コラム

“鳥と共生するワイナリー”を目指して ――サントリー ワイン事業サステナビリティ活動方針説明会①

   

サントリー ワインカンパニーは2023年3月9日、「ワイン事業サステナビリティ活動方針説明会」を開催した。

説明会では、同社取締役常務執行役員でワインカンパニー社長の吉雄敬子氏とイタリア CAVIRO(カヴィロ)代表のカルロ・ダルモンテ氏が登壇し、両社が実施しているサステナブルな取り組みや今後の展望について話があった。また、両社はサステナビリティ活動における包括連携協定を締結した。

サントリー 取締役常務執行役員 ワインカンパニー社長の吉雄敬子氏

カヴィロ代表のカルロ・ダルモンテ氏

第1回の記事では、サントリー ワインカンパニーのサステナビリティ活動、中でもサントリー 登美の丘ワイナリーでの取り組みについて紹介する。

サントリー ワインカンパニー2022年の実績

サントリー ワインカンパニー国内単体、岩の原葡萄園、ファインズを合わせた2022年の国内売上高は434億円で、2021年比110%と前年を上回った。

吉雄氏によると、これは過去最高の売り上げだという。好調の理由として、主力ブランドの「酸化防止剤無添加のおいしいワイン。」が数量ベースで前年比103%と引き続き好調だったことに加え、缶入りノンアルコールワインや、日本ワインの新ブランド「SUNTORY FROM FARM」の立ち上げなど新しい挑戦が成果を生んだと見ている。

中長期事業方針

サントリー ワインカンパニーでは引き続き、缶入りワインやノンアルコールワインなどワインを新しい感覚で楽しめる商品に積極的に取り組み、よりワインを気軽に飲んでもらえるよう需要を創造していく。同時に、本来のワインが持つ魅力を掘り下げて、世界のワインの物語や歴史など、ワイン文化を伝えることにも注力する。

この2点を踏まえつつ、同社は2023年からサステナビリティ活動をさらに強化する。自然の恵みの結晶であるワインを100年先もつくり続けるため、気候変動の課題や生物多様性に富んだ豊かな環境の維持に取り組む。また、商品プロモーションを通じて消費者にもサステナビリティを体感、共感してもらえるよう価値訴求を図る。2023年の国内合計売上高として、2022年比101%の439億円を目標にしている。

サントリー ワインカンパニーのサステナビリティ宣言

同社が2022年9月に発売した、日本ワインの新ブランド「SUNTORY FROM FARM」。「FROM FARM」には、「すべては畑から」=ワインはつくり手が土地の気候風土と向き合い、技術と愛情でぶどう畑からつくり上げるもの、というメッセージが込められている。

日本ワイン新ブランド「SUNTORY FROM FARM」新発売(2022年6月8日 ニュースリリース サントリーより)

ぶどう畑からおいしいワインが生まれる、これを100年先も持続するには、畑や畑を取り巻く環境を良い状態で維持することが不可欠だ。同社はものづくりであるワインづくりを核にして、「気候変動への対応」「地域社会との共生」「自然環境、土壌保全」の3点から、サステナビリティ活動を推進していく。

気候変動への対応

ぶどうの成熟期や収穫期を遅らせることで、温暖化の中でもぶどうの品質の維持、向上を図る副梢栽培の取り組みを進めている。また、適地適作という考えのもと、新品種の開発にも挑戦している。

地域社会との共生

日本の固有品種である甲州ぶどうの農地拡大や遊休農地の活用、ぶどう農家への技術支援、農業と福祉の連携による雇用創出に取り組んでいる。

自然環境、土壌保全

同社では、登美の丘ワイナリーがある山梨県が推進する「やまなし4パーミルイニシアティブ」に参加している。そのほか、草生栽培や有機栽培にも力を入れている。

「4パーミルイニシアティブ」は、土壌の炭素量を毎年1000分の4(4‰)ずつ増やして、大気中のCO₂の増加を抑えるという、世界的な地球温暖化対策の1つだ。山梨県は、果樹栽培を通じてCO₂削減を目指す、独自の枠組み「やまなし4パーミル・イニシアチブ」を展開している。

多様な生物が共生する、サントリー 登美の丘ワイナリー

山梨県甲斐市にある、登美の丘ワイナリーの敷地面積は約150ha。その広大な敷地には多様な生物が生息しており、国鳥のキジをはじめ、国蝶オオムラサキや猛禽類のサシバなど、絶滅危惧種のカテゴリーに分類される生物も見られるという(オオムラサキは準絶滅危惧種、サシバは絶滅危惧種Ⅱ類。「環境省レッドリスト2020」より)。

51種の鳥類を確認

同社は2022年の4~6月に、日本鳥類保護連盟の協力のもと、登美の丘ワイナリー内の鳥類について、飛来、生育状況を調査した。その結果、先に紹介したキジやサシバのほか、ノスリやヤマガラ、ホオジロなど、全体で8目25科51種の鳥類が確認された。

森の生態系ピラミッドにおいて、高次消費者に該当する猛禽類は、その下に属する昆虫や小動物(一次、二次消費者)、樹々や草花(生産者)、土壌の微生物、水中生物といった多様な生物相に支えられている。つまり、同ワイナリー内に多様な鳥類が生息しているということは、そこに健全な生態系が存在していることを表している。

サントリーの愛鳥活動

サントリーグループは1973年から愛鳥に関する啓発活動を行っており、2023年で50周年を迎える。また、1989年には野鳥保護団体を支援する「世界愛鳥基金」を創設している。

これからの100年も畑からのワインづくりを続けるためには、登美の丘ワイナリーの豊かな自然環境を維持し続ける必要がある。鳥類を含め、多様な生物が生息している登美の丘ワイナリーの豊かな自然環境を次世代に引き継ぐべく、サントリー ワインカンパニーは“鳥と共生するワイナリー”をスローガンに掲げ、サステナビリティ活動を強化していく。

“鳥と共生するワイナリー”に向けた取り組み

登美の丘ワイナリーの場内には、現在、鳥の水飲み場や巣箱が約20カ所設置されており、今後、これらの数をさらに増やすという。他にも、巣箱内の映像を一般公開するイベントやツアーを通じて、消費者に同社の取り組みを発信するなど、鳥類保護のための寄付を集める仕組みをつくるといった計画が進行中だ(巣箱内の映像公開は実施済み)。

次回の記事では、サステナビリティ活動においてサントリー ワインカンパニーと志を同じくする、イタリア・カヴィロの取り組みを紹介する。

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