コラム

日×NZ×仏で幻のワインを生み出す、シャトー・ワイマラマ ~今知っておきたいニュージーランドのワイナリー

   

ワインの新興国の中でも、特に新しい産地であるニュージーランド。栽培や醸造に先進的な技術を取り入れたワインづくりで、ワインファンからの信頼や人気を集めている。

今回はそんなニュージーランドを代表するワイナリーの中から、シャトー・ワイマラマ(Chateau Waimarama)を紹介する。

日本×ニュージーランド×フランスがタッグ

ニュージーランドの先住民の言葉で、「水面に映る月光」という意味のワイマラマ。1988年に、ボルドースタイルのワインづくりを目指すワイナリーとして設立された。テロワールに恵まれ、初ヴィンテージから高評価を受けている。

1998年に日本人(現オーナー・佐藤茂氏の父)が取得した後は、土地の改良や全ての苗木の植え替えなどに着手。日本人オーナーの下、ワイナリーの運営やヴィンヤードの監修をニュージーランド人が、コンサルタントはフランス人が務めるという、3カ国がタッグを組むワイナリーとなった。

ヴィンヤードは4.5ha。決して大規模なものではなく、少人数のチームが化学薬品を使わないサステナブル(持続可能)な農法によって丁寧に栽培したぶどうを使用したワインは、生産量が少なくて高品質。その希少性から、幻のワインと呼ばれることもある。国内外のワインコンクールで100以上の賞を受賞しており、2012年には2009ヴィンテージのワインが「ニュージーランド・インターナショナル・ワインショー(The New Zealand International Wine Show)」でゴールドメダルを受賞している。

ワイマラマを支えるワインメーカー

日本人オーナーの佐藤茂氏の下、ワイマラマのワインづくりを支えているのがこの2人だ。

●ディレクター:チェイス・アークエット氏

画像引用元:YouTube/ワイマラマジャパン

「シャトー・ワイマラマの育ての親のような存在」と表現されるのが、ニュージーランド人のチェイス・アークエット氏だ。1998年からワイマラマに参加し、現在はワイナリーの運営やヴィンヤードの監修を務めている。

●醸造家:ルドウィッグ・ヴァネロン

画像引用元:YouTube/ワイマラマジャパン

ワイマラマのワインコンサルタントを務めるのは、フライングワインメーカーとして活動しているルドウィッグ・ヴァネロン氏だ。フライングワインメーカーとは、各国のワイナリーと契約をして世界中を飛び回っている醸造家のこと。ヴァネロン氏はボルドー大学を卒業後、最も有名なワインコンサルタントであるミシェル・ローラン氏の下で働いてきた経歴を持つ人物だ。ボルドーを拠点にしており、2015年にワイマラマのチームに加わってからは、ボルドー系品種の多いホークス・ベイで大いにその手腕を発揮している。

産地ホークス・ベイとは

画像引用元:YouTube/ワイマラマジャパン

ワイマラマが目指すのは、ぶどうとホークス・ベイのテロワールを最大限に生かしたワインづくりだ。

ホークス・ベイは、ニュージーランドの北島にあり、3本の川が流れ込むホークス湾周辺の地域。ニュージーランドのワイン産地の中で、年間の日照時間が最も長い地域の1つだ。ぶどうの生育期である夏(1月)には、最高気温が27℃、最低気温が14℃となり、高品質なぶどうを栽培する条件となる寒暖差がある。

ニュージーランドの赤ワインというと、ピノ・ノワールのイメージが強いが、この地域はカベルネ・ソーヴィニヨンなどのボルドー系品種やシラーの産地として知られている。

ワイマラマのヴィンヤードは、トゥキトゥキ川を見下ろす位置にあり、絶景スポットとして知られるテマタピークから南風が吹き下ろし、砂利を分厚い表土層が覆っている土壌だ。ワイマラマでは、土地の自然を知り尽くした職人が、剪定などの多くの作業を手作業で行いながら、少人数のチームでヴィンヤードを手掛けている。

ワイマラマのおすすめワイン

画像引用元:YouTube/ワイマラマジャパン

SSS(エス・エス・エス)2009

ワイマラマのフラグシップワイン。「SSS」は「Sato’S Special」の略で、オーナーの佐藤氏が、原酒の中から特別なワインを選出してボトリングしたものだ。最も日当たりの良い区画のカベルネ・ソーヴィニヨンを、新樽率100%で16カ月熟成させている。

現在市場に出ている2009ヴィンテージは、生産数も非常に少なく販売数は1768本。 “幻のワイン”という言葉が当てはまるワインだ。類まれなヴィンテージにのみつくられるため、2009ヴィンテージの次は現在醸造中の2018ヴィンテージとなる。

2009ヴィンテージは、2018年9月17日、ニューヨーク・マンハッタンの3ツ星レストラン「Per Se(パーセ)」で開催された、ワイナリーの20周年記念イベントでお披露目された。日本国内では、2018年11月に240本限定で販売されたが、残念ながら2022年5月現在、ワイマラマの公式オンラインショップでの取り扱いはない。どうしても味わいたいという人は、パリのホテル「マンダリン・オリエンタル パリ」内の2ツ星レストラン「シュール ムジュール パール ティエリー・マルクス」や、「オテル ド クリヨン」内にある1ツ星レストランの「レクラン」など、このワインがオンリストされているレストランに足を運ぶ必要がある。

品種:カベルネ・ソーヴィニヨン 100%
産地:ホークス・ベイ/ニュージーランド
参考小売価格:5万円(税別)※2018年発売当時

MINAGIWA(ミナギワ・水際) 2013

温かみのある心地良い飲み口が特徴。「最良のヴィンテージの1つ」と表現される2013ヴィンテージは、『デキャンター(Decanter)』誌にて94ポイントという高得点が付けられている。

品種:メルロー 55%、カベルネ・ソーヴィニヨン 24%、カベルネ・フラン 12%、シラー 9%
生産地:ホークス・ベイ/ニュージーランド
販売価格:1万1000円(税別)

なお、2021年2月に国立新美術館で開催された「佐藤可士和展」では、佐藤可士和氏による限定ラベルのMINAGIWA 2016が会場内のショップで販売された。

EMIGAO(エミガオ・笑み顔) 2013

カベルネ・ソーヴィニヨン100%の「SSS」は味わえなくても、ワイマラマのカベルネ・ソーヴィニヨンの実力を堪能してみたい!という人は、カベルネ・ソーヴィニヨン主体の「EMIGAO」を手に取ってみると良いだろう。厳選された年の厳選された樽で醸造される「SSS」とはコンセプトが異なるが、ワイマラマのぶどうとテロワールの実力が確かめられるはずだ。

“過去にないグレートヴィンテージ”と表現される2013ヴィンテージは、『デキャンター』誌で95ポイントという高得点が付けられている。

品種:カベルネ・ソーヴィニヨン 85%、マルベック 15%
生産地:ホークス・ベイ/ニュージーランド
販売価格:1万3000円(税別)

KIRARAKA(キララカ・煌らか)2013

ホークス・ベイの代表品種である、シラー100%のワイン。こちらも「SSS」と共に、「マンダリン・オリエンタル パリ」内にある2ツ星レストラン「シュール ムジュール パール ティエリー・マルクス」にオンリストされている。現在は公式オンラインショップから購入可能だ。

品種:シラー 100%
生産地:ホークス・ベイ/ニュージーランド
販売価格:1万3000円(税別)

VIN ROSE 2019

ワイマラマのロゼワインは、手に取りやすい価格帯でワイマラマの魅力が味わえる。フルボトルの他にハーフボトルもあり、水引ラベルやハートラベルなど、プレゼントにぴったりなラベルもある。

2021ヴィンテージは、シラー100%でつくられたが、残念ながら売り切れてしまっている。

品種:メルロー 86%、カベルネ・ソーヴィニヨン 14%
生産地:ホークス・ベイ/ニュージーランド
販売価格:3600円(税別)

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About the author /  鵜沢 シズカ
鵜沢 シズカ

J.S.A.ワインエキスパート。米フロリダ州で日本酒の販売に携わっている間に、浮気心で手を出したワインに魅了される。英語や販売・営業経験を活かしながら、ワインの魅力を伝えられたら幸せ