コラム

ロマネ・コンティの“弟分”、ブルゴーニュ地方の特級畑「ラ・ターシュ」

フランス・ブルゴーニュ地方を代表するワイン「ロマネ・コンティ」に次ぐ取引価格で、年によってはロマネ・コンティを超える評価を受けることもある「ラ・ターシュ(La Tache)」。今回は、ワイン愛好家垂涎(すいぜん)のラ・ターシュについてまとめた。

DRCのモノポール、ラ・ターシュ

ラ・ターシュは、ブルゴーニュ地方に位置するヴォーヌ・ロマネ村の特級畑(グラン・クリュ)だ。

ロマネ・コンティに次ぐグラン・クリュ

ヴォーヌ・ロマネ村は、赤ワインで有名なコート・ド・ニュイ地区にある。世界的に有名なロマネ・コンティを筆頭に、「ラ・グランド・リュ」「リシュブール」「ラ・ロマネ」「ロマネ・サン・ヴィヴァン」「エシェゾー」「グラン・エシェゾー」、そしてラ・ターシュと、8つのグラン・クリュを有している。

その中でもラ・ターシュは、世界最高峰と称されるロマネ・コンティに次ぐ最高の畑と評される。所有者は、ロマネ・コンティと同じく、ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ(DRC)。同社のモノポール(単独所有)となっている。

もともとは1.43haしかない小さな区画だったが、DRCの申し出により、1933年に隣接するレ・ゴーディショのクリマ(畑)の一部を併合したことで、現在の6.062haになった。

つくられているのはピノ・ノワールの赤ワインのみで、年間約2万本生産している。

ラ・ターシュの語源は諸説あるが、一説では「労役」「請負」(英語ではtask)を意味する「la tache」から来ているとも言われ、作業効率化のために区画面積によって賃金が支払われていたことなどが由来とされている。

ヴィンテージに左右されない安定した品質

ラ・ターシュは、ロマネ・コンティの南に位置し、標高250~300mのなだらかな斜面に縦型に広がっている。

谷間の風の影響を受けにくいため比較的暖かく、水はけのよい土地で、主に上部・中部・下部と3つのエリアに分かれており、それぞれに土壌が異なる。最上部はプレモー石灰岩、中部は頁岩状石灰岩、下部は貝殻堆積泥岩になっている。

上部~下部まで高低差は約50m。土壌以外にも、気温などの条件がそれぞれ異なり、上部でできるぶどうは濃厚さが特徴だが、下部でできるものは繊細など、栽培される場所によって違う特色のぶどうが収穫される。

ラ・ターシュの特徴は、これら3つの異なる土壌でできたぶどうをブレンドすること。栽培されているのはピノ・ノワールのみだが、使う品種は1種類でも、さまざまなテロワールの個性が混ざり合うことで、ワインに複雑なアロマや深い味わいが出る。
 
また、一般的にワインは、ぶどうの収穫年であるヴィンテージによって出来の良し悪しが左右されるが、ラ・ターシュは醸造家の巧みなブレンドにより、毎年、比較的安定した品質のワインが出来上がる。

ラ・ターシュは、ロマネ・コンティ同様、農薬や化学肥料を使用しないビオディナミ農法を採用しており、馬を使った耕作や天体の動きに合わせた農作業、完熟後の手摘み収穫など、ぶどうの生命力を尊重した丁寧なぶどうづくりを行っている。

さらに、高樹齢であること、1本のワインに3本のぶどうの樹が使われるほど低収量であることなどにより、最高品質のものが出来上がるのだ。

ラ・ターシュの味わいや評価は?

安定して高い品質のワインを生み出す、ラ・ターシュ。果実の凝縮された濃厚な味わいは、“ロマネ・コンティのわんぱくな弟”とも評されるという。

パワフルながらエレガントな味わい

ラ・ターシュは、水分が少なく、エキスが濃縮されたぶどうを使い、濃く暗いルビー色を特徴とする。また、さまざまな土壌のものをブレンドすることによって、パワフルな特性を持つ。

チェリーやベリー系などの赤果実のアロマに甘草などのハーブ・スパイス系が香り、タンニンは滑らかでシルキーな味わい。フルボディでパワフルな中にもエレガントさを併せ持ち、“クジャクの尾”とも評されるほど余韻が長く続く。

また、長期熟成を経るとトリュフや培養土の熟成香を増し、若い頃の力強さとは異なる円熟味と奥深さを発揮するのも特徴だ。
 
前述の通りヴィンテージによって出来が左右されにくく、品質は高いまま安定しているが、特に優れた年のものはロマネ・コンティをもしのぐ出来と言われている。そのため、ワイン愛好家なら一度は味わってみたい、魅惑の逸品として注目を集めている。

上がり続けるラ・ターシュの人気と価格

ラ・ターシュは、ロマネ・コンティに次ぐほどの高値で取引される。

近年、その評価とともに価格も上昇し続けている。ヴィンテージによりさまざまだが、一般的には50万円台程度で、評価が高いものだと70~80万円を超える。

1990年、1999年、2002年、2003年、2005年、2009年、2015年などが当たり年となっており、特に1999年はワイン専門誌『ワイン・アドヴォケイト(Wine Advocate)』で100点の評価を受け、100万円を超える高価格で取り引きされた。

また、1990年のものはブルゴーニュ地方のぶどうが素晴らしい出来だったこともあり、ワイン批評家がこぞって高得点をつけた伝説的な年だ。完璧なバランスで30年もの熟成に耐え得る至高のクオリティと評され、この時も流通価格が100万円を超えた。

ロマネ・コンティよりは安いといっても、比較的リーズナブルなものでも40万円台だったりと、一般的になかなか手を出しにくく、高嶺の存在であることは間違いないようだ。

フランス・ブルゴーニュの至宝、ロマネ・コンティと同じDRCが独占所有するグラン・クリュのラ・ターシュ。“兄”のロマネ・コンティのほうが有名で価格は高いが、優れたヴィンテージのラ・ターシュはロマネ・コンティをしのぐ出来のものもあるため、ブルゴーニュワインの最高峰として、ワイン愛好家に一目置かれる存在となっている。

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About the author /  大江 有起
大江 有起

コピーライター、雑誌の編集者などを色々経てフリーライターに。文章を書くことと、赤玉スイートワインや貴腐ワインのような甘いワインが好きです。 ワインバザールさんにてワインに興味を持ち、一般社団法人日本ソムリエ協会ワイン検定シルバー取得しました