コラム

“マールボロのカギを握るつくり手”と評される、セント・クレア・ファミリー・エステート ~今知っておきたいニュージーランドのワイナリー

   

ワインの新興国の中でも、特に新しい産地であるニュージーランド。栽培や醸造に先進的な技術を取り入れたワインづくりで、ワインファンからの信頼や人気を集めている。

今回はそんなニュージーランドを代表するワイナリーの中から、“マールボロのカギを握るつくり手”と評される、セント・クレア・ファミリー・エステート(Saint Clair Family Estate)を紹介する。

マールボロのパイオニア的存在

ぶどうの質にこだわった高品質なワインを、リーズナブルな価格で提供するセント・クレア・ファミリー・エステート。1978年から南島のマールボロでぶどう栽培を手掛けていたニールとジョディのイボットソン夫妻によって、1994年に創業されたワイナリーだ。もともとは地元のワイナリーにぶどうを販売していたが、自身の手掛けるぶどうの品質の高さを世間に知ってもらうためにワイナリーを設立したという。

イボットソン夫妻の自信は、初ヴィンテージから数々の賞を受賞したことで裏付けられた。その高品質なワインづくりは、ワイン専門誌『ワイン・アドヴォケイト(Wine Advocate)』にて“マールボロのカギを握るつくり手”と評され、急成長することとなる。2010年と2011年には、2年連続で『ワインエステート・マガジン(Winestate Magazine)』により、ベスト・ニュージーランド・ワイン・カンパニー・オブ・ザ・イヤーに選出。ニュージーランドを代表するワイナリーの1つとなった現在でも、家族経営を貫いている。

息子のトニー氏は、初ヴィンテージからラベルのデザインを手掛け、娘のサリーナ氏とジュリー氏は、アデレード大学で学んだ後、セールスやマーケティング部門で経営を支えている。

創業時からワインづくりを支える天才の存在

セント・クレア・ファミリー・エステートに創業時から携わっているのが、ニュージーランドで最も有名な醸造家の1人であるマット・トムソン氏。マスター・オブ・ワイン(Master of Wine:MW)のボブ・キャンベル氏が、「ニュージーランド、そしておそらくは世界で最も優れたソーヴィニヨン・ブランのつくり手だ」と語る天才だ。

イボットソン夫妻のぶどう栽培、そして天才醸造家が手掛けるワインは、初ヴィンテージから現在に至るまで、数々の賞を受賞している。

ソーヴィニヨン・ブランだけではなく、ピノ・ノワールの評価も高い。同じ年に白と赤(ソーヴィニヨン・ブランとピノ・ノワール)で主要な国際トロフィーを受賞した、ニュージーランドで初めてのワイナリーとなった。

また、トムソン氏とセント・クレア・ファミリー・エステートの創業者であるニールが手掛けるワイナリーには、デルタ・ワイン・カンパニーもある。

セント・クレア・ファミリー・エステートのヴィンヤード

セント・クレア・ファミリー・エステートが所有するヴィンヤードは、ニュージーランドの2大産地である南島のマールボロと北島のホークスベイにある。

マールボロのヴィンヤードは、ワイラウ川流域のワイラウ・バレー、太平洋側のアワテレ・バレー、そしてウレ・バレーに広がっている。ウレ・バレーは、マールボロの南部を流れるワイマ川流域にあり、石灰岩土壌の地域だ。マールボロでは、ソーヴィニヨン・ブラン、ピノ・ノワール、シャルドネ、ゲヴェルツトラミナー、メルロー、ピノ・グリ、リースリング、ピノ・ブラン、グリューナー・ヴェルトリーナー、アルバリーニョなどを手掛けている。

ホークスベイのヴィンヤードは、ギムレット・グラヴェルズ・ディストリクトにある。この地域は、スパイシーでタンニンが豊かなボリュームのある赤ワインの産地として知られている。手掛けている品種は、カベルネ・ソーヴィニヨン、マルベック、メルロー、シラー、ヴィオニエ、カベルネ・フランなど。

ホークスベイとマールボロは、いずれも冷涼な地域で、ぶどうの生育期である夏(1月)には、日中と夜の寒暖差が大きい。この寒暖差は、高品質なぶどうをつくるための重要な条件の1つでもある。

2001年から、同ワイナリーでは全てのヴィンヤードに「グレーディングシステム」を導入している。これは、毎年10点満点でぶどうの出来を評価するシステムだ。グレーディングシステムにより、現在、そして一定期間において、どのヴィンヤードの果実の質が良く、それぞれのヴィンヤードごとにどの品種が最高の品質を生み出すかを知ることができる。

また、農薬の使用は最小限に抑え、光や風通しを良くするためにキャノピー・コントロールを実施している。こうしたサステナブルな取り組みが、ぶどうの品質向上につながっている。

セント・クレア・ファミリー・エステートのワインを選ぶポイント

レストランやショップなどで、セント・クレア・ファミリー・エステートのワインを選ぶ際に知っておきたいポイントを紹介する。

複数のシリーズや品種がセットになった、お試しセットを提供しているネットショップなどもあるのでチェックしてみよう。

パイオニア・ブロックシリーズ

クオリティーにこだわり、優れた区画の良いロットのみを厳選して生産される「パイオニア・ブロック」シリーズ。生産はごく少量のみで、ピノ・ノワール、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブランなどがあり、国内外で数多くの賞を受賞している。セント・クレア・ファミリー・エステートのワインを味わうのなら、ぜひ試してもらいたいシリーズだ。

特に、同シリーズのシャルドネ(2014ヴィンテージ)は、シャルドネのみの国際品評会「シャルドネ・デュ・モンド(Chardonnay du Monde)」にて、トップ10シャルドネに選出されたこともある。

ヴィカーズ・チョイスシリーズ

「ヴィカーズ・チョイス」は、セント・クレア・ファミリー・エステートの魅力を最もリーズナブルな価格で楽しめるシリーズ。ソーヴィニヨン・ブランやシャルドネなどがあり、品種の個性が感じられるつくりとなっている。

オリジンシリーズ

セント・クレア・ファミリー・エステートのワインの中で、「パイオニア・ブロック」と「ヴィカーズ・チョイス」の中間に位置するレンジ。日本でも取り扱いが多いため、出会う確率の高いシリーズだ。ソーヴィニヨン・ブラン、ピノ・ノワール、メルローなどがある。

セント クレア “ヴィッカーズ・チョイス“ ソーヴィニヨン ブラン バブルズ マールボロ

ソーヴィニヨン・ブラン100%のスパークリング・ワイン。前述の「ヴィカーズ・チョイス」に含まれている。「サクラアワード(“SAKURA” Japan Women’s Wine Awards)2020」で、コストパフォーマンスに優れたスパークリング・ワインに贈られるBest Great Value Sparkling Wineに選出されている。

マールボロのワイラウ・バレーにある複数のヴィンヤードから、スパークリングワインに適した果実を選んで醸造。ソーヴィニヨン・ブランらしい爽快さやほろ苦いフィニッシュがあり、食事に合わせやすい1本だ。普段はワインを飲まない人にもおすすめしたい。

コルク栓ではなく、一度開けた後に再び栓ができるスクリューキャップ(ゾーク栓)を採用している。

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About the author /  鵜沢 シズカ
鵜沢 シズカ

J.S.A.ワインエキスパート。米フロリダ州で日本酒の販売に携わっている間に、浮気心で手を出したワインに魅了される。英語や販売・営業経験を活かしながら、ワインの魅力を伝えられたら幸せ