コラム

小規模シャトーがつくり出す、こだわりのボルドーワイン ~サン・テミリオン・ポムロール・フロンサック地区の魅力とは

2019年11月28日、東京・新橋のフレンチレストラン「フレンチ割烹 ドミニク・コルビ」で、フランス・ボルドーのサン・テミリオン・ポムロール・フロンサック地区でつくられたワインの魅力を料理とのマリアージュで楽しむ食事会が開催された。

左から、サン・テミリオン・ポムロール・フロンサックワイン委員会ディレクター フランク・ビナール氏、フレンチ割烹 ドミニク・コルビのオーナーシェフ ドミニク・コルビ氏、ホテルニューオータニのエグゼクティブ・シェフ・ソムリエ 谷宜英氏

サン・テミリオン・ポムロール・フロンサック地区とは

1999年にワイン産地として初めてユネスコ世界遺産に登録されたサン・テミリオンを含むこのエリアは、ボルドーの東、ドルドーニュ河の右岸に位置する。ボルドーといえば、左岸のメドック地区のイメージが強いかもしれないが、サン・テミリオン・ポムロール・フロンサック地区には、また違う個性と魅力が広がっている。

小規模なつくり手による、高品質なワインづくり

ボルドーと聞いて思い浮かべるのは、広大な敷地の中に豪勢なシャトーが立つ光景かもしれない。しかし、サン・テミリオン・ポムロール・フロンサック地区で見られるのは、丘陵地帯にたたずむ小さなシャトーだ。栽培面積はボルドー全体の10分の1に当たる1万2500ha。1600に満たない栽培家が、平均8haの小さな畑でぶどうを栽培している。

メドック地区のワインづくりは、貿易によって利益を得た商人が守り育ててきたという歴史がある。一方、サン・テミリオン・ポムロール・フロンサック地区のある右岸は、その土地に根差した人々が、家族で賄える範囲でワインづくりを行ってきた。小回りの利く経営で、高品質なワインづくりを目指し、実現してきたのが同地区の特徴といえる。

サン・テミリオン・ポムロール・フロンサックワイン委員会のディレクターを務めるフランク・ビナール氏は、「小規模な分、ぶどうに対する思い入れも深い」と語る。

気候や土壌の違いが生み出すワインの違い

サン・テミリオン・ポムロール・フロンサック地区は、ボルドー市の中心から45kmほど東に位置し、海からは離れている。メドック地区は海洋性気候で気温差が少ないが、この地区は大陸性気候で寒暖差が大きく、雨の影響を受けづらい。標高は比較的高く、起伏に富んだ土地となる。

ちょっとした標高の差や畑の向きによって、ぶどうの味わいは変わる。AOCに承認されているのは赤ワインのみだが、多彩なワインがつくり出されていることもこの地区の特徴だ。

また、右岸と左岸では土壌にも違いがある。左岸は砂利の土壌が多いが、サン・テミリオンとフロンサックの大半は粘土石灰質。ポムロールは、サン・テミリオンから離れると砂質が多くなるが、粘土質が強いのが特徴だ。粘土質の土壌は水分を含んでいるので、干ばつが起きた2003年や2015年でも、ぶどうは健全に成長した。

歴史あるメルローの産地

この地で、2000年もの間、栽培されてきたのがメルローだ。

ボルドーでは単一品種のワインはあまりつくられず、アッサンブラージュ(ブレンド)によってつくり手の個性が表現されている。自然に育まれたぶどうに人の手を加え、単一品種では表現できないバランスの良さを生み出しているのが面白いところだ。

メルローの使用率はシャトーやテロワールなどによって異なるが、サン・テミリオン・ポムロール・フロンサック地区でつくられるワインでは、アッサンブラージュの75~80%を占めることが多い。メルローの果実味は、ワインになるとしなやかさを表現してくれ、和食にも合うワインになる。

円熟するにつれて甘いフルーツの香りになるメルローと組み合わせるのが、ミンティな香りのあるカベルネ・フランや、しっかりとしたタンニンがあるカベルネ・ソーヴィニヨンだ。

アッサンブラージュの技術が楽しめるボルドーワインの中でも、メルローをベースにしているというのが、サン・テミリオン・ポムロール・フロンサック地区の面白さでもある。

アペラシオンと格付け

サン・テミリオン・ポムロール・フロンサック地区には、現在10のAOCがある。

・サン・テミリオン
・サン・テミリオン・グラン・クリュ
・リュサック・サン・テミリオン
・ピュイスガン・サン・テミリオン
・モンターニュ・サン・テミリオン
・サン・ジョルジュ・サン・テミリオン
・ポムロール
・ラランド・ド・ポムロール
・フロンサック
・カノン・フロンサック

同地区には、「サン・テミリオン・グラン・クリュ・クラッセ」(64シャトー)と「サン・テミリオン・プルミエ・グラン・クリュ・クラッセ」(18シャトー)の2つの格付けがある(シャトーの数は、2012年の格付け時のもの)。

10年に1度見直されるのが、同地区の格付けの特徴だ。格付けの獲得や維持を目指すつくり手は、新樽の利用率も高く、迫力のあるワインづくりを行っている。

提供された6つのワイン

今回提供されたワインは、次の6種類だ。

1.『シャトー・オー・ジャマー 2015年』(AOCリュサック・サン・テミリオン)
2.『シャトー・オー・グション 2015年』(AOCモンターニュ・サン・テミリオン)
3.『シャトー・トゥルヌフィーユ 2015年』(AOCラランド・ド・ポムロール)
4.『シャトー・レ・ロシェ・ド・フェラン 2015年』(AOCフロンサック)
5.『シャトー・ラ・ローズ・コート・ロル 2015年』(AOCサン・テミリオン・グラン・クリュ)
6.『シャトー・ラルマンド 2015年』(AOCサン・テミリオン・グラン・クリュ・クラッセ)

いずれも香りを開かせるために、提供の2時間ほど前に開栓されていた。

残念なことに日本で流通しているのは、『シャトー・トゥルヌフィーユ 2015年』(AOCラランド・ド・ポムロール)のみ。今回の食事会では、「甘鯛のポワレ 赤ワインのソース煮」とのマリアージュが楽しめた。

甘鯛のポワレ 赤ワインのソース煮

マロラクティック発酵(MLF)をしており、しなやかで粘性の出るワインに仕上げられている。アッサンブラージュはメルロー70%、カベルネ・フラン27%、カベルネ・ソーヴィニヨン3%となる。

2015年は「グレートヴィンテージ」

今回提供されたワインは、全て2015年ヴィンテージだった。その理由は、「グレートヴィンテージだから」だという。ホテルニューオータニのエグゼクティブ・シェフ・ソムリエを務める谷宜英氏は、「果実味豊かで深みがあり、バランスが取れていて、溶け込んだタンニンがある」と2015年ヴィンテージを表現。また、「保存が可能で、買っておいて良かったと思えるワインだ」と説明した。

2人のプロが手掛けたマリアージュの妙

今回のマリアージュは、ドミニク・コルビ氏と谷宜英氏という2人のプロが、ワインをテイスティングしながら決めたという。フランスと日本の食材を組み合わせ、それぞれのワインの香りと味わい、タンニンに合わせた。

そのメニューは以下の通りだ。上記のどのワインをマリアージュさせたかは、番号で示した。

アミューズ 登米豚のルーロー
1:フォアグラと富有柿のポワレ
2:キノコのスープとハマグリ
3:甘鯛のポワレ 赤ワインのソース
4:穴子の茶わん蒸し
5:蝦夷鹿と季節の野菜
6:リゾットトリュフ
デザート サツマイモのモンブラン、カヌレとコーヒー

今回のみのコースだが、香りや味わい、脂分などさまざまな個性を持つ食材が取り入れられている。サン・テミリオン・ポムロール・フロンサック地区のワインの多彩さが伝わってくるメニューとなった。

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