すっかり日本にも定着し、年間行事の1つとして、市場を賑わせるボージョレ・ヌーボー。秋の風物詩として楽しみにしている人も多いと思うが、そもそもボージョレ・ヌーボーとは何なのかを知らない人もいるかもしれない。
ボージョレ・ヌーボーの基礎知識を解説しつつ、今年の出来栄えを紹介しよう。
ボージョレ・ヌーボーとは?
フランス語で「新しい」を意味する、「ヌーボー」。ボージョレ・ヌーボーは、その名の通り、フランス南部に位置するブルゴーニュ地方のボージョレ地区でつくられる赤ワインの新酒のこと。その年にボージョレ地区で収穫したぶどう品種のガメイを使用してつくられる。
多くの人が知っている通り、毎年11月の第3木曜日(午前0時) が、ボージョレ・ヌーボーの解禁日と定められている。時差の関係で、日本は本場フランスより8時間早く、また世界の中でも早くにボージョレ・ヌーボーが解禁される。ちなみに2022年の解禁日は、11月17日だ。
激しい天候変化も太陽に恵まれた年
既に予約もスタートしている、2022年のボージョレ・ヌーボー。解禁日を心待ちにしている人にとっては、その出来栄えや評価は気になるところだ。
厳しい気象により、収穫量は平年を大きく下回る
2022年のボージョレ地区は、熱波やひどい乾燥に見舞われた厳しいヴィンテージとなった。局地的には、ひょうの被害にも遭ったという。
天候について月別に見ていくと、5月は晴れた日が多く、日照に恵まれた。しかし、6月になると雨の日が非常に多く、局地的にひょうも降った。その結果、ボージョレ地区のぶどう畑で、合わせて400haほどがひょうの被害を受けている。6月下旬から8月上旬にかけては、晴天で気温が高い日が続き、空気が極度に乾燥。さらに、熱波にも襲われた。
このように、ひょうや極度の乾燥、熱波に見舞われた2022年は、ぶどうの収穫量が少なくなる見込みだ。2003年に次ぐ早い時期に収穫され、予想では過去5年の平均収穫量を20%ほど下回るとされている。
ぶどうの品質は良好
ひょうや熱波の影響で収穫量は例年を大きく下回るものの、ぶどうの品質はとても良いとのこと。6月下旬から8月上旬にかけて晴天が続き、空気が乾燥したことで、病気の発生が抑えられ、ぶどう畑は非常に良い状態に維持されている。そのため、高品質のぶどうが収穫できた。
果実味とストラクチュアの完璧なバランスを持つ、多彩な味わい
生産者にとっては厳しい年となったが、出来上がったワインは、多彩な特徴を示しているという。2022ヴィンテージをテイスティングしたSICAREX Beaujolais(ボージョレの栽培・醸造研究機関)取締役のベルトラン・シャトレ氏は、「ワインはバランスがとれ、肉付きが良く、力強い。そしてアロマ豊かでフルーティーな表情に驚かされる」と評している。
2022年は暑く乾燥した気象により、「理想的な熟度で収穫されたぶどうは、思い切りかじりたくなるほど」だったとシャトレ氏は言う。そのぶどうを使ったワインについて、ボジョレーワイン委員会会長のダニエル・ブリア氏は、「豊満でしっかりとしたストラクチュアがあり、熟成向きのワインもあれば、フレッシュで心地よく肉付きがあり、飲みやすいワインもある」とコメント。偉大な年と評された2009年、2015年、2018年、2020年と似ているところがあり、「特別なワインとなる」としている。
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