コラム

世界が注目する甲州ワイン、その特徴や味わいは?

「甲州ワイン」と聞いて、ピンとくる人はいるだろうか。

甲州ワインは、1000年以上の歴史があるとされる日本固有品種のぶどう「甲州」を使って、日本でつくり上げたワインだ。世界的なワインコンクールで高評価を得るなど、近年、世界が注目するワインとなりつつある。

今回は日本ワインを語る上で外せない、甲州ワインについて紹介する。

甲州ワインとは

甲州ワインは、日本固有品種のぶどうである甲州からつくられるワインだ。

甲州は、主に山梨県の甲府盆地で栽培されている。白ぶどう品種だが、果皮は赤みを帯びている。そのため、その特徴を利用してワインに色を付けることもある。

甲州は日本固有品種だが、日本の地に根付く前の過程は記録がなく、そのルーツは長い間不明だった。しかし、近年のDNA解析の技術の発展とともに、その実態が少しずつ明らかになってきている。

DNA解析の結果から甲州は、ワイン用のぶどうとして使用されているヨーロッパ系の「ヴィティス・ヴィニフィラ」に属することが分かった。これは、ワインをたしなんだことがある人なら耳にしたことがあるであろう、カベルネ・ソーヴィニヨンやシャルドネなどと同じ系統だ。

2013年にさらに詳しくDNA解析をした結果、甲州のDNAには、中国の野生種「ヴィティス・ダヴィーデ」のDNAが少し含まれていることが判明。カスピ海周辺で誕生したヴィニフィラが中国に渡り、中国の野生種との交配を経て日本に渡ったという説が有力になった。

このように、日本に根付いた甲州の栽培には、1000年以上の歴史があるとされる。ところが、実際に甲州を使用して甲州ワインがつくられたのは、明治時代と言われている。

その後、ぶどう栽培者やワイン生産者が努力を続けた結果、甲州はワイン醸造用のぶどうとして世界に認められ、2010年にワインの国際的審査機関であるOIV(国際ブドウ・ワイン機構)に品種登録された。これによって、EU内でもワインラベルに「Koshu(甲州)」と表記して販売できるようになった。

甲州ワインの特徴

甲州ワインは、かんきつ系のフレッシュな香りを特徴とする。また、程よい酸味と苦味を持ち、すっきりとした味わいのワインと言われる。

原料となる甲州は、香りがピークを迎える時期と、糖度がピークを迎える時期とが異なる。糖度が上がりにくい甲州の糖度のピークに合わせて収穫すると、香りが弱い状態で収穫することとなる。そのため、甲州ワインは長い間、「香りの乏しいワイン」だと評価されてきた。しかし近年、発酵方法などを工夫し、甲州の香りを十分に楽しめるワインがつくられるようになった。

甲州ワインの代表的な4つの製法

現在ではさまざまな甲州ワインがつくられているが、生産者や醸造方法によってその味わいは大きく変わる。その中でも代表的な4つの製法について、解説していく。

シュール・リー

辛口の甲州ワインを醸造する際に、よく用いられる製法。「シュール・リー」とは、フランス語で「澱(おり)の上」を意味する。通常は発酵後に樽にたまった澱を取り除くが、シュール・リーの場合、発酵後もそのまま澱を残し、一定期間熟成させる。そうすることで、熟成期間中に澱が分解されてアミノ酸などが生成され、ワインに深みや幅が生まれる。

樽熟成

小樽で熟成させる製法。樽で熟成させることで、樽から移る燻香やバニラ香を楽しめる、ミディアムライトボディのワインになる。樽で発酵させたものをそのまま熟成させる方法のほか、ステンレスタンクで発酵させたものを樽に移して熟成させる方法などもある。

スキンコンタクト

果皮と果汁を長時間接触させて、色素成分やポリフェノールなどを果汁に抽出する製法。スキンコンタクトは英語の表現で、フランス語では「マセラシオン・ペリキュレール」と言う。白ぶどう品種にしては果皮が厚く、色素が濃い甲州の特性を利用して、ワインにうっすらと色がついたり、ちょっとした苦みや引き締まった骨格を感じられたりと、独特の味わいのあるワインになる。

スパークリングワイン

すっきりした味わいの甲州ワインに発泡性をプラスし、さらに飲みやすいワインに仕上げる。タンク内二次発酵だけでなく、瓶内二次発酵の本格的なスパークリングワインもつくられていて、世界で高い評価を得ている。

甲州ワインと合う料理

日本固有品種のぶどうである甲州からつくられた甲州ワインには、やはり和食が合うようだ。甲州ワインは、フレッシュなかんきつ系の香りと程よい酸と苦みがあり、主張やくせが少ない繊細なワイン。料理の邪魔をしないため、だしの香りや味わいを楽しむ煮物や、素材そのものを楽しむ刺身など、ワインとの相性があまりよくないとされる料理とも良く合う。

また、くせが少ないため、フレンチやイタリアンなどとの相性も良い。甲州ワインは、どんな料理とも相いれるワインと言えるだろう。

おすすめの甲州ワイン8選

グリド甲州/中央葡萄酒

中央葡萄酒は、1923年に勝沼で創業したワイナリー。甲州ワインの素晴らしさを世界に示し広めたワイナリーの代表格とも言える。ステンレスタンクで発酵させた「グリド甲州」は、雑味がなく甲州の味そのものを楽しめるワイン。辛口。

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登美の丘 甲州/サントリー

自社農園産のぶどうを100%使用。リンゴや洋ナシ、清涼感のあるハーブの香りを特徴とする。程よい酸味に加え、甲州特有の渋みがアクセントになって、引き締まった味わいを楽しめる。辛口。

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ルバイヤート甲州 シュール・リー/丸藤葡萄酒工業

甲州の味わいを引き出した、バランスの良いワイン。シュール・リー製法により、辛口で爽やかな味わいに仕上がっている。辛口。なお、同シリーズには、小樽熟成させた「甲州樽貯蔵」もある。

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樽熟甲州/イケダワイナリー

ステンレスタンクで発酵させた後、古い樽で熟成。甲州の爽やかな香りと、樽熟成で生み出された柔らかく奥行きのある味わいを楽しめる。中辛口。

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酵母の泡 甲州 ブリュット/マンズワイン

キューヴ・クローズ方式(シャルマ方式)でつくった甲州スパークリングワイン。甲州特有の上品な香りと程よい酸味、心地よい口当たりを特徴とする。繊細な泡立ちが長く続き、淡い黄金色の色合いが上品な印象を与える。辛口。

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シャンモリ 甲州遅摘み完熟甘口/盛田甲州ワイナリー

収穫を2週間ほど遅らせ、糖度やミネラル分を高めた完熟の甲州を使用。通常の甲州よりも、厚みのある味わいに仕上がっている。甘口。
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ラ・フロレット ハナミズキ・ブラン/奥野田葡萄酒

スキンコンタクトを用いてつくった甲州ワイン。豊かな香りと、爽やかながら奥行きのある味わいが特徴的。オレンジがかった色をしている。やや辛口。

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フリージングワイン 白/蒼龍葡萄酒

甲州の果汁を凍らせて水分を除く「凍結濃縮」を行い、32度に糖度を高めた果汁を発酵に使用。豊かな香りとコクのあるワインに仕上がっている。果汁の甘みと酸味のバランスがとれたデザートワイン。極甘口。

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日本固有品種の甲州からつくられる甲州ワインは、まさに“純日本産のワイン”と言える。甲州がOIVに品種登録されたことで、海外でもラベルに「Koshu(甲州)」と表示できるようになったり、国際的なワインコンクールでさまざまな賞を受賞するなど、世界が注目するワインの1つになってきている甲州ワイン。その純日本産の味わいを、ぜひ楽しんでみてはいかがだろうか。

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