コラム

クリュ・ド・ボージョレのスペシャリスト、アンリ・フェッシ【ボージョレのつくり手】

毎年11月の第3木曜日に解禁され、ワイン市場に華を添える、ボージョレ・ヌーボー。

今や、季節のイベントの1つとして日本でもすっかり定着しており、解禁日にはさまざまなボージョレ・ヌーボーが市場に出回る。今回は、そのつくり手の中から、アンリ・フェッシ(Henry Fessy)を紹介する。

クリュ・デュ・ボージョレの9つの村に自社畑を所有

アンリ・フェッシは、1888年にボージョレ地区のブルイィ村で創業した、130年以上の歴史を誇るワイナリー。クリュ・デュ・ボージョレと呼ばれる、ボージョレ地区の中でも特に品質の高いぶどうを産出する10の上位格付けのうち9つに自社畑を所有している。

約80ha以上の自社畑に植えられているぶどうの樹は、そのほとんどが樹齢50~75年の古樹だ。そこで育つ質の良いぶどう、手摘みの収穫、伝統的な製法と、高品質なワインをつくり出すための要素を備えている。さらに、9つの畑のさまざまなテロワールの違いを表現することで、「クリュ・デュ・ボージョレのスペシャリスト」と呼ばれている。

アンリ・フェッシのワインは、パリのブラッスリーから高級レストランまで幅広く愛されている。2008年には、ボージョレワインの名門として知られるルイ・ラトゥールの傘下となり、さらなる発展を遂げていった。

長期熟成にも耐え得るボージョレワイン

ボージョレ地区でつくられるワインは、最も畑の面積が広くスタンダードなボージョレ、それよりワンランク上のボージョレ・ヴィラージュ、そして最上位格付けのクリュ・デュ・ボージョレに分けられている。

クリュ・デュ・ボージョレは、ボージョレ地区の中でも北部に集中している。北部は、水はけの良い花こう岩を基盤とした丘陵地帯が広がり、品質の良いぶどうを育てるには理想的な環境で、特にボージョレワインの主な原料となるガメイ種に適している。

一般的にボージョレワインは熟成に向かず早飲みするのがよいとされているが、クリュ・デュ・ボージョレのワインは、数年の熟成に耐え得るクオリティーを誇っている。そのため、クリュ・デュ・ボージョレのほとんどの村に自社畑を所有しているアンリ・フェッシのボージョレワインは、新酒だけではなく年間を通して楽しめるものが多い。

トロフィー・リヨンでは6年連続金賞受賞

アンリ・フェッシのワインは、数多くの名誉ある賞で評価されている。

中でも、ボージョレ・ヌーボー唯一のコンクールである「トロフィー・リヨン・ボージョレ・ヌーボー(Trophée Lyon Beaujolais Nouveau)」では、6年連続で金賞を受賞。2020年には、「アンリ・フェッシ ボージョレ・ヴィラージュ・ヌーヴォ ヴィエイユ・ヴィーニュ」が最高金賞、「アンリ・フェッシ ボージョレ・ヴィラージュ・ヌーヴォ」が金賞、「ボージョレ・ヴィラージュ・ヌーヴォ“ベレール”」が銀賞をそれぞれ受賞し、実力を見せつける結果となった。

左が最高金賞の「アンリ・フェッシ ボージョレ・ヴィラージュ・ヌーヴォ・ヴィエイユ・ヴィーニュ2020」

アンリ・フェッシのおすすめワイン

アンリ・フェッシ ボージョレ・ヴィラージュ・ヌーヴォ 2021

2020年のトロフィー・リヨンで金賞を受賞したワイン。ボージョレ・ヴィラージュ地域のぶどうを使用した、深みのある赤紫色にブラックベリーの豊かな香り。口の中に広がる果実味と心地よいコク、柔らかいタンニンが特徴。

アンリ・フェッシ ルージュバブルス・ヌーヴォ 2021

ボージョレ地区のガメイ種のみを使って醸造した、赤のスパークリングワイン。長く細かな泡とともにブルーベリーのような香りと、ガメイ種由来の爽やかな甘みが楽しめる。

左から3番目が「アンリ・フェッシ ・ボージョレ・ヴィラージュ・ヌーヴォ 2021」、右端が「アンリ・フェッシ ・ルージュバブルス・ヌーヴォ 2021」

アンリ・フェッシ ムーラン・ナ・ヴァン

過去に『Wine Spectator』誌で高得点を獲得したクリュ・デュ・ボージョレのワイン。花こう岩質の土壌がもたらす豊かな果実味と、シルキーなタンニンが上品な印象で、数年熟成させても良さが変わらないため、年間を通して味わえる。

アンリ・フェッシ・ブルイィ

クリュ・デュ・ボージョレの最南部に位置する、ACブルイィ。花崗岩と片岩質の土壌で栽培されたガメイを使用し、伝統的なボージョレの醸造方法でつくられている。野イチゴなどの赤い果実、プラムやピーチの香りが楽しめる。

<【ボージョレのつくり手】シリーズ>
トロフィー・リヨンで大金賞を獲得した実力派、アルベール・ビショー
ブルゴーニュの至宝、ルロワ
テロワールを尊重したヌーボーを手掛ける、ルイ・ジャド
一流の食とワインを提供する、タイユヴァン

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About the author /  大江 有起
大江 有起

コピーライター、雑誌の編集者などを色々経てフリーライターに。文章を書くことと、赤玉スイートワインや貴腐ワインのような甘いワインが好きです。 ワインバザールさんにてワインに興味を持ち、一般社団法人日本ソムリエ協会ワイン検定シルバー取得しました