ワインを貯蔵するだけではなく、熟成する過程においても重要な意味を持つ“オーク樽”。
「最も偉大な白ワイン」と呼ばれるモンラッシェなどの高級ワインは、ほとんどがオーク樽での熟成を経ている。オーク樽の種類やサイズ、年代、保存方法などがワインの出来栄えに大きな影響を与えるのだ。
そこで今回は、ワイン好きなら知っておいた方がいいオーク樽についての豆知識を紹介していきたい。
ワインの風味にも影響を与えるオーク樽
オーク樽で熟成させると、香り成分がワインに移る。つくり手はどの樽を使って、どれくらい熟成させるか、新樽と2回目以上の樽をいかに使うかなどを計算してワインの風味をコントロールしているのだ。
具体的には、次のような香り成分がオーク樽にはある。
オーク樽の香り成分
・ラクトン:ココナッツの香り
・バニリン:バニラの香り
・オイゲノール:スパイスの香り
・フルフラール:キャラメルなどの甘い香り
・グアイアコール:焼け焦げたスモーキーな香り
さらにオーク樽は内側を焼いているため、焼き加減によってトースト香がワインにつく。
オーク樽を使ってワインを熟成する利点は、香りをつけられることだけではない。オーク樽は空気を少しだけ通すので、ゆっくりとワインを熟成させて味を柔らかくしてくれるのだ。
ドイツのモーゼル地区などでは、熟成中にオーク樽の香りが付かないように何度も洗ってアクを抜くのだという。また、良いワインは新樽に詰めないそうだ。
オーク樽の代表的な3つの産地
オーク樽は、ブナ科であるオークの産地によって価格も違えば、ワインに与える影響も変わってくる。
オーク樽の代表的な産地は以下の3つだ。
フランス
フレンチオーク樽と呼ばれるフランス産の樽は、プレミアムワインの熟成に使われることが多く、最も人気があって価格も高い。
新樽は8~36万円程度。Alliers、 Vosges、Troncaisで作られたものなら40万円程度にまで価格は上昇する。
ヨーロッパナラで作られた樽がほとんどだが、よりきめが細かいフユナラを使った樽もわずかだが作られている。
フレンチオーク樽の人気の秘密は、樽の香りだ。ピノ・ノワールやシャルドネに、しっかりと樽の香りを受け渡してくれるという特徴がある。
アメリカ
アメリカで栽培されているオークは何種類もあるが、アメリカンオーク樽の素材としては、主にミズーリ州やアメリカ東部で栽培されているアメリカンホワイトオークが使用されている。
価格は3~5万円程度。製材過程で原料のロスが出にくいことも、安さの秘密だ。
甘い香辛料、ココナッツ、バニラといった香りをワインに受け渡すのが特徴で、ワインが「けばけばしくなる」と揶揄されることがある。
ニューワールドのフルーティなワインと相性が良いと言われている。
ハンガリーや東欧
近年になって使われることが多くなったのが、ハンガリーや東欧産のオーク樽だ。フレンチオークと似ているものの、安い価格で手に入るのがその理由だろう。
価格は5~7万円程度。ナッツ系の香りを樽から取り込んでもバランスが崩れにくいマルベックやプティ・ヴェルドといったフルボディ系のぶどう品種に使われることが多い。
知れば知るほど奥が深いオーク樽。樽には生産社の焼き印がついているので、ワイナリーに見学に行った際などは、「どこ産のオーク樽を使っているのか」「どのように使い分けているのか」「新樽と2回目以降の樽をどんな割合で使っているのか(色が違うのですぐ分かる)」といった点も気にしながら見てみると面白いかもしれない。