいという利点がある。

海から100kmくらい内陸に入った場所では、夏場でも17時くらいになると徐々に霧が立ち込めていく。霧は21~24時くらいにかけて周囲に広がり、夜中になると全体を覆ってしまう。真昼には30℃くらいまで気温は上がるが、真夜中には10℃程度にまで落ち込み、大きな寒暖差が生まれるのだ。

加えて、霧の影響で日中の気温の上がり方が遅く、気温のピーク時間が2~3時間程度しかない。夏場でも比較的冷涼な時間帯が長いため、きれいな酸を携えたぶどうが育つ。

ソノマ・カウンティのぶどう品種の特徴

ソノマ・カウンティで栽培されているぶどう品種の特徴の1つと言えるのが、テロワールのところでも触れた「多様性」だ。テロワールの多様性のみならず、ぶどう品種も白ぶどう22種類、黒ぶどう44種類と幅広く栽培されている。

「多様性」が特徴となっているのは、カリフォルニアはワインづくりの歴史が浅いため、新たな可能性が眠っていると考えるつくり手が多いからだ。

ソノマ・カウンティには、ぶどう栽培にとって理想的な「水はけの良い土地」「寒暖差のある気温」「少ない降雨量」という3つの条件がそろっている。環境に恵まれチャレンジを続けるソノマ・カウンティから、どんなワインが生まれてくるのだろうか。

カリフォルニアの山火事がソノマに与えた影響は

2017年10月に起きたカリフォルニア州の山火事は、日本でもテレビ等で大きく報道された。

ソノマ・カウンティでも火が住宅地にまで広がり、大きな打撃を受けた。だが、幸いにもぶどう畑で失われたのは全体の4%のみ。ぶどうはすべて収穫を終えた後であったことは不幸中の幸いだった。

セミナーでは、「ソノマはすでに復興しており、いつでもゲストを迎える準備ができている」と言及。ぜひ足を運んでほしいとの言葉に、拍手が起きるシーンもあった。

ソノマ・カウンティが目指すこれからのワインづくり

ソノマ・カウンティでは全体を通じて、サステナブル(持続可能)なワインづくりに、よりコミットしていくという目標を掲げている。具体的な目標としては、2019年末までに100%サステナブルな状態の実現を目指している。

2018年春の現状としては、条件をクリアしたワイナリーが50%を占めるそうだ。世界的なオーガニック基準をクリアし、次の世代に「今より良い状態」の畑を手渡していくため、地球に優しいワインづくりへと本格的にシフトしている。

こうしたソノマ・カウンティでつくられるワインには、どのようなものがあるのだろうか。次週掲載する記事で、実にバラエティに富むソノマ・カウンティのおすすめワインをご紹介していこう。

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About the author /  Yayoi Ozawa
Yayoi Ozawa

フランス料理店経営ののち、ワインとグルメ、音楽を専門とするライターへ転身