コラム

甲州ワイン2種がプラチナ賞受賞の快挙! ~デキャンター・ワールド・ワイン・アワード2021

世界各国から数多くのワインがエントリーするワイン・コンペティション「デキャンター・ワールド・ワイン・アワード(Decanter World Wine Awards:DWWA)」。2021年は、世界56カ国から過去最高の出品数となる、1万8094本のワインがエントリーした。

このコンペは、1975年創刊のイギリスのワイン専門誌『デキャンター(Decanter)』が2004年から毎年開催しているもので、規模としては世界最大級を誇る。

審査は、マスター・オブ・ワインとマスター・ソムリエを含むワインのエキスパートが約2週間かけて厳格に実施する。完全なブラインドテイスティングによる審査のため、無名のつくり手が高い評価を受けることもあり、その受賞動向は毎年ワイン業界から大きな関心を集めている。

Best in Show受賞の50本、その傾向は?

DWWAではまず、全エントリーワインから、金賞・銀賞・銅賞のワインを選定する。次に、金賞を受賞したワインを再度試飲し、その中からプラチナ賞を決定。その後さらに、プラチナ賞受賞ワインを試飲して、Best in Show受賞ワインを選ぶ。

Best in Showを勝ち取ることができるのは、わずか50本のワインだ。過去最高出品数となった今回は、全体のたった0.28%という狭き門となった。

では、そんな名誉ある賞を獲得したワインについて、詳しく見ていこう。

安定のフランスとイタリア、初受賞の地域も

今回も安定した結果を残したのは、フランスとイタリアだ。

フランスは、ルグラ・エ・アスのヴィンテージシャンパン「L.T.S. Blanc de Blancs Brut Grand Cru 2008」が最高スコア98点を獲得。参加国最多となる15本のワインがBest in Showを受賞し、貫録を見せつけた。

イタリアは、トスカーナやピエモンテ州などから、赤ワイン3本、白ワイン4本の計7本がBest in Showを受賞。中でも、近年品質の向上が著しいプロセッコ(スパークリングワインの1種)から「47/87 Rive Di Vidor Extra Dry」が97点を獲得し、大きな称賛を得た。

地域で見ると、フランスのサヴォワやジュラ、イタリアのフリウリは、今回初めて受賞ワインを輩出した。

受賞数を大きく伸ばしたスペイン、意外な結果となったドイツ

大健闘したのが、スペインのワインだ。昨年の4本から今年は9本と、Best in Show受賞数は2倍以上となった。

注目すべき点は、このうち3本がValue Best in Showを受賞しているということだ。なんと1本当たり15ポンド(約2300円)未満と、品質と価格において優れた価値を提供している。

また、ドイツは、シュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)とシャルドネのワインがBest in Showを受賞。伝統的なリースリングではなく、ピノ・ノワールやシャルドネに注目が集まるという意外な結果であり、ドイツにとっては記録的な年となった。

高評価を受けたイギリスのスパークリングワイン

昨年に引き続き高い評価を受けたのが、イギリスのスパークリングワインだ。ケント州のスクエリーズ「Late Disgorged Brut 2011」がBest in Showを受賞している。この結果については、「イギリスのスパークリングワインが、長期熟成という点において、世界のトップ・キュヴェに匹敵することを示している」と評されている。

日本は過去最多の71本が受賞

日本は、2本がプラチナ賞、4本が金賞、16本が銀賞、49本が銅賞に輝き、受賞数は過去最多を記録した。

日本の甲州ワイン2本がプラチナ賞

アジア圏では3本のワインがプラチナ賞を受賞しているが、そのうちの2本が日本ワインとなる。

プラチナ賞を受賞した日本ワインは、白百合醸造「ロリアン 勝沼甲州 2019」とルミエール「光 甲州 2018」の2本だ。いずれも日本固有の甲州種を使った甲州ワインで、97点という高い評価を得ている。

白百合醸造「ロリアン 勝沼甲州 2019」

ルミエール「光 甲州 2018」

甲州種を使った日本ワイン2本が同時受賞したことについて、ルミエールの代表取締役社長・木田茂樹氏は「近年では、甲州を使ったワインが受賞することも増え、日本ワインが世界に認められるようになったことも、とてもうれしく思う」とコメント。また、白百合醸造・代表取締役の内田多加夫氏は「国内3社目となる、名誉ある賞の受賞に大変感激するとともに、おいしいワインをお届けできるよう精進していきたい」と、喜びと抱負を語っている。

ルミエールの代表取締役社長・木田茂樹氏(左)と白百合醸造の代表取締役・内田多加夫氏(右)

赤ワイン3本、白ワイン1本が金賞を獲得

昨年のDWWA 2020では、日本の赤ワインが初めて金賞を獲得し、大きな話題を呼んだことは記憶に新しい。そして今年は、3本の赤ワインが金賞を受賞。日本の赤ワインづくりのレベルの高さを証明した。

日本の赤ワインの中で最高得点を獲得したのは、シャトー・メルシャン「椀子オムニス 2016」だ。長野県上田市にある自社管理畑の椀子ヴィンヤードで収穫した複数のぶどう品種を使用し、ヴィンヤードのテロワールを引き出している。

山梨県高畠町の高畠ワイナリー「高畠マジェスティック・ローグル・ルージュ 赤おに 2017」は、カベルネ・ソーヴィニヨンとメルローをブレンドしている。

他に、ピノ・ノワールを使った「ピノ・ノワール プライベートリザーブ 2019」は、北海道余市町のキャメルファームワイナリーが手掛けた赤ワイン。チェリー、ローズヒップ、ラズベリー、ザクロのアロマと、濃厚な味わいが評価された。

キャメルファームワイナリー「ピノ・ノワール プライベートリザーブ 2019」

また、白ワインでは、山梨県甲州市の盛田甲州ワイナリー「シャンモリ 柑橘香甲州 2020」が唯一、金賞に輝いた。

甲州ワイン2本がプラチナ賞同時受賞、赤ワイン3本が金賞受賞という結果となった、日本ワイン。その実力の高まりを感じると同時に、今後の飛躍が期待できる結果となった。

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About the author /  maomi

教育機関で中日翻訳に携わったのち、フリーライターに転身。教育、旅行、グルメを中心に執筆を行う。