コラム

2020年の日本ワイン市場、業務用は打撃受けるも家庭用ワインが好調 ――メルシャン事業方針発表記者会見から

2021年1月18日、メルシャンは2021年の事業方針発表記者会見をオンラインで開催した。会見では2020年の市場や同社の取り組みを振り返るとともに、2021年の事業方針、マーケティング戦略が語られた。

本記事では、2020年の日本のワイン市場の振り返りと、好調だった手頃な価格帯のスパークリングワイン、オーガニックワインの動向について取り上げる。

2020年を振り返って

はじめに、メルシャン代表取締役社長の長林道生氏が、2020年の振り返りと、2021年についての所感を述べた。

長林氏は、「コロナで始まりコロナに終わった2020年は、メルシャンとしても色々なことを考え、気づき、学んだ1年だった」として、「(コロナ禍での)環境の変化の中、外食産業をはじめ、困っている多くの方々に少しでも寄り添って貢献していきたい。メルシャンのCSV(共有価値の創造)の精神をさらに強化しながら、決意を持って進んでいきたい」と語った。

メルシャン代表取締役社長・長林道生氏

コロナ禍でのワイン市場

新型コロナウイルス感染症の影響により、2020年の日本のワイン市場はかなりの打撃を受けた。

業務用に多く使われる輸入ワインが低調で、同社では2020年の輸入ワイン市場を前年比87%と推計。日本ワインを含む国内製造ワイン市場については、「巣ごもり需要」「家飲み需要」もあって同100%としたが、業務用の減少をカバーするには至らず、ワイン市場全体では前年比90%と推計している。

なお、同社によると、日本のワイン市場の「業務用:家庭用」の比率(容量ベース)は、外出自粛の影響を受けて、2019年の25:75から2020年には15:85程度に変化している。メルシャンも市場同様2:8程度の比率とのことで、この傾向は2021年も続くと見られる。

家飲み、オンライン飲み会が間口を拡大

2020年は、外食を控える中で「家飲み」がさらに増え、「オンライン飲み会」などこれまでにない新たな飲用シーンでワインを選ぶ人が増えた。ワインを飲む人の間口も広がりを見せており、特に20代男女の家庭用ワイン購入率が大きく伸びている。全世代の平均が前年比4%増であるのに対し、20代男性は24%増、20代女性は23%増だった。

家庭用ワインの中でも好調なのが、同社が力を入れるカジュアルスパークリングを含む手頃な価格帯のスパークリングワインと、オーガニックワインだ。販売容量を2019年と比較すると、799円以下の家庭用スパークリングワインは117%、オーガニックワインは112%と、伸びを見せている。

メルシャンに注目すると、輸入ワインは前年比91%、国内製造ワインは同102%、ワイン合計では同97%で、同社が推計するワイン市場全体を7%上回った。要因として、輸入ワインはチリの「フロンテラ」シリーズが過去最高の販売数量となる62万ケースを達成したこと、国内製造ワインは、メルシャンが近年力を入れているカジュアルスパークリングが前年比161%、オーガニックワインが同187%と好調だったことが挙げられる。
※国内製造ワイン:720ml×12本換算、輸入ワイン:750ml×12本換算

過去最高販売数量を4年連続で更新

チリNo.1ワイナリー※のコンチャ・イ・トロ社が手掛ける「フロンテラ」シリーズは、試しやすいスタンダードシリーズからワンランク上のプレミアムシリーズまであり、さまざまなぶどう品種や大容量タイプなど豊富なラインアップを展開している。2020年は家飲み需要が後押しして、販売数量62万ケース(前年比103%)を達成。これは過去最高で、4年連続で更新している。
※INTELVID-Chile 2019

「フロンテラ カベルネ・ソーヴィニヨン」

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