コラム

きれいな酸と果実味が両立する、長野育ちの甲州――サントリー日本ワイン試飲会②

サントリーは2024年9月4日、同社田町オフィス11階のカフェ「HARBOR」(東京都港区)にて、新商品を含む日本ワインの試飲会を開催した。

試飲会では、同社ワイン本部日本ワイン部長の宮下弘至氏、ワイン本部シニアスペシャリストの柳原亮氏が登壇し、産地の異なる甲州ワインの解説とともに、これまでの甲州栽培の取り組みや挑戦について話があった。

第2回となる本記事では、甲州の魅力を長野県立科で引き出すための同社の挑戦と、立科生まれの甲州ワイン「SUNTORY FROM FARM ワインのみらい 立科町 甲州 冷涼地育ち 2023」を紹介する。

甲州ぶどうを冷涼な立科で栽培

「ワインのみらい」は、日本ワインの新潮流を生み出すという、つくり手の気概が込められた、実験的なワインのシリーズだ。一部が一般販売されているものの、基本的には登美の丘ワイナリーや同社オンラインショップで数量限定販売されている。

「ワインのみらい」シリーズ

甲州ぶどうは、かんきつ系の香りが魅力だ。この良さを生かしながらもっと凝縮感を高められないか? 醸造や酵母で改良することも可能だが、ぶどうそのものにアプローチしてみるのはどうだろうか。こうした思いのもと、2016年、同社の長野県立科町での甲州栽培が始まった。

高い糖度と酸を両立

立科町は冷涼で、特に冬は寒さが厳しい地域だという。温暖な山梨とは異なるテロワールが、甲州ぶどうにどう反映されるかがカギだった。「実は失敗しました」と柳原氏は語った。初年度の2016年に植えた苗は全て枯れてしまったという。翌年の苗がなんとか育ち、立科の畑に根付いた。

一般的なぶどうは熟して糖度が上がると酸が下がるが、冷涼な気候で育った立科のぶどうは、糖度が上がってもしっかりとした酸の骨格が感じられるそうだ。

新たな産地・立科で高品質な甲州が育ち、その甲州を使ったワインは国内外で高く評価された。例えば「ワインのみらい 立科町 甲州 冷涼地育ち2021」は、「デキャンター・ワールド・ワイン・アワード(Decanter World Wine Awards:DWWA) 2023」で金賞、「インターナショナル・ワイン・チャレンジ(International Wine Challenge:IWC) 2023」で銀賞、「サクラアワード(“SAKURA” Japan Women’s Wine Awards) 2023」で金賞と特別賞の天ぷらに合うワイン賞を受賞している。

SUNTORY FROM FARM ワインのみらい 立科町 甲州 冷涼地育ち 2023

2023ヴィンテージは、2024年9月10日に発売された。白い花やレモンの香りに白桃やメロン、ハーブが感じられ、しっかりした酸と豊かな果実味を両立させている。

◆SUNTORY FROM FARM ワインのみらい 立科町 甲州 冷涼地育ち 2023
色、タイプ:白、辛口
産地:長野県(立科町)
ぶどう品種:甲州100%
参考価格:4950円(税込)

次回の記事では、標高差や気温差から多彩なぶどうを育む山梨県南アルプス市の広大なぶどう畑と、こちらも「ワインのみらい」シリーズに属する「SUNTORY FROM FARM ワインのみらい 南アルプス 甲州 風立つ畑育ち 2023」を紹介する。


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