コラム

ワインの魅力を拡大する新カテゴリーを提案、日本ワインは次のステージへ ――サントリーワイン2021年事業方針記者会見から

サントリーワインインターナショナル(SWI)は2021年1月20日、2021年の事業方針記者会見を開催した。新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けて、会見はサントリーホールでの発表と併せて、オンラインでも配信した。

会見では、2020年の国内ワイン市場やSWIの実績、2021年の事業方針について発表があった。本記事では、新需要創造へ向けたワインの新カテゴリー提案や2021年の同社日本ワイン事業の活動について取り上げる。

新需要創造の強化

SWIでは、ワインに対するニーズについて、国産カジュアルや輸入デイリーを経て、よりワインらしい味わいや嗜好品感を求める層と、より気軽に日常的にワインを楽しみたい層があると考えている。前者については、既存商品のリニューアルや強化で対応し、後者には、ワインのハードルを下げる新しいカテゴリーを提供して、新需要創造を図る。

ワインの魅力を拡大する新カテゴリー「ワインサワー」

ワインに興味はあるものの、ワインの持つ渋みや高めのアルコール度数からワインの購入をためらってしまう、そんなユーザー層に対し、ワインのハードルを下げることを狙った新商品が「サントリーワインサワー350ml缶」(赤・白)だ。

甘くない爽やかな味わいのワインを炭酸水で割った同商品は、缶入りのカクテルやチューハイとは一線を画した、ワイン本来の味わいや風味を楽しめる新感覚のワインになっている。

同社はワインの炭酸水割りという新しい飲み方を通じて、「ワインは特別な日に飲むもの」という思い込みを取り払い、平日のワイン需要を獲得するとしている。「サントリーワインサワー350ml缶」は2021年2月16日から発売する。

左から「サントリーワインサワー350ml缶」の赤と白

ワインサワーについては、同製品だけでなく、複数ブランドからアプローチしていく。既に家庭用と業務用の両方で展開している甘口タイプのワインサワー「赤玉パンチ」シリーズの缶タイプ「赤玉パンチ350ml缶」を同年2月にリニューアルし、ブランド強化を図る。また、既存の「デリカメゾン」をベースに開発した、好みの濃さで割って楽しむ「割るだけワインサワー」のコンクタイプを同年2月16日に新発売する。

ワインの多様な飲用シーンを創造する新容器、新容量

同社ではこれまで、ボトル缶、小容量の紙パック、カップワインなど多様な容器・容量でワインを販売してきた。これらに加え、2021年3月16日には、缶入りスパークリング「BOLLICINI(ボッリチーニ)」を発売。250ml缶で白、ロゼを展開する。

左から「ボッリチーニ スパークリング 白」「同 ロゼ」

ワインの情緒感を気軽に楽しめる「和スパークリング」

「雫音(しずね)」は、和食に合う味わいに仕上げた、和テイストのスパークリングワインだ。2020年の夏季に「雫音(しずね) ゆず」「同 すだち」、冬季に「同 ゆず」「同 かぼす」を限定販売したところ、好評だったことから、同商品を通年化する。

2021年3月16日に新発売の「雫音(しずね) ゆず」「同 すだち」は、手軽で日常的なRTDと非日常感を味わえるスパークリングワインの中間に位置する、新スタイルのスパークリングとなっている。

左から「雫音(しずね) ゆず」「同 すだち」

日本ワインを新たなステージへ

サントリーは、新潟県の岩の原葡萄園、山梨県の登美の丘ワイナリー、長野県の塩尻ワイナリーと、3つの歴史あるワイナリーでぶどうやワインをつくってきた。

現在は、この3ワイナリーに加えて、青森、山形、長野、山梨の契約農家と共に、良いワインのための良いぶどうづくりに力を注いでいる。また、2016年に農業生産法人を立ち上げて、長野、山梨の自社管理畑でもぶどうを栽培している。

2021年、SWIは日本ワインを新たなステージへと成長させるため、品質向上の取り組みとブランド接点の強化を図る。

品質向上の取り組みを強化

また、日本ワインの品質向上の取り組みとして、2021年1月にワインづくりで最も重要となるぶどうの「栽培スペシャリスト」を新設。自社畑から契約畑まで、全てのぶどう畑の情報を集積し、それぞれの畑の栽培技術やぶどうの品質向上を支援する栽培スペシャリストには、同社ぶどう栽培の第一人者である渡辺直樹氏が就任した。

また、行政や農業組合との連携も強める。SWIは2020年9月に青森県弘前市、JAつがる弘前と10年協定を締結しており、2021年度から新契約の農家に対して技術支援を開始する。

併せて、津軽産ワインの知名度アップにつなげて、地域と共にブランド構築と地域経済の活性化に取り組んでいく。

こうした取り組みによって、SWIは自社畑、自社管理畑、契約栽培畑の面積を2020年の65haから、2025年には約1.5倍の94haに引き上げ、高品質のぶどうを確保する。

日本ワインのストーリーを重視する若年ユーザー層への働きかけ

SWIでは、よりワインユーザーのニーズに合わせた商品や情報を提供していくため、ユーザーの深掘りをした。その結果、日本ワインのユーザーの特徴として、20~30代が多く、つくり手とのつながりやワイン生産に関する物語に共感する、ワイン自体よりもワインに関連するシーンを重視するといったユーザー像が浮かび上がってきた。

このようなユーザー層に向けた新商品として、品質にこだわり、シャンパーニュ製法でつくる津軽産スパークリングワインを2021年の秋に限定発売する予定だ。

さらに、情報感度が高い20~30代に対しては、ユーザーとつくり手が双方向のコミュニケーションを図れる場の提供や体験型の情報を発信するなど、情報発信に力を入れていく。例えば、登美の丘、塩尻、岩の原葡萄園の3ワイナリーによる共同ライブ配信や、栽培、醸造、テイスティングなどのワイナリーバーチャルツアーを計画している。

日本ワインの中期販売計画

SWIは、自社畑、契約畑のぶどうの品質向上を徹底し、高品質なぶどうを安定して供給することで、自社日本ワインの品質をいっそう向上させる。これにより、2021年の販売数量目標を2020年比110%の5.7万ケースとし、2030年には2020年の約2倍となる10万ケースを目指す。

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