コラム

シャブリワイン委員会副会長がセレクト! 「シャルドネのみ」なのにこんなに違うシャブリの多様性が分かる6本

フランス・ブルゴーニュ地方のシャブリ地区でつくられる白ワイン「シャブリ」。使用するぶどう品種はシャルドネ100%なのに、「クリマ」という土地の区画ごとの特徴、ヴィンテージによる条件の違い、つくり手のぶどう栽培・醸造方法などによって、実に多彩な“シャブリ”が誕生している。

ワイン好きなら1度は足を踏み入れてみたい、奥深いシャブリの世界。シャブリの違いや多様性を理解するためには、どのようなワインを飲めばいいのだろうか。

ブルゴーニュワイン委員会(BIVB)のシャブリ委員会で副会長を務めるルイ・モロー氏が2017年11月に来日。シャブリの多様性を知るために、おすすめのワイン6本をセレクトしてくれた。

プティ・シャブリ ウィリアム・フェーブル2015

プティ・シャブリの「スッキリとしたストレートなフレッシュ感」がよく出ているのが、ウィリアム・フェーブルが手掛けたプティ・シャブリだ。グレープフルーツやレモンなどの柑橘系のアロマを感じられる。

プティ・シャブリの多くは、シャブリ地区を流れるセラン川の左岸でつくられている。ウィリアム・フェーブルのプティ・シャブリは右岸のシャルドネが使われており、一味違った味わいを持つ。

シャブリ ラ・マニファクチュール 2013

プティ・シャブリと比較して、ブリオッシュ、トースト香、バタービスケットの香りなど、さまざまな香りを感じることができる。

口に含み、舌の中央付近で味わうと、非常に生き生きとしている。レモンの皮を思い出され、非常に心地よく、余韻も長く続く。

ぶどうは農家から買い付けたものを使用している。

シャブリ アリス・エ・オリビエ・ド・ムール 2015

やや涼しい左岸の畑からつくられたシャブリ。

伝統的な製法で醸造し、天然酵母を用いる。熟成期間は12~14カ月とシャブリにしては長め。石灰、白い小石など、テロワールの特徴を強く感じられる。


ここまでに紹介したワインのうち、ウィリアム・フェーブルはフランス農業省が定めた環境保全農業の認証「HVE」の中でも最高レベルの「農法レベル3」の認定を取得。ラ・マニファクチュールは減農薬栽培(リュットレゾネ)、アリス・エ・オリビエ・ド・ムールはビオロジック農法で栽培したぶどうを使用している。


シャブリ・プルミエ・クリュ トレスメ デニ・ポミエ 2015

シャブリの中でもプルミエ・クリュ以上のものは、クリマの特徴を引き出すことが重視されている。シャブリ・プルミエ・クリュがつくられるクリマは40ほど。ごく限られた範囲の畑区画から採れたぶどうだけを使ってつくる。

トレスメ(TROESMES)はその中でも、面積が比較的広いクリマ。左岸に位置し、シャブリの中でも特に日当たりが良好。味わいはよりソフトでまろやかになっている。

シャブリ・プルミエ・クリュ ヴォリニョー ドメーヌ・ルイ・モロー 2014

ルイ・モロー氏自らが手掛けたシャブリ・プルミエ・クリュ。

このドメーヌ・ルイ・モローのプルミエ・クリュは、ヴォリニョー(VAULIGNOT)のクリマで育ったぶどうを使用。渓谷の奥にある北東向きの畑区画で、冷涼な場所で育ったぶどうになる。

味わいは非常にフレッシュで、ミネラル感があり、余韻もすっきりとしている。

シャブリ・プルミエ・クリュ ロム・モール ドメーヌ・イヴォン・エ・ローラン・ヴォコレ2014

「ロム・モール」には「死んだ人」という意味がある。はるか昔、「ここは自分の畑だ」と権利を主張し合い、争いへと発展。死者が出たという逸話から、このワインに使われたぶどうの採れる畑は「ロム・モール」と呼ばれるようになった。

このように、歴史的な背景などがあって名称が付けられたクリマもある。「名前の由来を調べていくことで、さらにクリマに興味を持てるようになるのではないか」という意図があってモロー氏が選んでくれた1本だ。


環境への配慮という面だけでも、リュットレゾネを共通の土台としつつ、HVEのレベル3まで取得するつくり手もいれば、ビオディナミを導入するつくり手もいる。

醸造にしても、時間をかけて手間暇掛けてじっくりつくる伝統的な手法を採るつくり手が多いものの、発酵期間の長さや酵母の種類、使用する樽・タンクなどはつくり手によって違う。

こうした違いによって、同じ「シャブリ」であっても多様性は生まれてくるのだ。

「シャブリは、つくり手それぞれがこだわって、同じ『シャブリ』という括りの中でも、畑区画をより細かく選定して、自分ならではのつくり方をしています。つくり手たちの力量によって、どんどん豊かで多様になってきているのです」(モロー氏)

「(ワイン新興国のチリやオーストラリアなどが『ニューワールド』と呼ばれるのに対して、)フランスは『オールドワールド』と呼ばれていますが、実は、オールドワールドの方が常に改善していて、最先端を行っているという評価もあります。
シャブリは、その中でも特にモダンで、最先端を行っています。常に『改善していくにはどうしたらいいだろうか』と探り、実践してきているのです」(同)

シャブリの現状についてこのように語ってくれたモロー氏。シャブリの多様性に少しでも興味を持っていただけたのなら、モロー氏セレクトのシャブリ6本を参考に、シャブリを飲み比べて、細かな違いを楽しんでみてほしい。

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