コンビニやスーパーに足を運ぶと、日本を含む各国の安くておいしいワインが棚に並び、手軽にワインを選べるようになった。ワインが身近な存在になったことを日常の中で感じられるようになったが、実際、この10年間でどのような変化があったのだろうか。
メルシャンが2020年7月に発表した「ワイン参考資料」を基に、2009年~2019年の日本のワイン市場の動きを見てみよう。
10年間で出荷数量が1.5倍に
まず、資料から2009年と2019年のワイン出荷数量を以下にピックアップした。なお、国内製造ワインには、国産ぶどうのみを原料として日本国内で醸造された、いわゆる「日本ワイン」だけでなく、濃縮還元などの海外原料を使用して国内で醸造されたワインが含まれる。
《2009年》
国内製造ワイン 8万2533kl
輸入ワイン 16万9186kl
合計 25万1719kl
《2019年》
国内製造ワイン 11万9597kl
輸入ワイン 25万7833kl
合計 37万7430kl
10年間で、出荷数量は1.5倍に増加しており、日本のワイン市場が確実に成長していることが分かる。
特に目を見張るのが、ワイン新興国のチリと輸入スパークリングワインの伸び率だ。チリからの輸入数量は2009年~2019年の10年間で2.7倍となり、2015年には長年第1位だったフランスを抜いてトップに輝いている。
ワイン伝統国からの輸入数量は、フランスは10年間ほぼ横ばいだが、イタリアはこの10年間で1.5倍、スペインは1.6倍、ポルトガルに至っては2.4倍に増えている。
さらに、スパークリングワインはリーズナブルなものから高価格帯の品まで人気があり、2019年の輸入数量は2009年の2倍以上となった。リーマンショックによる景気低迷からの回復や2019年2月に発効された日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)による関税即時撤廃が背景にあると考えられている。
ターニングポイントは2012年
2009年~2019年の10年間で、ターニングポイントといえるのが、初めて出荷数量が30klを超え、第7次ワインブームが始まったとされる2012年だ。
《2012年の出荷数量》
国内製造ワイン 9万9279kl
輸入ワイン 24万3999kl(前年比123.8%)
合計 34万3278kl
第7次ワインブームのきっかけとなったのは、低価格の輸入ワインだ。2012年の輸入ワインの出荷数量は、前年比(2011年、以下同)123.8%と大きく伸びている。輸入数量(スティルワイン)を見てみると、ワイン伝統国であるフランスは前年比119.0%、イタリアは123.0%、スペインは155.9%と数字を伸ばした。
チリを中心としたワイン新興国を見てみると、チリが前年比130.6%、アルゼンチンは129.8%、南アフリカは149.6%、ニュージーランドは142.8%、オーストラリアは113.2%となっている。
チリとニュージーランドは2012年以降も好調で、スティルワインの輸入数量を伸ばしている。それ以外のワイン新興国は、2012年前後に一度輸入数量が伸びたものの、その後落ち着きを見せ、2019年の数量は10年前の2009年よりも若干数字を落としている。
一人当たりのワイン消費量も変化
国税庁の発表資料によると、日本の人口一人当たりの年間ワイン消費量は、2008年の1.80Lから2018年には2.85Lとなり、約1.6倍に増えている。一方で、一人当たりの年間消費量が最も多いビールは、2008年の23.75Lから2018年は19.34Lと10年間で大きく減少。発泡酒(10.40L→5.03L)、清酒(5.02L→3.96L)も大きく減少しており、一人当たりの消費量の変化からも日本のワイン市場の成長が実感できる。
また、国別に見ると、O.I.V.(国際ワイン・ブドウ機構)の統計では、2019年の日本の人口一人当たりの年間ワイン消費量は3.2Lとなっている。
1位のポルトガル(56.4L)の17分の1以下だが、まだ日本のワイン市場は伸びしろがあるともいえる。次の10年間で市場がどう変化していくのか楽しみだ。
<関連リンク>
メルシャン「ワイン参考資料2020」