メルシャンは2018年6月、「日本ワイン事業に関する発表会」を開催した。過去10年間で1.5倍に成長した国内ワイン市場だが、上り調子も落ち着いて“踊り場状態”に入ったと代野照幸代表取締役社長は表現した。
メルシャンはどのようにして国内ワイン市場を盛り上げていこうとしているのだろうか。同発表会で代野社長が語ったメルシャンの今後の戦略を紹介していこう。
起爆剤となるのは日本ワイン
今までチリワインを中心に市場を拡大してきた国内ワイン市場だが、新たな起爆剤の1つとなる可能性が高いのは、日本産ぶどう100%を使用した日本ワインだという。
国内ワイン市場における日本ワインのシェアは約5%。規模は小さいが、2015年と比べて1ポイント以上拡大しており、出荷量も増加し、確実に成長している。
2018年1~5月の累計で、メルシャンの日本ワインは前年比+10%、中心ブランドであるシャトー・メルシャンは前年比+13%と好調だ。
2027年までに、販売目標を現在の3.9万ケース(1ケースは720ml×12本)から、7割増となる6.7万ケースへと拡大するという。あわせて自社管理農地を約40haから約76haへと広げて、原料となる国産ぶどうの安定供給を目指す考えだ。
来場客数が+14%増の12万人となった勝沼ワイナリーに加えて、2018年9月には桔梗ヶ原ワイナリー、2019年秋には椀子ワイナリーがオープンし、3つのワイナリー体制となる。新ワイナリーのファーストヴィンテージは、順調にいけば東京オリンピックまでに発売となるそうだ。
海外への情報発信の拠点を香港に
メルシャンが、20~30年後に屋台骨となる事業へと成長させようと注力しているのが「シャトー・メルシャン」ブランドだ。
海外で高い評価を獲得することを重要視しており、海外コンクールへ出品するほか、勝沼ワイナリーで海外からのお客様へのおもてなしを充実させる計画だ。
海外向けの情報発信の拠点として、メルシャンが選んだのは「香港」。北米やシンガポールにも輸出しているメルシャンだが、香港ではすでに三ツ星レストランでシャトー・メルシャンが採用されて好評だ。ザ・ペニシュラ香港でも、甲州を中心に取り扱いされている。
また、10月にアメリカ・ニューヨークで開催される世界最大級のワインイベント「ニューヨーク・ワイン・エクスペリエンス」に選抜招待されるのは、今年で16回目となる。これはアジアのワイナリーとして、最多の招待数になるという。
低価格帯のワインへの需要については、「お客様は低価格化競争に飽きており、競争しても需要は伸びない」と結論付けた。「『より高品質のワインを楽しみたい』というニーズに対応することで、ワインを盛り上げていきたい」と代野社長は語っている。