コラム

日本ワインが初の金賞を獲得! 「ソムリエ・ワイン・アワード2020」傾向と受賞ワイン

イギリスのロンドンで2020年2月から3月にかけて開催された、「ソムリエ・ワイン・アワード(Sommelier Wine Awards:SWA)2020」の結果が発表された。料飲業界向けワインを審査対象としているこのコンクールは、ワイン業界の流行がいち早く反映されるといわれている。

そのコンクールで、日本ワイン初となる金賞を「シャトー・メルシャン 笛吹甲州グリ・ド・グリ2017 」が獲得した。今回は、このソムリエ・ワイン・アワードについて、受賞ワインと合わせて紹介しよう。

「ソムリエ・ワイン・アワード」とは

ソムリエ・ワイン・アワードは、イギリスのインバイブ・メディアが主催し、2007年から開催されているワインコンクール。一般消費者向けワインではなく、料飲業界向けワインを審査対象とし、料飲業界を専門とするマスター・ソムリエやマスター・オブ・ワインなどが審査員を務めている 。ホテル、パブ、バー、レストラン向けのワインに力を入れている生産者やバイヤー、飲食店オーナー、ソムリエが注目しているコンクールの1つともいわれている。

審査は、カテゴリー別にブラインドテイスティングで行われる。食べ物との相性や、使われたぶどう品種の特徴をどれだけ表現しているかというティピシティ 、コストパフォーマンスなどが主要なポイントとなる。第1審査でおよそ半分に絞られ、第2審査で、金賞、銀賞、銅賞、優秀賞、特別賞が決定される。

2020年の傾向

ワイン業界の流行をいち早く反映するソムリエ・ワイン・アワードだが、2020年はセミヨン種ワインや日本ワイン、オレンジワインなどのエントリーが増加した。

セミヨン種は、ソーヴィニヨン・ブランの代わりとして使用されてきた品種だが、2020年のコンクールでは存在感を放ち、4アイテムが金賞、3アイテムが銀賞、3アイテムが銅賞を獲得した。中でも南アフリカのセミヨン種ワインが高く評価され、これまでセミヨン種ワインの代表的な生産国とされてきたオーストラリアと受賞アイテム数で肩を並べた。セミヨン種のワインの特徴として、料理との相性の良さが挙げられる。

また、新世界(ニューワールド)からエントリーしたワインも高く評価された。特にチリのレイダ・ヴァレー地区のソーヴィニヨン・ブランは、審査員が驚くほど品質が高く、チリの他の地区のソーヴィニヨン・ブランとは一線を画す結果となった。オーストラリアとアルゼンチンの赤ワインは、今までとは異なる単一ワインやブレンドワインで高く評価され、例年以上に金賞を多く受賞した。また、ギリシャの赤ワインも品質が向上し、金賞受賞数を大幅に増やした。

近く流行しそうな注目すべきワインとしては、オレンジワインが挙げられる。オレンジワインは、白ワイン用のぶどうを使用して、赤ワインの製法でつくられるワイン。今まではほとんど取り引きされることがなかったが、審査員にも受け入れられるようになり、モダンで変わったワインの先駆的存在となっている。さらに今後、消費者の好みを反映して、低アルコールのワインも人気が出るのではないかとされている。

日本ワインが初めて金賞を受賞

ソムリエ・ワイン・アワード2020では、メルシャンの「シャトー・メルシャン 笛吹甲州グリ・ド・グリ2017」が、日本ワインで初となる金賞を受賞するという快挙を達成した。

「シャトー・メルシャン 笛吹甲州グリ・ド・グリ2017」は、山梨県で古くから栽培されている日本固有品種の甲州を使用した白ワイン。色が付いた果皮の周りにおいしさがあるのではないかという仮説から、赤ワインの製法を取り込むなどした独特な方法で数種類のキュヴェを仕込み、それらをバランスよくアッサンブラージュしてつくる。甲州の果皮や種、果汁の魅力が全て混じり合い、複雑な味わいをつくり上げているという。リンゴのコンポートのような甘い香りとふくよかな味わいのワインに仕上がっている。

特別賞受賞ワイン

ソムリエ・ワイン・アワードでは、金賞、銀賞、銅賞の他に、優秀賞や特別賞を発表している。

優秀賞であるワイン・オブ・ザ・イヤーには「Best in Show」のほか、「House Wine of the Year」「Fine Wine of the Year」「Gastropub Wine of the Year」がある。

特別賞には、次の賞がある。審査員が「恋に落ちた」ワインに授与される「Critics’ Choice」。品質が高く、食事との相性が良いだけでなく、ワイン単体でも楽しめるワインに授与される「By the Glass」と「Pub & Bar」。その他に、12の著名レストランを代表するメニューと相性の良いワインに授与される「Food Match」 や、各地域で活躍したサプライヤーや生産者が受賞する「Merchant of the Year」と「Producers of the Year」がある。

2020年のCritics’ Choice(17アイテム)、By the Glass(10アイテム)、Pub & Bar(4アイテム)受賞ワインは以下の通り。

■Critics’ Choice

フンベルグ グリューナー・ヴェルトリーナー2018
つくり手:ゼルナー
生産国:オーストリア

インペリアル・パノラミック カヴァ ブリュット グラン・レセルバ2013
つくり手:リョパール
生産国:スペイン

ホワイト・ピノ2016
つくり手:リトマス
生産国:イギリス

レ・フルノー シャブリ プルミエクリュ2017
つくり手:ドメーヌ・ポール・ニコル
生産国:フランス

ヴァン・ジョーヌ・アルボワ 2009
つくり手:ドメーヌ・ド・ラ・パント
生産国:フランス

フォン・レス シュペートブルグンダー2018
つくり手:フランツ・ケラー
生産国:ドイツ

マラグジア エパノミ2019
つくり手:ゲロヴァンリウ
生産国:ギリシャ

ガリアルデッタ ジビッボ2018
つくり手:バーリョ・クラトロ・アリーニ1875
生産国:イタリア

カベルネ・ソーヴィニヨン2016
つくり手:ヴァス・フェリックス
生産国:オーストラリア

ローレンス・リバー・ヴァレー レッド 2010
つくり手:モーゲンスター
生産国:南アフリカ

テ・アライ シュナン・ブラン2017
つくり手:ミルトン
生産国:ニュージーランド

ラダ ピノ・ムニエ/ ピノ・ノワール2018
つくり手:スターゲイザー
生産国:オーストラリア

アクロバット ピノ・グリ2017
つくり手:フォーリー・ファミリー・ヴィンヤーズ
生産国:アメリカ

アルカラ グルナッシュ2019
つくり手:エアルーム
生産国:オーストラリア

ヘリテージ ジンファンデル2017
つくり手:ドライ・クリーク
生産国:アメリカ

アルペンドレ メレンサオ2017
つくり手:ロンセル・ド・シル
生産国:スペイン

コレクション・カレジク・カラス2018
つくり手:ディレン
生産国:トルコ

■By the Glass

デーンベリー リザーブ2018
つくり手:デーンベリー・ヴィンヤーズ
生産国:イギリス

トゥーレーヌ ソーヴィニヨン・ブラン2019
つくり手:ドメーヌ・デュ・プレ・バロン
生産国:フランス

ラ・ロッカ ソアーヴェ・クラッシコ2017
つくり手:ピエロパン
生産国:イタリア

トスカーナ ロッソ 2016
つくり手:チャッチ・ピッコロミニ・ダラゴナ
生産国:イタリア

クリーフス リザーブ・コレクション シャルドネ2019
つくり手:クライン・ザルゼ
生産国:南アフリカ

マルベック2018
つくり手:アルジェント
生産国:アルゼンチン

レミー・フェルブラ コート・デュ・ローヌ2018
つくり手:グラン・セール
生産国:フランス

レ・コッリーネ・サン・ジョルジョ ピノ・グリージョ ロゼ2019
つくり手:バルトロメオ・ブレガンツェ
生産国:イタリア

ドン・ハコボ グラン・レゼルヴァ2005
つくり手:ボデガス・コラル
生産国:スペイン

プロセッコ・トレヴィーゾ エクストラ・ドライ2019
つくり手:ソリーゴ
生産国:イタリア

■Pub & Bar

ウンバラ ピノタージュ ロゼ2019
つくり手:イムブコ
生産国:南アフリカ

ラ・レジェンダ・デ・ラス・クルセス ソーヴィニヨン・ブラン2019
つくり手:ブティノ
生産国:チリ

ビゴーデ2018
つくり手:DFJヴィニョス
生産国:ポルトガル

プラウドリー・ヴィーガン プロセッコ NV
つくり手:ブロードランド・ドリンクス
生産国:イタリア

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

Twitter で
About the author /  ワインバザール編集部
ワインバザール編集部

世界各国のワインに関するニュースやコラムなどを配信していきます。