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長野県では2018年に、11軒のワイナリーが開業したという。2019年2月に6回目の開催を迎えた「NAGANO WINE FES in 東京」には4軒の新規ワイナリーが出展していた。
新規ワイナリーの中で一際目立っていたのが、若手醸造家2人によるLe Milieu(ル ミリュウ)だ。同ワイナリーで副代表を務める齋藤 翔さんに、お話を伺った。
“食事と合う”にこだわったワイン
まずはLe Milieuが今回出品したファーストヴィンテージのワインについて、齋藤さんの説明を紹介していこう。
Polaris 竜眼2018(1800円/税別)
柔らかい口当たり、鼻から抜ける香りは皮が緑色のミカン、酸味がしっかりあり切れの良い辛口ワイン。
てんぷらや菜の花のおひたし、柚子を振った魚介・オイル系パスタ、前菜系全般に合わせやすい1本です。
Polaris メルロー2018(2500円/税別)
ベリーを思わせる香りと味わい。果実味を持たせ、渋みも柔らかめに仕上げたチャーミングな辛口タイプ。肉じゃが、照り焼き、ハンバーグなど、家庭料理全般に合わせやすい懐の深いワインです。
Le Milieuが目指すのは、「グランヴァンづくりではなく、あくまで食事と合うワインをつくる」ことだ。この思いは、Le Milieu(ル ミリュウ)という社名にも込められている。Le Milieuはフランス語で「真ん中・中心」という意味。食卓の中心に2人のワインを置いてほしいという気持ちも含めているそうだ。
この説明を聞く前に彼らのワインを口にしたところ、自然に会場のテーブルの上に置かれたワインブレッドに手が伸びていた。明確な目標を持ってつくられたファーストヴィンテージは、しっかりと造り手の想いを表すものになっているようだ。
長野のワイナリーで培った経験
NAGANO WINE FESでのLe Milieuは、来場者だけではなく他のワイナリーからも声をかけられている姿が印象的だった。
代表の塩瀬豪さんは、あずみアップル スイス村ワイナリーで、9年ほど栽培と醸造を担当してきた。
副代表の齋藤翔さんも、飲食店で働きつつソムリエ資格を取得後、楠ワイナリーで3年ほど栽培と醸造を経験。その後、安曇野市に戻ってぶどう畑を始めながら、安曇野ワイナリーの醸造部長の下で2年ほど働いた経験がある。
自身のワイナリーを立ち上げたばかりの2人は、どちらも31歳。長野県内で栽培や醸造の経験を積んできた2人は、他のワイナリーからすでにワインをつくる仲間として認められているようだ。
好きな人たちと楽しい時間を過ごしたいときに
2人がワインづくりの経験を積み、ワイナリーを開業した安曇野は、2018年3月に小規模ワイナリーを開業できる「ワイン特区」に指定された。Le Milieuは安曇野市で開業した小規模ワイナリー第1号となった。
もともとは沖縄でダイビングインストラクターをしていた塩瀬代表が、ワインに興味を持ったきっかけは、観光資源としてのワインに興味を持ったからだという。今後、安曇野に小規模ワイナリーが増えれば、ワイナリー巡りのできる観光地として知られる日が来るかもしれない。
Le Milieuのワインづくりについて、齋藤さんはこう語ってくれた。
安曇野市から世界と勝負できるワインをつくりたいとも心から思っていますが、ワインはやはり「食事」と「人」と共にあって良さが出るものと思っているので、好きな人たちと楽しい時間を過ごしたいときに飲んでいただければうれしいです。
Le Milieuのワインが手に入る場所は限られているが、長野ワインの勢いやワイン産地と指定の安曇野のこれからを感じさせてくれるつくり手だった。