コラム

そもそも「ワイナリー」とは? 「メゾン」「ドメーヌ」など生産者を表す言葉や違い、その意味を解説

ワインの生産者の表現として、最もポピュラーなのは「ワイナリー」ではないだろうか。ただ、これ以外にも、「メゾン」「ドメーヌ」「エステート」などの表現もある。これらは、単に言語の違いからということもあるが、どのようなワインがどこでつくられているかといった意味合いも込められていることもある。

今回は、それぞれの表現の違いや、ワイナリーに関連した専門用語について解説する。

ワイナリーの定義・意味

まず、ワイナリーの定義や意味を確認しよう。

ワイナリーとは、ワイン職人を雇用して、ワインを醸造する事業や場所のことを指す。規模の大きさは問われないが、大規模なワイナリーだと、その他に倉庫やワインを保存するタンク、研究所、瓶詰めをする製造ラインなどが併設されていることが多い。

ワイナリーは、ヨーロッパをはじめ、アメリカ、南米、日本など世界各国にある。多くのワイナリーでは、ワイナリー内を紹介する見学ツアーや試飲会を催している。

ワイン生産者を示す代表的な言葉とその違い

ワイナリーと似た表現ですぐに思い浮かぶものといえば、ドメーヌ、シャトーなどがある。ここでは、それぞれがどのようなものを指しているのかを解説する。

ドメーヌとは

ドメーヌは、フランスのブルゴーニュ地方で多く見られるワイン生産者の名称だ。ドメーヌと冠するワインも多数販売されているが、一番の特徴は「自社(自己)所有の畑で採れたぶどうのみを用いて醸成したワインを販売している」というところにある。

また、ドメーヌは、比較的小規模な生産者が多い。

シャトーとは

フランスのボルドー地方では、フランス語で「城」を意味する「シャトー」の名を冠する生産者が多く存在している。

シャトーの名の付く生産者は、大規模生産者であることが多い。その名の通り城のような絢爛(けんらん)な建物を持ち、その周りを自己所有の畑が取り囲むというスタイルが目立つ。

メゾンとは

メゾンは、他から購入したぶどうでワインを醸造する生産者のことを指す。ただし、100%購入したぶどうで生産することはまれで、自己所有の畑で採れたぶどうも使っているメゾンがほとんど。

メゾンで生産して販売されるワインには、「メゾン」の表記がない場合が多い。また、ドメーヌよりも多く生産できるため、既にドメーヌで一定の人気を得ている生産者の中には、メゾンも立ち上げて生産するといった展開も見られる。

ネゴシアンとは

「ネゴシアン」とは、フランス語で「ワイン商」を意味する。ネゴシアンは、生産者から瓶詰めされたワインを仕入れて流通させたり、仕入れたワインをブレンドして販売したりする。ぶどうやぶどう果汁を仕入れて自ら醸造し、自社ブランドとして販売する場合もある。これらのワインのことを、「ネゴシアンもの」と呼称することがある。

ネゴシアンものは比較的生産量が多いため、ドメーヌものよりも手頃な価格で提供される場合が多い。

エステートとは

アメリカやオーストラリアなどの英語圏で見られる名称に、エステートがある。

「地所」「財産」などの意味があるこの単語を冠する生産者は、大抵の場合、広大な敷地を所有する。ぶどうの栽培からワインづくり・瓶詰めまでを、一貫して手掛けている。

また、ワイナリー名ではなく、「エステート・〇〇」のようにワイン名に追加されているような場合は、ドメーヌのように「自己所有の畑で採れたぶどうでつくったワイン」という意味になる。

ドイツ、スペイン、イタリアでワイナリーに当たる言葉は?

フランスに勝るとも劣らないワイン生産国のイタリアや、それらに次ぐ生産国として有名なドイツ、スペイン。これらの国々でも、ワイナリーと似た名称が使われている。代表的なものを紹介しよう。

ドイツ:ワイングート

ワインのボトルのラベルに「Weingut 〇〇」と書かれている箇所があれば、それが生産者名を指す。日本語読みすれば「ワイングート」だが、よりドイツ語の発音に近づけようと思ったら「ヴァイングート」のほうが近い。

スペイン:ヴィーニャ、ボデガス

スペインやスペイン語圏のチリ、アルゼンチンでよく使われるのが、「ヴィーニャ」や「ボデガス」だ。

よく見られるのがヴィーニャで、意味は「ぶどう園」。ボデガスは「ボデガ」とも言われ、「醸造所」を意味する。スペインではポピュラーな名称だ。

このほか、「農園」の意味がある「フィンカ」という名称も使われている。

イタリア:テヌータ、ヴィニエティ、ポッジョ

ワイン生産大国のイタリアでは、世界最多ではないかと思われるほど、ワイナリーに相当する名称が豊富だ。その中でも、よく使われているのが、「テヌータ」「ヴィニエティ」「ポッジョ」の3つとなる。

テヌータは自己所有の畑を持つ生産者に使われる名称で、ドメーヌに近い。意味は、「土地」「農場」。ヴィニエティも、テヌータとほぼ同じ意味合いで使われる。意味は、「ぶどう園」。「小山」「丘」を意味するポッジョは、ワイナリーの立地に由来して使用されることが多い。

ワイナリー関連の専門用語、こんな言葉も覚えよう

ここまで、世界各国のワイナリーに相当する名称を解説した。さらにワイナリーへの理解を深めるためには、ワイナリー関連の用語も覚えておくと効果的だ。よく使われる専門用語を紹介しよう。

ヴィンヤード

「ヴィンヤード」は、日本語で「ぶどう園」を指す英語だ。フランス語では「ヴィニョーブル」「ヴィグノーブル」などと呼ばれる。

また、「シングルヴィンヤード」という用語もある。意味は、ある1つの区画、もしくは畑から採れたぶどうのみを用いて醸造したワインのことだ。

ワインカーヴ、ワインセラー、ワインクーラーの違い

ワインを保存しておく冷蔵庫や部屋、貯蔵庫などを総称して「ワインセラー」と呼ぶことは知っている人も多いだろう。ただ、「ワインカーヴ」や「ワインクーラー」といった名称が、ワインセラーと何が異なるのかは分からないという人もいるかもしれない。

まず、ワインカーヴだが、フランス語か英語かの違いだけで、ワインセラーとほとんど同じ意味である。ただ、ワインカーヴのほうが、天然の洞窟や地下室などの環境で保存するといった意味合いが強い。

次に、ワインクーラーとワインセラーの違いだ。ワインセラーは、温度管理が可能なものを指す。一方で、ワインクーラーは、冷やす機能しかない。また、ワインセラーは長期保存、熟成させて飲みたい人向けだが、ワインクーラーは短期保存、すぐに冷やせてパーティや食事の場などでワインを楽しみつつ保冷できる。

ワイナリー以外にも、各国の文化的、地理的事情や歴史などで、その名称は多種多様に使われているということを解説してきた。

基本的には、ワイナリー以外の名称であっても、ひとまずワイナリーと同様のものという理解でも間違いではない。ただし、ワインの特徴を示している名称もあるので、覚えておけば購入や試飲の際により理解を深めながら楽しめる。まずは、自分の好きな国の名称から覚えていくとよいだろう。

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関西大学卒 専業ライターを夢見て日々執筆する複業ライター。酒と肉と旅行と昼寝が好き。