長野県では江戸時代からぶどう栽培が始められ、1869年には政府による大規模な開拓が桔梗ヶ原で始まった。長野県は日本における主なワイン生産地のひとつであり、冷涼な気候や水はけの良い土壌、1日の気温差を活かしたぶどう栽培や、ワイン醸造が盛んだ。
そんな長野県は「信州ワインバレー構想」を策定し、長野県各地の地域特性に配慮した振興策を進めているところだ。今回から「信州ワインバレー」について、5回に分けて詳しく説明していこう。
ワイン用ぶどう生産量、第1位の長野県
農林水産省の「2012年産特産果樹生産動態等調査」によると、ワイン用ぶどう生産量は、長野県が5445トンで第1位。2位の山梨県(3960トン)を大きく引き離している。
カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、ピノ・ノワール、シャルドネなどの欧州系ぶどう品種のほか、ヤマ・ソービニヨン、ヤマブドウなどの固有種、ナイアガラやコンコードなどのアメリカ系品種など、立地と気候に合わせたさまざまなぶどう品種が栽培されている。
また長野県としても、NAGANO WINE(長野産ワイン)の認知度向上や消費拡大、ワインツーリズムの推進などに力を入れている。
長野県内のワイナリー数は、2016年10月時点で33社。2013年1月時点から8社増えている。日本初となる民間のワインアカデミーも開講されており、個人のワイナリー参入は今後も増えそうな勢いだ。
長野県では「長野県原産地呼称管理制度」を導入しており、色調、香り、味、バランスの4項目について官能審査を実施。審査を通過したワインのみ「長野県原産地呼称管理制度認定ワイン(N.A.C.ワイン)」と名乗ることができる。この官能審査の委員長を務めるのはソムリエの田崎真也氏だ。
「信州ワインバレー構想」とは
長野県(=信州)の各地に、さまざまなワイナリーが土地の特徴、テロワールを引き出したワインをつくり出す。そうしたワイン=NAGANO WINEが海外からも高く評価され、ワインとワイン関連の食や工芸が文化として根付き、そんなワイン文化に惹かれて県内外から人が集まる――。長野県は「信州ワインバレー構想」を掲げて、そのようなビジョンを実現させようと努めている。
さらに、フランス・ボルドーの中にメドック、グラーヴ、ソーテルヌといった銘醸地があるように、長野県内のエリアを次の4つに分類。それぞれのエリアのブランド価値を高めようとしている。
桔梗ヶ原ワインバレー
範囲:塩尻市
明治時代からぶどう栽培が盛んに行われるようになった、日本のワイン先進地。創業100年を超える老舗ワイナリーから、小さなワイナリーまである。ナイアガラやコンコードの産地として成長したが、現在ではメルローの評価も高く、欧州系の品種を使用したワイン醸造も盛んだ。
日本アルプスワインバレー
範囲:松本市、安曇野市、大町市、池田町などの市町村
江戸時代からぶどう栽培が行われている松本市山辺を含むエリア。ナイアガラ、コンコード、デラウェア、巨峰といった生食用のぶどうに加えて、欧州系の品種を使用した醸造が行われている。
千曲川ワインバレー
範囲:小諸市、東御市、長野市、須坂市、中野市、青木村、小布施町、飯綱町、上田市、坂城町、高山村などの市町村
欧州系品種のぶどう栽培が盛んな地域。ヴィラデストワイナリーの玉村豊男氏による民間のワインアカデミーもあり、新規参入の個性豊かなワイナリーが増えているエリアだ。
天竜川ワインバレー
範囲:伊那市、宮田村、松川町などの市町村
欧州系品種に加えて、品種改良されたヤマ・ソービニオン、ヤマブドウによる醸造が盛ん。ワイナリーの数は3社と信州ワインバレーの中で最も少なく、今後の誘致や栽培に適した品種の検討に期待が寄せられている。
それぞれのワインバレーには、どのような特徴を持つワイナリーがあるのだろうか。次回から、各ワインバレーについて順に詳しく取り上げていきたい。